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サーフガールが立ち上げたスモールビジネス Vol .03 /HONEY編集部

Posted, May 21.2020

使い勝手のいいユーティリティ・バッグ <Julie Rais Ellis>

起業するサーファーも多い、スモールビジネス花盛りのカリフォルニア。得意なことを活かしたり、夢
の実現だったり、人生を輝かせるためだったり、ビジネスのきっかけは人それぞれ。そんな女性たちの
ストーリーをHONEY #21から4回に分けてお届け。スモールビジネスを成功させた彼女たちの考え方や
キャリア、ライフスタイルを通して、自分らしい生き方を見つけよう。

 

第3回は、使い勝手のいいユーティリティ・バッグを作るジュリー・レイス・エリスをクローズアップ!

 


 

ペンドルドン・ウールや上質なレザーを使用した、しっかりしたつくりのシンプルなバッグ。2010年に
ジュリーが興したバッグブランド「Rais Case」は、その評判が徐々に口コミで広がって、いまカリフ
ォルニアの人気ブランドに成長している。

 

 

 

西海岸に憧れを抱き、オハイオ州の大学を卒業後に、当時のボーイフレンドといっしょに住むところを
探しにカリフォルニアへロードトリップに出かけたジュリー。サンフランシスコからサンディエゴまで
を旅してまわり、最終的にカーディフに心を奪われる。以来14年間、彼女はずっとこの町に住み続け、
いまは坂を下ればサーフポイントまで数分という最高の場所に、家族4人で暮らしている。

 

 

大学でアート・エデュケーションの学位をとったジュリーは教員資格をもっていたため、移住してすぐ
にキャニオン・クレスト・アカデミー(高校)で美術教師として働きはじめる。
「教鞭をとっているあいだも、自分のアートを創作していた。自分には内から自然に沸き起こる創造力
があると感じていたから。あるとき裁縫をやりはじめ、自分のラップトップ・ケースを縫ってみた。20
10年4月のこと。そのとき、これこそが私がやりたいことだと思えたの」

 

このラップトップ・ケースがジュリーのバッグブランド「レイス・ ケース」のはじまり。バッグづくり
にのめり込むと、つくったものをファーマーズマーケットで売るようになった。2、3 年が過ぎたころ、
ハンドメイドのキャンドルをつくっている友人から、スペースをシェアしていっしょにストアをやらな
いかと誘われる。

 

「教師としてフルタイムの仕事をしていたから躊躇したけど、夫が背中を押してくれたこともあり、結
局友人と共同でストアをはじめることにした。学校との両立は大変だったけど、相談した校長が理解あ
る人で、私のやっていることを認めてくれて、学校を辞めることを許してくれたの。そこからバッグの
ビジネスに専念できるようになった」

 

 

教師を辞めてから彼女は裁縫のスキルやデザインにより磨きをかけていく。しかし規模が大きくなるに
従い、ある時点で自分ひとりだけで製作することに限界を感じるようになる。そこで、ファミリーで縫
製業を営んでいるロサンゼルスのプロの業者に製作を任せることに。そこはかつてオニールやハーレー
などサーフインダストリーのアイテムもつくっていたところ。そのクオリティは極めて高いものだった。

 

「彼らに裁断と縫製を任せてから必然的にバッグの質は高くなったわ。 私はよりデザインとテキスタ
イル選びに集中できるようになった。初期のころ私はバーラップ(コーヒー豆を入れる麻袋の布地)でつ
くっていたのだけど、その後いろんなマテリアルを試し、いまはペンドルトン・ウールや革を主に使う
ようになった。ペンドルトンの生地をつくっている工場にも見学しにいき、すべての工程を見てきた。
素晴らしかったわ。そのほかにもパイナップルの葉の繊維で織ったピーニャテックスというファブリッ
クを入手。いま私はマテリアルの調達を楽しんでいるの」

 

 

彼女は、マテリアルをどこから仕入れるか、誰から仕入れるかも知る必要があるという。革はいま南ア
フリカから仕入れているが、その革がつくられている行程にも意識を向けている。いまの時代、自社の
製品に使われている素材のバックグラウンドをきちんと把握することはとても重要なことであり、メー
カーとしての責務でもある。

 

ストアも当初のデルマーからいまはオーシャンサイドに移転、ひとつのスペースのなかで4人のアーティ
ストたちがコーポラティブな関係でそれぞれのブランドを展開している。ストア内にはDIYコーナーがあ
り、誰でも2ドル払えばツールを使わせてもらえ、ジュリーのバッグの端切れなどを好きに加工してもの
づくりを楽しめる。美術の教師時代に学生たちの自由な創造性を引き出していたジュリーらしい発想だ。

 

 

二児の母として、またスモールビジネスのオーナーとして充実した生活を送ってはいるが、以前ほど海
に行けなくなったことを彼女は少し残念がっている。彼女の夫はサーファー・マガジンのフォトエディ
ターでフォトグラファーのグラント・エリス。以前はふたりでたくさんサーフィンしていたが、いまは
子育てが最優先の我慢の時期。

 

「もう少し子どもが大きくなったら 家族4人で波に乗れるときがくるかもしれない。たぶん感動して泣
いちゃうかも。それはきっと人生の次のチャプターになるでしょうね」
そのチャプターの扉は、おそらくもうすぐやってくるに違いない。

 

 

次回は女性が成長するための旅をプロデュースするジュリア・バッチをご紹介。お楽しみに!

 


photography & text : Takashi Tomita
掲載:HONEY vol.21

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