HONEY

2020.08.15

SURF

海と夢を遊牧した12年間 Liz Clark Nomadic Ocean Lifestyle Vol .02

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“シンプルに全力で生きていると、小さな幸せにも深く感謝するようになる”

航海した距離2万マイル、訪れた国12ヶ国、115 諸島。遭遇した嵐の数18、ビキニ8セットにサーフボ ード9本。太平洋をまたにかけ12年間海を放浪した、1人の女性と勇敢な猫。環境問題に取り組み、無人 のパーフェクトウェイブを追い求めたアドベンチャーストーリー。




12年間にわたって世界をセーリングしたキャプテン・リズ。カリフォルニア・サンディエゴで育った 彼女は、セーリングしながらサーフィンをして世界をまわり、多くの問題から地球を守るという夢を 幼少期からもっていた。

そんなリズが22歳のときにメンター(師)となるバリーに出会い、世界一周の旅を託され、とうとう 海へ出発する時が来た……というのが前回までのストーリー。



40フィートに詰め込んだヴォヤージュへの期待と不安

友人や家族に見送られた出航の日。もう後戻りは出来ない。思い通りにことが進まず、もしかしたら泣 きながら港に引き返し、みんなをがっかりさせるかも知れない。そんな不安が何度も頭をよぎり、いっ そのこと出航を止めてしまおうか悩んだという。たくさんのサーフボードと必要最小限の荷物を積んだ Swellは、南太平洋の海へと滑り出した。



ボートには太陽光と風力発電システムが搭載されていて、ライトから冷蔵庫、給水ポンプやスピーカー、 パソコンなどの電力を補った。料理はプロパンガスで行い、温かいシャワーを浴びられる日はほとんど なかった。

どれだけシンプルに生きられるか? 地球にかける負担を最小限にするにはどうすればいいか? 地球の ことを考え、愛する海と密接に生きる道を選んだリズ。日々の行動やひとつひとつの選択にフォーカス することで、ポジティブな変化をもたらしたかったと言う。「当たり前のことだけど、シンプルに全力 で生きていると、小さな幸せにも深く感謝するようになる」。ダウンタイムには読書やダイビング、料 理、昼寝に時間を費やし、いいブレイクを見つけては、貸切りのバレルを満喫した。





また、海の生き物との交流にもかなりの時間を費やした。島を見つけるとボートを係留し、燃料や食べ 物を補充したり、ボートを修理したり、島民との出会いを楽しんだ。そんな彼女の傍らには、勝気でア ドベンチャーな相棒がいた。トロピカルなキャット、略して“トロピキャット”。ある島の空き家に住み ついていた捨て猫だった。生後6ヶ月だったトロピキャットを引き取り、一緒にボート生活を始めた。

「彼女は感情が激しくてしかも仕切りたがり、まるでキャプテンのようだったわ」。船内にあるすべて のものに興味を示し、どこへ行くにも興味津々でついてくる、まるで犬のような猫。ときにはカヌーに 乗り込んで波打ち際まで行き、ビーチウォークをしたり、森の中を散策したり、マウンテンバイキング にもついてきた。レストランやパーティ会場も一緒で、リズの友達たちとコミュニケーションをとった。 「私たちはワイルドでフリーなアドベンチャーを愛し、互いをリスペクトしていた」。






海という大自然に対峙したときに曝け出された自分の存在の小ささ

長い航海の中で一番印象に残った出来事は? シンプルだが最も気になる質問。「座頭クジラと一緒に泳 いだこと、パーフェクトな波でのチューブライド、ママが22日間セーリングに参加してくれたこと…… など色々あるけれど、一番の思い出は巨大ストームとの遭遇。太平洋を15日間かけて横断しているとき、 とてつもないサイズのストームに遭遇したの。帆も折れる寸前で、5日間続いた大時化は命懸けの挑戦だ った」。その小さな身体で、ひとり乗り切ったことが本当に信じられない。

ほかにも「もうダメかもしれない」と思う瞬間が何度もあったと言う。体力と精神力、そしてひとりぼ っちという孤独感。海という大自然に対峙したときに曝け出された自分の存在の小ささ。12年間のヴォ ヤージュで彼女が得たものは、私たちの想像を遥かに超えている。





次回は、かけがえのない地球や海への思い、そして長い旅へ出たことへで得たギフトについてリズが語 る最終回。お楽しみに!




Liz Clark リズ・クラーク サーファー、キャプテン、環境活動家、ブロガー、パタゴニアのアンバサダー。カリフォルニア・サン ディエゴ出身。サーフフィルム『Dear and Yonder』(2009年)でフィーチャーされた後、2015年に ナショナル・ジオグラフィックで“アドベンチャー・オフ・ザ・イヤー”にノミネートされる。2018年初 となる旅行記『Swell -A Sailing Surfer’s Voyage of Awakenin』を上梓。 www.swellvoyage.com @captainlizclark



掲載:HONEY(ハニー)Vol.25

photography : Jianca Lazarus text : Maki Mukaeda (3 little spirals)

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