HONEY

2020.08.08

SURF

海と夢を遊牧した12年間 Liz Clark Nomadic Ocean Lifestyle Vol .01

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“世界をセーリングしながら、自然の美しさを守りたい”

航海した距離2万マイル、訪れた国12ヶ国、115 諸島。遭遇した嵐の数18、ビキニ8セットにサーフボ ード9本。太平洋をまたにかけ12年間海を放浪した、1人の女性と勇敢な猫。環境問題に取り組み、無人 のパーフェクトウェイブを追い求めたアドベンチャーストーリー。



キャプテン・リズ。パタゴニアのアンバサダーとして活躍する彼女のことを知ったのは、ほんの数年前 だった。ボートのデッキの上にリサイクル素材で作ったヨガマットを敷き、気持ち良さそうにヨガをし ている1枚の写真。長い間航海でもしているのだろうとぼんやり眺めていた写真はその後メディアでも 取り上げられ、インスタグラムのタイムラインにも頻繁に上がってきた。じっくりと読んでみると、数 ヶ月どころかなんと12年間にわたってセーリングを続けていた。“女性がたったひとりで、途方もない 長い年月を航海している”。この事実を知っただけで興味が湧き、リスペクトの気持ちが芽生えた。

そんな彼女に会える機会が巡ってきた。場所はオーストラリア・バイロンベイにあるパタゴニアショッ プで、自身初となる本の出版イベントだった。小さな身体に光り輝く大きな笑顔。「いま海から上がっ たばかりなの!」と、波情報とともに力強いハグをくれた。会場にはガールズサーファーはもちろん、 セーラーやセーリングをするのが夢だというキッズやファミリー、同じパタゴニアでアンバサダーを務 めるベリンダ・バグスの姿もあった。

ヨットの帆が風をうけて進むように、彼女のストーリーがゆっくりと始まる。






父の影響ではじめた運命のセーリング

カリフォルニア・サンディエゴで育ったリズ・クラーク。幼少期の頃の思い出といえば、家族揃ってセ ーリングボートで過ごした楽しい時間だった。9歳になる頃には学校を一時休学し、家族でメキシコを目 指した。父から地図の読み方を教わり、キャプテンのアシスタントとして過ごした7ヶ月間の日々は、い つの日か自分もセーリングで世界をまわりたいと夢見るきっかけになった。「自然の美しさに魅了され、 それをいつまでも守っていきたいという情熱を持ち始めたの。港に辿り着く度に外海からは想像が出来 ないくらい湾の中が汚染されている様子を目の当たりにし、悲しい気持ちなった」。環境への意識はこ の頃からすでに芽生えていた。幼少期の夢は? 「セーリングしながらサーフィンをして、世界をまわる こと。そして人間が巻き起こす多くの問題から、この地球を守ることだった」とリズ。



15歳のとき、海まで歩けるロケーションに引っ越した。サーフィンを本格的に始めたのもこの頃だった。 「一瞬で恋に落ちたわ。セーリングやダイビングを通して海を愛していたけど、より深く愛することが できたのはサーフィンのおかげ。その感覚に気づいたとき、ものすごく興奮したわ」。スポーツに限ら ず、人は何かに夢中になると旅に出たくなる。広い視野を持ち、世界に出てより多くを吸収し、深く学 びたいと思うのは自然な気持ちだ。セーリング、サーフィン、トラベリングその全てに共通するのは、 “FREEDOM”だとリズは言う。だが、その奥に隠された本当の意味は、不確実、不快感、チャレンジ、 驚き、そして魅了である。そう、快感と不快感、安定と不安定は常に背中合わせの存在。どちらか一方 に片寄ってしまうと、健全な人生を送ることは難しくなる。少しだけ感覚を研ぎ澄まし、本来の自分に 戻ることで“バランス“というオールマイティなツールを手に入れることができる。  




夢が現実になる瞬間。ゲームチェンジャーとの運命の邂逅

10代の後半になると、毎週のようにサーフィンのコンテストにエントリーしていた。NSSA(全米アマ チュアサーフィン連盟)も制し、プロの道へ進むべきか否か悩んでいた。サンタバーバラの大学で環境 を学びながら、旅、サーフィン、セーリングに明け暮れる日々。そろそろ進路を決めなければならない 卒業を目の前にして、その後のメンター(師)となるバリーに出会った。御年80歳。セーリングボート を所有していた彼は、ずっと世界一周の旅を託せる人を探していた。すっかり埃をかぶり諦めかけてい た夢を、もしかしたらリズが叶えてくれるかもしれない。そう思ったバリーは「リズ、僕のボートで世 界を旅してみないか?」とアプローチ。こうして小さな頃から想い描いていた、世界をセーリングする という夢が現実のものとなった。

22歳と80歳。年齢も体力も人生の立ち位置も違ったが、夢を叶えたいというエネルギーとセーリングが 好きという気持ちは同じだった。「バリーのオファーを受けた瞬間、身体が震えたわ。もちろん行きま す!って大声で叫びたかったけど、嬉しさのあまり何も言えなかった」。そんな運命の出会いから3年、 40フィートの“Swell”は出発の日を迎えた。リズはボートのあらゆることを頭に叩き込み、整備、修理、 無線の使い方に至るまで、すべてをバリーから学んだ。

次回は、ついにスタートしたリズの航海のエピソードをご紹介。お楽しみに。







Liz Clark リズ・クラーク サーファー、キャプテン、環境活動家、ブロガー、パタゴニアのアンバサダー。カリフォルニア・サン ディエゴ出身。サーフフィルム『Dear and Yonder』(2009年)でフィーチャーされた後、2015年に ナショナル・ジオグラフィックで“アドベンチャー・オフ・ザ・イヤー”にノミネートされる。2018年初 となる旅行記『Swell -A Sailing Surfer’s Voyage of Awakenin』を上梓。 www.swellvoyage.com @captainlizclark



掲載:HONEY(ハニー)Vol.25

photography : Jianca Lazarus text : Maki Mukaeda (3 little spirals)

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