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古着物をアップサイクルするKINUの美しいフィロソフィー

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家で眠っていたり、不要になった着物、どうしてる? 大切に取っておいても使う機会がなくて困っている人も多いのでは。上質な生地なのにもったいない! と立ち上がったのがチエさんとリコさんの2人。古着物をアップサイクルするブランド、KINUをスタートさせた。

KINUでは使われなくなった着物の裏地であるシルク(絹)を手作業で草木染めして、デイリーに着られるラウンジウエアとして生まれ変わらせている。これはサステイナブルなブランドでありながら、ひとつのプロジェクト。使われなくなった着物ばかりか余った切れ端まで無駄にしない。“No Waste”に徹底的にこだわっている。

ファッション業界の大量生産に違和感を感じ、自然と伝統に寄り添った優しい服作りをマイペースに推進する2人。ブランドの哲学や2人の生い立ちをインタビューした。
  

草木染めによる天然のカラーは、時にこんなにも鮮やかに。シルクに乗せて光を通すとより一層美しい

–{KINUのコンセプトを教えてください}–
―――KINUのコンセプトを教えてください。
「着物は今の服よりも丈夫に作られているから、長く大切に着ることができます。可愛くて、サステイナブルなファッションは実現可能だということを伝えたいんです。着物から溢れ出る質の良さを生かして、ラグジュアリーでありながら、毎日着られるラウンジウエアを目指しています。“息のできる”服というイメージ。サステイナブルに大量生産は比例しないと思っているので、少しずつ。売り上げよりもクリエイティブを優先していて、すべて一点ものになります」


縫い物のキャリアは14年間にもなるチエさん。インタビュー中にも、シルクの切れ端でささっと巾着を作ってくれた

―――2人について教えてください。まずは縫製のチエさんから。
「KINUのクリエイターで、型紙起こしや縫子を担当しています。アメリカの大学でジャーナリズムを学んだ後、特許事務所に就職しました。アメリカでは仕事が5時で終わるから時間があって、趣味で縫い物を始めたんです。YouTubeを見たりしながら自分でコツコツやっていました。気づけば趣味を通り越して、お客さんにオーダーメイドの服を提供するようにまでなっちゃったんです(笑)。着物のアップサイクルはもともと『Vivat Vertas』という別のブランドでやっていて、ウェディングドレスからフォーマルウエア、デイリーウエアまでなんでも製作してます。2020年にKINUのプロジェクトをスタートさせました。今はオフィスワークと育児とバランスを取りながら進めています」


母親が華道家だったというリコさん。着物と花に囲まれて育った経験もこのプロジェクトに通じているはず

―――ディレクションをされているリコさんは?
「私はKINUのクリエイティブディレクションをしています。Webサイトを作ったり、PRやコンセプトを考えたり。生まれは北海道で、ニュージーランド育ち。14歳でアメリカの大学に飛び級しました。ニュージーランドには自然がいっぱいで、物に溢れていないためか想像力が豊かになり国民的にもすごくクリエイティブ。サステイナビリティや環境への教育も徹底されているんです。最初はファッションデザイナーに弟子入りして、サステイナブルな洋服のデザインを勉強しました。化学が好きだったから化粧品会社で研究員として働いた経験も。その後アートとグラフィックデザインをスタートして、今はアーティストとしても活動しています。化学者だったので薬品と薬品が合わさった時にどういう変化が起こるかある程度予想できるから、その知識と憶測を自分のアートやKINUの草木染めに活かしています」


石やコケ、墨など自然の素材を使って描かれたリコさんのアート作品からは、ディープな地球のエネルギーが感じられる

–{生地はどこから調達するんですか?}–
―――生地はどこから調達するんですか?
「KINUで使う生地は基本的に『Vivat Vertas』で使ったユーズドの着物の余りです。内側のシルクも質がいいのに捨てちゃうのはもったいないと思って。服を作っているとファッション業界の無駄の多さがより鮮明に見えてくるんですよね。だからKINUでは布を新しく買いません。それどころか、KINUの服を作った後に出るさらに小さな切れ端も、小物にしたりシュシュにしたりして再利用しています」


鮮やかな黄色はバラ。道端に落ちている植物を利用することも。試行錯誤しながら自然の色味を調整する

―――着物の生地を使う良さはどんなところですか?
「着物の裏地のシルクは最高級なんです。夏は涼しく、冬は暖かく、体温調整もしてくれる素晴らしい天然素材。丈夫で長く使えるのが一番のメリットです。でも古い着物だと変色していることもあるし、伸縮性もない。着物で使っているから生地の幅が決まっていて、デザインも限定されてしまいます。一見すごく使いづらく感じるんですけど、私たちはそれを『味』ととらえて楽しんでいるんです。変色は自然の繊維を使っているからこその経年変化で、それもまた美しい。上から染めてしまえばまったく気にならない。ストレッチ性を少し出したかったら斜めにカットすればいいし、逆にストレッチのない質感を活かすこともできます。完璧を求めなくていい。『このシルクでできるものは?』みたいな感じで、限られた中でアイディアを生み出すのが楽しいんです」


誰かのもとで輝いた着物が生まれ変わり、自分のもとで別の輝き方をする。KINUが紡ぐロマンティックなストーリー


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