HONEY

NEWS

壊れゆく海のためにできること Vol. 03 /HONEY編集部

Posted, June 04.2020

日常はつねに海とつながっている

たくさんの生命が日常を紡ぐ、美しくて豊かなはずの地球の海は、私たち人間の暮らしかたのせいで、
さまざまな危機に瀕している。それらはどれも、海の上から眺めるだけでは気づけないことばかり。
諸問題と向き合う専門家たちが見つめる、「海のいま」とは......。

 

第3回目の今回は、水質を汚している家庭排水について考えたい。

 


 

 

生活排水が海を汚しているとは、あまり想像できないかもしれない。しかし、これまで排水の有機物過
多や合成洗剤が原因で、赤潮や河川の泡立ちなどさまざまな問題現象が起き、今でも海に有害な化学物
質を含む洗剤類は多く販売されている。

 

万能と思われる下水道システムも「分流式」と「合流式」の2種類が併用され、「合流式」では生活排
水と雨水を1つの管路に合流させるため、雨天で水量が増すと、処理場に届く前に汚水の一部が未処理
のまま河川へ、海へと流されているのだ。現在、合成洗剤は年間100万トン以上が使用され、そこに含
まれる界面活性剤などは有害な化学物質。自然界では分解されず、東京湾の海底などにも膨大な量が
沈殿している。

 

それに比べて石けん製品は自然界で分解され、海に流れても魚の餌となる。合成洗剤を石けん製品に
変えるだけで、日常の化学物質をかなり減らすことができ、自然の摂理を乱さない暮らしも可能に。

 


 

<排水汚れを減らすために>

 

 

有機物をなるべく減らそう

 

有機物汚染は下水処理技術が進んでいるけれど、家庭の台所でもなるべく配慮を。使用済みの油や調理
くずはシンクに流さず、食器を洗う前にはお皿に残る油分や食べ残し、汁かすなどを拭き取って洗えば
洗剤も減らせるはず。

 

合成洗剤ではなく石けんに

 

石けんは原料代が高いため合成洗剤と比べると高コスト。それでも石けん製品で洗えば衣類も柔らかく
洗い上がるので、柔軟剤を使う必要もなく、最初にまず水洗いをするなどの工夫をすれば、石けんの使
用量は少なくてOK。

 
選ぶ基準は成分の安全性

 

高い洗浄力を謳うキャッチ、オーガニック表記などで選ぶより、成分に合成界面活性剤や合成着色料、
合成保存料などが含まれない製品選びを。「不使用」と書かれていても、似たような化学物質が入って
いることもあるので要注意。

 
洗濯前に予洗いのひと手間を

 

ひと昔前まで、洗濯はまず水で洗う「予洗い」が当たり前だったそう。あらかじめ水で洗うことで、水
に溶ける汗や塩分汚れの多くは落とせる。その後に洗剤を入れて通常洗濯をするほうが、洗剤の使用量
も減らせてオススメ。

 

お湯を使ったお洗濯がベター

 

汗汚れは水洗いでも落とせるけれど、皮脂汚れなどの脂分は、冷えた状態では固まっていて落ちにくい
もの。洗濯にはできればお湯を使って、脂分を液化させるほうが溶け出しやすくなる。お風呂の残り湯
を使えば節水にも!

 
洗剤やシャンプー類も控えめに

 

「洗剤量を多く使えば洗浄力が上がる」というのは思い込み。食器の拭き取りや予洗い洗濯をすれば、
ずいぶんと使用量を減らしていける。シャンプ ー・リンス、ボディソープ、洗顔なども過剰に使いす
ぎないよう心がけて。

 
メイクアイテムも見直して

 

メイク製品やクリームなども、有害指定の界面活性剤(硫酸、スルホン酸など)、メイクや日やけ止
めを落ちにくくする合成ポリマー(カルボマー、メチ コンなど)といった添加物が。これらはお肌に
も刺激大で、洗い流す排水も悪影響。

 
歯磨き粉もお口と海に思いやりを

 

歯磨き粉も有害指定の界面活性剤 「ラウリル硫酸Na」が含まれるものもある(PRTR法記載名は「ドデシ
ル硫酸ナトリウム」)。防腐剤「パラベン」、殺菌剤「塩化ベンゼトニウム」なども控え、口内環境と海
にやさしいものを選んで。

 


 

教えてくれたのは……

 

洗剤・環境科学研究所 代表
長谷川 治 さん

 

油脂・石けんの開発、合成洗剤の環境負荷などを専門にする研究者。太陽油脂株式会社取締役販促開発
部長を歴任。全国での石けんの普及運動、講演会などの講師としても活躍。

 


 

photography : Takaji Ochi composition : Ayako Minato
掲載:HONEY Vol. 22

PrevNext