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見る人をハッピーにする、美しく調和した花々 | Female Artists #02 メレディス・アンブローソ

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Female Artists #02〈Meredith Ambruso〉

創りたいものを創ればいい……。自分の可能性を信じる女性たちが見せてくれる、自由で素敵な創造の世界。アートやフォトグラフィからフラワーアレンジメントまで、生み出されるのは彼女たちの豊かな感性から湧き出た、瑞々しいひとしずく。

カリフォルニアのオープンなマインドとサーファーたちのコミュニティのなかで、いっそう輝きを放つ注目の女性アーティストを紹介する連載。第2回は、メレディス・アンブローソをクローズアップ。


絵を描くのと同じように、色を重ねて花を生ける

こぢんまりとしたリビングルームには、ほんのりといい香りが漂っている。色とりどりの切り花や瑞々しい植物たちが花瓶ごとに分けられ、生き生きと枝葉を広げていた。

「今日はこの絵のイメージでアレンジメントを作ろうと思うの」そういってメレディスはインテリアのなかでひときわ目を引く淡いピンクの鶴の絵を指差した。それは大好きなアンティーク・ショップで見つけたアート。彼女は日がたっぷり差し込む窓辺のテーブルに白い花瓶を置くと、頭のなかでイメージを膨らませながら、次々に切り花や緑を手にとりバランスよく生けていく。全体を低くまとめ、淡い色味を使いながらも大胆にアンセリウムをまっすぐ立たせたり、アクセントとしてチョコレート・コスモスを何本か刺したり……。その色のグラデーションは題材に選んだアンティークな絵ととてもよく似ている。

「フローリストの世界はとても厳しくて、本当にお金を稼ごうと思ったらウェディングをやらないと。または写真撮影に関わるアレンジメントとか。でも私は単に楽しいからフローリストの仕事をしているだけ。この世界で競いあって一番になろうとか成功しようとかは考えていない。私の父は自分がうまいサーファーかどうかなんて気にしていなかった。ただ好きで楽しいからサーフィンしていたの。私も花に対してそういう気持ちでいるわ」

メレディスをサーフィンに連れ出してくれたのは、その父親だった。シールビーチでサーフィンをはじめたころの彼女は、父親がガレージセールで見つけてきた’67年製のグラスオンフィンの重たいロングボードに乗っていたという。いまモダンなロングボードをスムースに操れるのはそんな古いボードでの経験があったからなのかもしれない。進学した高校ではサーフチームに入り、サーフィンは彼女にとってなくてはならないものとなった。

高校時代、ひとつのクリエイティブな才能が開花する。それはペインティング。彼女は絵を描くことに夢中になった。初めて参加したグループ・アートショーでその作品がハーレーのスタッフの目に留まると、ハーレーのサポートで在学中に2回もアートショーを開催。ハーレーのフィーチャー・アーティストとなった彼女は、高校卒業後にフリーランスとしてアートディレクターの手伝いもしていた。また週末にはサーフ・ギャラリーでも働き、サーフィンのクリエイティブなコミュニティでの仕事を楽しんだ。

–{自然の美しい曲線から受けるインスピレーション}–

自然の美しい曲線から受けるインスピレーション

「花の仕事をするようになったのはそのあと。シールビーチにフラワーショップをオープンする女性から頼まれて手伝っているうちに、すっかり花に魅せられてしまった。それ以来ブーケを作ったり、いろんな楽しいプロジェクトに取り組むようになった。雑誌のファッション撮影のために花を用意したりアレンジメントを作ることもあるし、ショップからポップアップのフラワーショップを依頼されることも。友だちがオーナーをしているデイドリーム・サーフショップでもポップアップをやったことがある。花をたくさん用意しておいて、お客さんのオーダーに応えてその場でブーケを作る。すごく楽しかった。いつかワークショップみたいにフラワーアレンジを教えてみたいと思っているの」

ハイチで大地震があったあとにボランティア団体のスタッフとして現地入りし、小学校や孤児院のコミュニティセンターでペインティングを教えたことがあった。そのときハイチの女性たちにブーケの作り方を教えた経験がある。そうしたことをカリフォルニアでもできたら……、そう考えているのだ。

もともとペインティングの才があったメレディスは、フローリストとしても絵や写真からインスピレーションを得ているという。「部屋のアンティークな絵をイメージしてアレンジメントを作ったように、モネとかゴッホが描いた花やその色からも影響を受けている。色を組みあわせるアプローチは絵を描いているみたい。あるときは花がテキスタイルみたいに感じるときもある。たくさんの種類の植物を調和させないといけないけど、それって独自のアート創作に似ていて、やっていてすごく楽しい。その先に新しい発見もあるし。なによりも誰かのために作ったアレンジメントやブーケは、その人の一日をより良い日にしたり、幸せにすることができる。とても素敵なことよね」

フローリストとして心がけているのは、あまり水が必要ない花を使うこと、地元で育てられた植物を選ぶこと、包装紙などをできる限り再利用することなど。そこには彼女ならではの日ごろのさりげない環境への配慮がうかがえる。

フラワーデザインのほかに、メレディスは刺繍でも一目おかれている。教えてくれたのはイタリア系の父方の祖母。若いころ、ペインティングで燃え尽きてしまった彼女にとって刺繍は、再び没頭できる新たなクリエイティビティだった。ヴィンテージ・クロージングやバンダナなどに文字や模様を刺繍することを楽しんでいる。

「何をするにしてもベストなアイデアが浮かぶのは、たいていサーフィンしているとき。海にいると誰にも邪魔されずに自分だけの世界を作れるから。それでいて天気や海や動物などいろんなエレメントに囲まれていて、自然と心動かされる瞬間がいっぱいある。曇りの日のグレーな海も、太陽が顔をだし透明な海水に光が差し込んだ途端に、海底の砂紋やゆらゆら漂う海藻が現れたりと、その表情は一変する。そうした自然のなかにある美しい曲線からもすごくインスパイアされているわ」

そういえばメレディスが作るアレンジメントには、全体的に自然の重力による柔らかい曲線がある。海藻の揺らぎや波のうねりのようなナチュラルなカーブ。それは花と向きあう彼女のしなやかな人柄を映しているかのようでもある。


メレディス・アンブローソ
カリフォルニア生まれ。10歳のときに内陸の町から比較的ビーチに近い町に引っ越し、父とサーフィンを楽しむようになる。フリーのフローリストとして活動しているが、ペインティングや刺繍や即興劇など、さまざまなジャンルで自分自身を表現することを楽しんでいる。


掲載:HONEY vol. 28