
海でゴミを見かけた時、あなたはどうしていますか? 手で持てる分だけ拾って、近くのゴミ箱に捨てたり、家に持ち帰る? それとも広い海だから、ひとつやふたつ拾ったって変わりがないと、見て見ぬふりをする? この記事を読んでくれているみなさんには、前者になってもらいたいと願っています。
国際環境NGO、サーフライダーファウンデーションのジャパン支部代表を務める中川淳さんに、ビーチクリーン、ひいては海の環境を守るために、わたしたちができることをアドバイスしてもらいました。
見渡す限りゴミが散乱する砂浜。数年前の台風の爪痕のようだけれど、こんな光景は次の世代に残したくない
ビーチクリーンはなぜ必要なの?
海のゴミの70%以上が街から流れたものとされ、毎年約500〜1000万トンという膨大な廃プラスチックが流出しているという推測も。さらにこうした海洋プラスチックゴミは2050年までに魚の数を上回ると言われています。数字が大きくなるとイメージしづらいけれど、例えばビーチを歩いているとき、目の前に落ちているぐちゃぐちゃの魚網や釣り針が、海の生物に絡まってしまう可能性があるとしたら? 転がっているペットボトルやビニール袋も、誤って飲み込んでしまうかもしれなかったら? ゴミを拾うことでビーチが綺麗になるだけでなく、助かる命があるかもしれないと考えてみてください。さらに大人が海の環境を守る行動をとることで、子供への教育にもつながります。
散乱する廃魚網。これをウミガメや、イルカや、クジラが誤って飲み込んでしまったらどうなる?
ゴミを拾ったら、見つめてみる
手にしたゴミをいったん見つめてみてください。ゴミの中に、自分にまったく関係ないものはないはず。どんなものがゴミになっているかがわかると、どうしたらそのゴミを減らせるかを考えることにつながります。気づいた人は、勤務先でも広く伝える活動をしてみましょう。例えばコンビニで仕事をしている人がいたら、なるべくゴミにならないパッケージに変える提案をするなど。大人だからこそ、できることを。
SFJで行っている「#ONEHANDBEACHCLEANUP」キャンペーン。自分が拾ったゴミの写真を撮って、ハッシュタグを付けて投稿。どんなものがゴミになっているか考えるきっかけに
自分の町や、よく行く海ではどう?
美化財団のある神奈川県では、16〜17万人のボランティアが登録していて、民間企業も出資するなど海岸清掃のプラットフォームができています。海岸にもゴミ箱が設置されているところが多いのが現状。自分の住む町や、よく訪れる海ではどうでしょうか? 個人で気づいた時に行うビーチクリーンから一歩踏み込んで、自分の町にチーム作ったり、行政と手を組んだり、企業に提案するなど周囲を巻き込むのもあり。声を上げることで、具体的且つ根本的な解決につながるかもしれません。
何気なく購入する製品も、どこからきて、最後ゴミになるまで考えを巡らせなければならない
自然豊かな日本の誇りを胸に!
実は日本は、世界のサーフライダーファウンデーション加盟国23ヶ国中、トップクラスの海岸線の長さと森林率。海岸線はサーフィン大国のアメリカやオーストラリアよりも長くなっています。日本人は海外のほうが進んでいる、すごい、と思ってしまいがちだけれど、自然豊かな日本にいる私たちだからこそ、気づけることがあるはず。むしろ世界のリーダーにならなければいけない、という気持ちで向き合って。
エシカルな未来は女性がリードできる?
少し古い習慣ではあるけど、まだまだ家事の多くを担っているのは女性。日々の生活に密接している女性から、地球環境を変えていける可能性もあるのです。商品購入の際に、その商品の開発背景や、どういうゴミが出るのかまで考える。サーファーの女性であれば、台所に立った時に「排水溝は今入っていた海に繋がる」とイメージする。そうすると古新聞で油汚れを取り払ったり、洗剤は最低限にしたり、生分解性の高い洗剤に替えるなど、次の行動ができるでしょう。最終的に自分たちの身体に降りかかってくるかもしれないと考えれば、使うものもおのずと変わってきます。俯瞰で見ること、点がつながって線になるということを忘れず、日々の所作の中で気づく事柄を実践していきましょう。環境を想い、発信するステキな女性たちが今後のサステイナブルライフを牽引するはず。
プラスチックの歯ブラシは、放っておくとこのまま分解されず、最終的にマイクロプラスチックとなり半永久的に海に残るだろう
ポジティブに、自分ができることから
ビーチクリーンも、美しい海水を保つことも、誰かを批判したり、敵視したり、悪者探しをしてはいけません。ヒステリックに強制するのではなく、ポジティブに、ひとりひとりができることから始めていきましょう。
SURFRIDER FOUNDATION
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