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心の声に素直に従い、花開いたクリエイティビティ | Female Artists #03 ブルック・ケリー

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Female Artists #03〈Brooke Kelley〉

創りたいものを創ればいい……。自分の可能性を信じる女性たちが見せてくれる、自由で素敵な創造の世界。アートやフォトグラフィからフラワーアレンジメントまで、生み出されるのは彼女たちの豊かな感性から湧き出た、瑞々しいひとしずく。

カリフォルニアのオープンなマインドとサーファーたちのコミュニティのなかで、いっそう輝きを放つ注目の女性アーティストを紹介する連載。第3回は、ブルック・ケリーをクローズアップ。


すべてを受け入れる、つねにオープンな姿勢

サンクレメンテの静かな住宅街に、ブルック・ケリーの暮らすシェアハウスがある。いっしょに住んでいるのはシェイパーやアーティストやそのガールフレンド。彼らの仲間のアーティスト・サーファーたちも毎晩家の前に停めたバンで寝泊まりしている。シェイプルームがあるガレージにはカウチが置かれ、彼らの溜まり場になっている。賑やかな声が絶えることはない。

「私はこういうのが大好き。みんなサーファーで何らかのかたちでクリエイティブなことをしているので、とても刺激を受けるし鼓舞される。ずっとアートを作り続けてきた私にとっては居心地がいい場所なの」

そういって彼女はガレージの前のドライブウェイでレジンアートを作りはじめた。写真と押し花とレジンで作るオリジナルの作品だ。使われるのはスイムウエアブランドSEEAの未使用写真や友だちのローカル・フォトグラファーの写真。ブルックは自分たちが暮らしている南カリフォルニアの日々の生活を象徴するようなイメージを好んで選び、アートのベースにする。ブルックは特定のスタジオをもたず、ときにはサンノーに停めたバンのなかでアートを創作することも。そのためか、彼女のアートには朗らかな陽だまりの匂いがする。

出身はアメリカ中西部のミズーリ州。アクティビティが好きな父親と自然のなかでハイキングするなどアウトドアライフを楽しむ家庭で育った。森を歩き、自然のなかで遊びながら、花を集めては押し花を作ったりしてナチュラルな創造性を育んできた。いまレジンアートに押し花を使っているのは、子どものころから作ってきたものだから。

「私はおてんばでアクティブな子どもだった。地元の大学にも陸上とゴルフでスポーツ奨学金をもらい進学した。どちらかというと運動系だったの。でも本当はアートをやりたいって自分ではわかっていた。それに周りのほとんどの人が地元に執着してミズーリから出ないことにも違和感を覚えていた。なぜかカリフォルニアに行かなきゃってずっと思っていた私は、ある日、意を決してクルマに家財道具すべてを積んで南カリフォルニアに来ちゃったの。コスタメサにあるアートスクールに通って一年半が経ったころ、トムズ・シューズやビラボンと仕事をする機会が急に巡ってきた」

漠然と憧れていたカリフォルニアは、ブルックの創造性をきちんと評価しチャンスを与えてくれる素晴らしいところだった。その後はアーティストとしてエレメント・ウィメンズのアドボケートとして迎えられ、壁画やライブ・アート、さらにはクロージングのデザインまでクリエイティブな仕事のすべてを任されるようになる。

–{何が起こるかわからない人生の波を、ポジティブに乗り続ける}–

何が起こるかわからない人生の波を、ポジティブに乗り続ける

ところがあるとき、キャンバスや紙を前にしても何をしていいのかわからなくなった。会社やブランドのために何かを創り続けることに疲れ果て、燃え尽きてしまったのだ。アーティストとして自分が何者なのかを再発見する必要を感じた彼女は、改めて自分と向きあうために、自分のための創作に集中した。

「そうしたらまた自然にものごとが流れはじめ、自信も戻ってきた。結局アートとは誰かのためのものではなく、自己の魂の表現なのだと思う。いまはフリーランスでインスタグラムやサーフィン仲間を介して依頼してくれるランダムなクライアントのために仕事をしている。私のアートを求める人がいるって最高」

アート以外に最近はハット作りもはじめ、これも好評だ。ファッションの学校に通っていたこともあるので、ミシンはお手のもの。最初は自分や友だちのためにSEEAの水着の余り生地を使って作っていたという。それが口コミで広がり、ほしいという人がどんどん増えていく。いまはスリフトストアで見つけた生地や、着なくなった洋服なども再利用して作っている。

カリフォルニアで得たものが彼女にはもうひとつある。サーフィンだ。ミズーリ時代に湖で水上スキーやウェイクボードで遊んでいたため、ウォータースポーツには馴染みがあった。カリフォルニアに引っ越してきた翌日には、海に連れて行ってくれる友だちができ、以来、ほぼ毎日サーフィンするようになる。

「大げさではなくサーフィンは私にとって、すべて。親しい友だちやカスタマーとの繋がりも、クライアントとのコネクションもサーフィンと密接に関係していると思うから。同時にサーフィンは表現手段のひとつであり、人生のクレイジーさからの逃避でもある。つねに水のなかでは謙虚な気持ちになるし、まだまだ学ぶことが多い」

ブルックの人生には、両親の離婚をはじめ、つねに予期しないことがたくさん起きてきた。将来の計画を立てても、先のことはコントロールできないことを彼女は経験から学んでいる。日々生きていくなかで自分の心の声に従って誠実に一歩一歩進んでいけば、自分がいるべき場所に導かれるはず、そう考えることにした。いつもオープンに構え、何が起きても流れに任せる。それはどこか波乗りと似てなくもない。

「でも将来のことで間違いなくいえることもあるわ。ずっとサーフィンし続け、友だちと旅をし、アートを創作し続けること。そしてもっと前進し続ける」。大らかでポジティブなバイブとともに、この言葉は彼女の内側から力強く発せられたように思えた。


ブルック・ケリー
ミズーリ州出身。2009年にカリフォルニアに移住後、トムズ・シューズやビラボン、エレメントなどのブランドでそのクリエイティビティを発揮。その後、独自のスタイルを築き、フリーランスのアーティストとして活躍。カリフォルニアらしい自由でピースな作風が人気。


掲載:HONEY vol. 28