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自然のリズムに導かれたオーストラリアへのサーフトリップ | SURF AROUND THE WORLD #01

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SURF AROUND THE WORLD #01 AUSTRALIA

心がオープンな人、好奇心旺盛な人、準備を怠らない人に、旅は絶対に裏切らない。その旅先で感じたり体験したことすべてが、そのあとで必ず旅人を成長させてくれる。だから旅にでる。世界はたくさんの愉しみで溢れているのだから。

冒険心をもった女性サーファーたちの旅を綴る連載第1回。アナ・アーゴットとレックス・ワインスタインのオーストラリアへのサーフトリップをご紹介。



見えない力に導かれ、旅がはじまった

シンクロニシティ、すなわち「意味のある偶然の一致」というのは、実はアドベンチャーが好きな人に起こりがちなことだと思う。そういう運命だったことをあとになってから知ったとき、すでにすべてものごとは完璧なハーモニーで流れていたりするもの。

大の旅好きでもある親友のアナ・アーゴットと私が、初めてオーストラリアへのトリップについて考えはじめたとき、細かいことも含め、ものごとがすべてトントン拍子にうまく転がりはじめた。アナと私は、クリエティブに仕事をしているサーファーとしてコンスタントに世界中を旅している。そのため、ふだんなかなか予定があわない。にもかかわらず、オーストラリアへの旅に関しては、ふたりのスケジュールがぴたりとあった。ときにものすごく高騰するエアチケットも、びっくりするほど安かった。

奇跡はまだあった。素敵なバンを持っているオーストラリアの友だちが、私たちの冒険のためにそのキーを使ってもいいという。さらには、私たちふたりの共通の旅の仲間であるフォトグラファーのニック・グリーンとも再会ができることになった。これは間違いなく運が私たちに味方している、そうとしか思えなかった。

アナと私は、自然のなかにあるエレメントのシンプルさを好み、クリーンでロングボード向きのピラピラとめくれあがる波への情熱をつねに共有している。ニックとアナと私は、数年前にスリランカのサントーシャ・ソサイエティのサーフ/ヨガ・リトリートで初めて出会った。私たちはすぐに友だちになった。リトリートによって絆を深めた私たちは、旅を延長していっしょに島を探索することにした。一日3回もサーフセッションし、自然の力に魅了されたスリランカの旅。そのとき感じた興奮覚めやらないサーフィン熱と、気の向くままの探険の続きを、私たちが止められるはずはなかった。

オーストラリアに着くと、マーヴィンが加わりアドベンチャーがはじまった。マーヴィンとは頼りになる馬力あるバンのこと。1週間にわたる旅で、マーヴィンといっしょに走りまわり、どこかでキャンプをし、気分にまかせて探険するというのが大まかな計画。

でも飛行機を下りたらまずは海に直行した。私たちはゴールドコーストで小さいけど遊べる波をあてた。ひたすら長く伸びたビーチが与えてくれる美しい波のすべてを逃さなかった。スウェルはすごく小さかったけど、サイズなんて気にならなかった。陽が沈み頭上に星が昇るまで、まるでスナッパーロックスのようなワールドクラスのブレイクに乗るのを楽しんだ。

それから数日間かけて徐々にコーストラインを下っていき、バイロンベイの少しはずれでキャンプした。バンの後ろにできるだけ心地よいように3人で缶詰のサーディンのように横並びで寝た。ニックの話は私たちを絶えずクスクス笑わせてくれた。人生の複雑な問題に話が及ぶ奥深い会話をとりとめもなくしたあとは、考えすぎて眠りにつくのに何時間もかかったりした。

毎朝、日の出を見るために早起きし、自分たちで淹れたコーヒーとシンプルなフレッシュ・フルーツの朝食を食べながら、その日のアドベンチャー計画を練った。魅力的なエリアを探険し、滝で泳ぎ、古代の熱帯雨林をハイキングし、透き通った海でイルカとサーフィンし、夕暮れ時に空がゴールド一色に染まっていくのを毎日見ながら日々を過ごした。

–{心と体を解放して大自然を受け止める}–

心と体を解放して大自然を受け止める

とうとうバンを返す日がきた。何の努力もしていないのに、自然が私たちに与えてくれる圧倒的な美しさに感謝と畏敬の念を抱きながら、コーストラインを戻った。完璧な天候、最高に楽しめた波、そして自由気ままに探検して発見できたたくさんのこと。そのすべては自然によってもたらされたもの。

海沿いの道を北へ向かっていたとき、以前カランビンにある神聖な熱帯雨林のなかのエコ・ヴィレッジの話を聞いたことを思い出した。最後にもう一ヵ所だけ立ち寄ろうと、私はふたりに提案した。

毎夕のように楽しんでいた明るいオレンジがかった色に太陽の光が輝きはじめたころ、私たちは曲がりくねった道を車で登っていき、まるで天蓋のように枝葉が上から生い茂る深い森のなかを抜けていった。

ようやく数本の大きなユーカリの木がある美しい牧草地に出ると、私たちは車をそこに止めた。そこにはとても背の高い古木があり、その枝からロープがぶら下がって揺れていた。アナと私は小さな子どものようにバンから飛び出だすと、そのロープに向かって全速力で走りだした。私たちはロープにぶら下がってゆらりゆらりと振り子のように揺られながら笑いあい、一日の終わりを告げる鳥たちの歌を楽しんだ。

そのとき、ニックが牧草地の向こうを指差し、「見ろよ!」と叫んだ。何ごとかと思いその方向へ振り返ると、私たちがいるところからおよそ15mほど先にカンガルーの家族がいた。近くのブッシュでベリーをムシャムシャと食べながら、ディナーを楽しんでいるようだ。でもよく見るとカンガルーはもっとたくさんいた。少なくとも15〜20頭くらい。カンガルーの大群はみんなでいっせいに食事を楽しんでいた。私たちは驚きのあまり息をのんだ。母親のポケットから頭を突き出したベビーがさっと自分の分をとり、食べているのが見えた。

アナはとても驚いたようすだった。彼女はカンガルーを見るのが初めてだったから。私たちは静かにその場に座り、その情景を観察した。自然の色がステージを明るく照らしだす瞬間、力強く生き続ける野生動物たちのマジカルな光景、何にも邪魔されない自然の営みがふだんと変わらずに行われる穏やかで広々とした空間。まるで私たち人間にじっくりと考える機会を与えているかのよう。こんな光景を車を止めてさりげなく見られるのは、オーストラリアだけだろう。

何となくだけれど、この旅は何の苦労もなく、すべてが完璧でスムースだったという気がする。私たちは一度もスウェルや海のコンディションにストレスを感じることはなかった。もしかしたら違う場所を走りまわって、もっといい波を探していたかもしれないけど、そんなのタラレバに過ぎない。私たちは決してスケジュールにはこだわらず臨機応変だったし、計画を立ててもそんなに縛られることはなかった。旅のあいだ、私たちはつねに満足していた。

サーフィン中心のアドベンチャーでは、こういったことは珍しい。この旅のテーマは、シンプルに自然体で感謝の気持ちをもって楽しむことだったのだと改めて思う。宇宙にあるあらゆるものがもたらしてくれた、私たちを受け入れる美しい瞬間に気づくことができた。細かいことをコントロールするのをやめて、ゆっくりとしたペースで人生を流れに任せたとき、私たちがどこにいようとも見えない力に導かれていると感じた。

それは自然のもつリズムのようなもの。オーストラリアは私たちに、どれだけ持っているかではなく、持っているもので何をするかが大事だと教えてくれた。アドベンチャー・モービルと良き友とワイルドなアウトドアがあればそれで十分だということを知った旅だった。


掲載:HONEY Vol.021
※2018年に取材した記事を再編集したものです