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【連載】地球の今、海の今を知る|Vol.22 海も人もともに豊かであるために

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日本の海は今年も、「春濁り」と呼ばれるシーズンを迎えました。これは毎年、海が冬から春へと移りゆく3~5月頃、陸地から吹くオフショアに導かれて、深海の豊富な栄養分を含んだ海水が海面に湧昇し、水温の上昇とともに植物プランクトンが爆発的に増殖する「自然現象」です。自然ではない異常発生はバランスを狂わせますが、春濁りは海の豊かさを育む大切な循環サイクルの一つ。海の全生命を支えるプランクトンが増殖すると、それを餌とする魚たちも次々に増えてくる賑やかな季節です。「濁った海は嫌い」と思うかもしれませんが、海は透明度が高いほど養分が少なく、濁っているほど栄養いっぱい、生き物たちにとったら餌が豊かでハッピーな海! 海がグリーンに染まる春濁りには酷いときで透明度1mと、自分の足元すら見えないくらい視界が悪くなるときもありますが、私はそんなシーズンにも海の生命力を感じて、なんだか嬉しくなったりもします。

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HONEY vol.31の連載特集「NO Earth, NO Us」で、海の生き物たちについて、そして海と森のつながり、今知っておきたい生物多様性の危機についてお伝えしました。地球という一つの生命体も、生物的な多様性が豊かであってこそ、青く美しいオアシスであり続けられるもの。それが1900年代以降、人間活動による急速で極端な自然破壊とともに、生き物たちが恐ろしいスピードで姿を消していて、種の絶滅ぶりは、人間が関与しない自然状態と比べて何千倍、何万倍もの速さといわれます。

海の豊かさだけを見ても、「生物多様性のホットスポット」と称されたニッポンの海も、今は海産物の8割近くが枯渇または枯渇寸前の状態にまで衰退しています。そうはいっても、スーパーでもお寿司屋さんでも、今はまだ食べたい魚介がいつでも自由に選べます。が、実は「近いうち絶滅するかもしれない魚」や「違法漁業で獲られた魚」も多く並んでいるのが現状です。原因は本誌でお伝えした通りですが、今回お話を伺った「MSCジャパン」のプログラム・ディレクター、石井幸造さんは20年以上、持続可能な漁業の認証制度と水産エコラベルの推進活動を通して、海の環境を見つめてきた一人です。


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「残念ながら、今は水産資源の状態が全体として良くなく、漁獲量も減少傾向にあります。大きく減ってしまった理由は、魚介類が安価で、大量に消費されるのが当たり前になり、そうした需要を満たすために、これまでのルールが十分に機能せず過剰な漁獲が行われたり、海の環境や生態系に負荷をかけてしまうようになったことが挙げられます。それなら、魚介をまったく食べなければいいかというとそうではなく、目指したいのは海との健全な共存です。そのためにMSC『海のエコラベル』を目印に、水産資源や環境にきちんと配慮した漁業で獲られた水産物を、皆さんが当たり前に選んでいける社会を作ることが大切だと感じています。消費者からそうした製品を求めるニーズが増えれば、これまで持続可能な漁業に関心がなかった漁業者さんも、認証を取得しようと動き出して、好循環が生まれていきます。欧米などではMSC認証の魚介類がお店にたくさん並んでいますが、日本もそんな社会を目指していけたらと思いますね」(石井さん)

地球の恵みは本来、人類すべてに平等に分け与えられれば、みんながもれなく豊かに暮らしていけるほど、十分に足りているそうです。それがいつからか、有り余っては捨てるほど飽食な先進国と、今日を生きるにも困るほど食糧難に苦しむ途上国と……。食にかぎらず、さまざまな環境問題の根底にはどれも、裕福な国々のTOO MUCHが見えてきます。そんなに欲張らなくても、必要な恵みをありがたくいただきながら暮らしていけば、みんなが笑顔で幸せに、自然の動植物たちとも豊かに共存共栄していけるのに……そう感じるばかりです。