【CANVAS ON THE WAVE】HONEYが気になるあの人にQ&A/“目に見えない何か”を紡ぐ絵画のような刺繍「馬場知佐」

国内外の注目サーファーや新進気鋭のアーティストなど、HONEYが今気になる人たちに質問をぶつけるQ&Aの連載企画。この記事からお気に入りのサーファーを見つけるも良し、推しのアーティストを見つけるも良し。何かのインスピレーションにも役立つかも。第19回目は、天然染めや刺繍のタペストリーなどの作品制作を行いながら、BEAMSでバイヤーとしても活躍する馬場知佐さんにインタビュー。シェイプや色彩からか、大地や海、風など“地球”を感覚的に吸収できる作品が印象的。でもほっこりしすぎず、土臭くなく、ややエッジも効いていてアート性が高いという絶妙なラインをいっているからおもしろい。先日鎌倉で個展を終えたばかりの彼女に、モノづくりのことや憧れのデュアルキャリアについて尋ねてみた。


―ご自身のプロフィールを教えてください。
1989年大阪生まれ。幼少期から手を動かすのが好きで、京都の芸術大学に進学しました。在学中、自然の中での暮らしに憧れハワイに短期留学。卒業後BEAMSに勤務しながら、アートワーク制作を行っています。

―ご自身の作品と、そのこだわりについて教えてください。
植物で染めた布や糸を使った刺繍のオブジェ、絵などのアートワークを行っています。“目には見えないけど確かにある何か”を表現したい好奇心と探求心で作品を制作しています。

―アートのキャリアをスタートしたのはいつ、どのようにですか?
物心ついたときから手を動かすことが好きで、芸術大学に進学しました。デザインやアートを学びつつ、海洋学への興味や自然の中での暮らしに憧れて行ったハワイ留学をきっかけに、自然をテーマにしたものを多く制作するようになりました。洋服作りやジュエリーブランドの活動を経て、今は染めや刺繍のタペストリーなどをメインに制作しています。3年前から東京、大阪、奄美大島などで年に2~3回程個展を開催し、本格的に活動をしています。

―BEAMSでは具体的にどのようなお仕事をされていますか?

BEAMSでは〈BEAMS JAPAN〉というレーベルのバイヤーをしています。主な仕事内容は雑貨の仕入れやイベントの企画がメインです。日本の産地の魅力や文化を伝えられるようなモノ(民芸品や工芸品、文具、食品、お酒など……いろいろです!)のセレクトやプロジェクトを企画しています。

―BEAMSのバイヤーをしながらアーティストとして活動するということ。デュアルキャリアについてご自身ではどう思われていますか? 互いに与える影響などもあれば教えてください。
刺繍は1人で黙々と作業する時間が長いので、アーティスト活動は個人戦、BEAMSでの仕事はたくさんの人が関わるのでチーム戦という感覚です。どちらも“モノを作る”という共通の行為ではあるものの、使う脳が少し違うので、毎日頭の中が忙しいです(笑)。

バイヤーでの仕事では工芸品を作る職人さんやアーティストの方とご一緒にすることも多く、モノづくりに対する考えや技術は、個人の活動への刺激にもなりますし、アーティスト活動を通して出会った人とBEAMSでお仕事することもあります。BEAMSは個人の活動に対して寛容なので、自分にとってとても良いバランスで働いています。

―刺繍アートのおもしろさ、また難しさもあれば教えてください。
刺繍は世界各地に文化としてあり、それぞれの国や地方で手法や柄が全く異なります。でも共通する部分として、ただ美しい装飾であるだけではなく、自分ではない誰かのためへの祈りや願い、お守りだったりすることが多く、“目には見えないものを宿わせる力”があるとても興味深い手芸のひとつです。

私の刺繍は、技法に捕われないドローイングのような刺繍。手で一針一針刺繍するのはとても時間がかかりますが、細い糸で描く線や柄はプリントや絵では表現できないので、面白いなと思ってます。

―天然染めについても教えてください。その魅力と、なぜ作品に取り入れるようになったのか知りたいです。

5年前に初めて奄美大島の金井工芸さんで染色体験をしてから染めに魅了され続けています。奄美の山で育ったシャリンバイという木を無理ない程度に伐り、チップ状にして煮出し、それを発酵させた液で染めるととても美しいくすんだピンクになります。煮出したチップは次の燃料に使い、灰になれば陶芸家が釉薬に使う。染めた布は太陽に晒し、島に吹く気持ち良い風で乾かす。自然の流れに合わせて、自然の恩恵に人の手を加えることで生み出される色の美しさに衝撃を受けました。

作品に使っているのは、シンプルに自分が触れていて気持ち良いものだからですが、こんなにも美しい色が地球上の植物から生まれることを作品を通して伝えたいと思って制作しています。

―一つひとつにテーマがあるのか、それともフローで描いているのか、制作プロセスを教えていただけますか。

それぞれテーマやイメージはありますが、モチーフは特定していません。街中で風に舞うビニール袋だったり、波が引いた砂浜の模様だったり、近いものや遠いもの、気配を感じるものをインスピレーションに描いたドローイングを元に刺繍しています。

―何か作品に込めている想いや見ている人に感じてほしいことなどはありますか?

私の作るものは、部屋や日常を過ごす空間で、心地良さを感じるものにしたいと思っています。植物染めした糸だけでなく、金糸や銀糸を使ったり、真鍮素材の金具を取り入れたりすることで、柔らかすぎない輪郭のある作品を目指しています。

―インスピレーションソースを教えてください。

日常の中で感じる自然の気配、海の中で過ごす時間、日々感じるもの全て。

―次の個展情報があれば、教えてください。

9月7〜10日、9月14~17日に、大阪の「gallery,あるゐは」にて展示販売会を予定しています。

―今後の目標や、やりたいことなどあれば教えてください。

今はタペストリーのような見て楽しむものがメインですが、今後はクッションカバーやストールなど日常により寄り添うプロダクトを展開していきたいです。いずれ、夫と一緒にアトリエ兼ショップをオープンさせるのが目標です。

【CANVAS ON THE WAVE】すべての記事一覧はこちら

SHARE