
映えることを気にせず、写真を撮ったのはいつだったっけ。ただ自分がシャッターを切りたいという思いで、その場の空気ごと切り取ろう。撮り直しがきかないフィルムカメラで。
フィルムの面白さをフォトグラファーU-SKE氏に聞いた。
誰かに見せるためでなく、気づいたら夢中でシャッターを切ってるって、良いですよね。そう語るのはフォトグラファーのU-SKEさん。仕事で年間何枚も撮影し、賞の受賞経験もあるプロだがプライベートでは遊びで景色や人を撮り溜めている。お気に入りはざらっとした独特の粒状感で、ノスタルジックな色味の写真が仕上がるフィルムカメラだ。「旅に行ったときなんかは、奥さんに“帰りまでにフィルム1本撮りな、撮り終わったらちょうだい”ってただシャッターを押すだけでいいカメラを渡すこともあります。撮ってから現像まで手間や時間がかかるからSNS にすぐアップしたい人には向いてないかもだけど、できあがった写真には、その時その場の空気感が詰まってるんですよね。ときにはピンぼけしたり、フラッシュで光りすぎちゃったりしてることも。でもそれも味があっていい。僕はわざと途中で裏蓋を開けることもありますよ(笑)。写真のうまいへた、やカメラの知識や画角云々よりも、まずはカメラをいっぱい触って、自分が撮りたいという気持ちを優先させてみてください。気になる土地に足を運ぶでもいいし、身近な海や山、まわりの人を撮るのもいい。あらゆる場所やシーンで、撮りたい! と心動かされるものが必ずあるはずです」
これらの写真はU-SKE さんが遊びで撮ったもの。’70 年代から’90 年代のフィルムカメラをコレクションし、その日の気分でカメラを選んでいる。ハーフカメラ(写真:一番上)は半分の画面サイズで、24 枚フィルムだったら2 倍の48 枚で撮影が可能。撮った順番により写真の組み合わせが決まるのも面白い。光漏れ防止のためフィルムは巻き取るまで裏蓋は開けないのが鉄則だが、わざと途中で開けて感光を作る遊びもしているそう。失敗して真っ白な写真があがることもご愛嬌(笑)。またネガによってもできあがりの印象が変わる。種類にもよるが発色が鮮やかだったりノスタルジックな雰囲気だったりと、いろんなフィルムで撮り比べてみるのも楽しい。「カメラって持ち歩くことになるから、ファッションと同じでフォルムや色が自分好みかも考慮して好きなデザインでカメラを選ぶのも楽しみの一つです。家族のおさがりだったり、中古ショップで偶然見つけたものだったり、そんなカメラとの出会いも大切に」
U-SKE
photographer
海での撮影をライフワークとし、雑誌、広告等で活躍する傍ら湘南で自身のギャラリーを構え、プライベートレッスンやワークショップ「写心部」を開催している。2009年studio voice『日本の写真家100人』に選出。2019年冨嶽三十六景フォトコンテスト『HOKUSAI賞』受賞。https://u-ske.jp/