HONEY

2020.09.26

SURF

The 2nd Generation 次世代ハワイアンサーファー Vol. 02

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Vol. 02 〈Emily Erikson〉

古くから名声あるサーファーや、それに関わる伝説的な人々が歴史を刻んできた場所、ハワイ。そんな レジェンドたちの2世がいま、同じ舞台で活躍し始めている。昔からずっと、そしてこれからもハワイ のサーフシーンはドラマティックであり続ける。

第2回は、ロジャー・エリクソンの娘、エミリー・エリクソンをご紹介。



DNAで受け継がれたビッグウェーバーのセンス



「1番好きなサーフスポットは冬、波が大きい日のサンセットとワイメア・ベイ」。そう語るのは、エ ミリー・エリクソン、28歳のビッグウェーバー。サーフィンを始めたのは17歳、ハワイ大学に通ってい るとき。父親はロジャー・エリクソン、かつて「エディ・アイカウ・メモリアル」に2度出場した経験 を持つレジェンダリーなビッグウェーバー。だがエミリーは誰に教わるわけでもなく、自らの意思でサ ーフィンを始めた。夏に始めて、半年後の冬にはすでに大波で有名なサンセットポイントで10〜12フィ ートのビッグウェーブをメイクしていたというから驚きだ。

「当時、周りの友達はパーティに夢中だったけど、私は毎週末ハワイ大学のあるマノアからノースショ アまでバスで通って、サーフィンばかりしてたの」。彼女はそうやって、昔から真摯に海と向き合って いた。2014年のある日、ノースカリフォルニアのマーヴェリックス(大波で有名なポイント)で、ライ ンナップにいた50人余りの男性が見守る中、その日一番ヘビーな波をキャッチした。その光景を見てい たビッグウェーブのパイオニア、ジェフ・クラークが「あの子のDNAには、ビッグウェーブに乗るこ とが組み込まれている」と言ったそうだ。そう、きっとそれは教わらずとも彼女の遺伝子に受け継がれ ていたものなのだろう。



2016年に初めて行われた女性のビッグウェーブコンテスト「ピアヒ・ウィメンズ・チャレンジ」には世 界中から12名の女性がエントリーし、その中にエミリーの姿もあった。大会当日は30〜40フィートにま でサイズアップ。全世界がこの歴史的なビッグイベントを見守る中、エミリーはワイプアウトによって 膝の靭帯を断裂、棄権となってしまった。しかしその後の手術とリハビリによって回復し、数ヶ月後の サンセットのピークにはガンにまたがる彼女の姿があった。

‟何があなたをビッグウェーブに向かわせるのか?”。きっとこれまで何百回と聞かれてきたであろう質 問を投げかけてみた。「大きい波に乗ると自由になれる。地球のパワーを感じるの。陸にいるときは人 からいろんなアイデアやイメージを押し付けられ、モヤモヤしちゃうことがある。でも海にいるときに は誰からも何も言われず、‟ビックウェーブに乗る”というワイルドなことに集中できる。そこに、とて つもない自由を感じるの」



ハワイで父に再会。戻ってきた‟家族の絆”

エミリーは6歳までノースショアで生まれ育ち、メインランドへの移住を経て、再度ハワイ大学に通う ためにここノースショアに戻ってきた。父親であるロジャーは地元のライフガードであり、ビッグウェ ーバーとしてコンテストに出ながらエミリーの母親と4人の姉妹をサポートしていた。しかし出兵して いたベトナム戦争の後遺症を癒すため、一家でロジャーの出身地であるメインランドに引越すことに。 その後両親は離婚、父はハワイに戻り、エミリーたちも場所を転々として生活していた。そのためかエ ミリーは引っ込み思案な性格になってしまったという。高校卒業後ハワイに戻るまでの間、父とは一切 接触がなかった。



「お父さんと再会したのは17歳の時。彼の中でもう私はベイビーじゃなく、自分で自分の問題を解決で きる大人になっているって分かるまでには少し時間がかかったみたい。でもそれからとてもいい関係が 続いてるわ。私が怪我したときにはすぐに家まで駆けつけてくれて、まるで自分のことのように親身に 世話をしてくれた。いまはもう年だからあまり海には入れなくなったけど、私がサーフィンするのをい つも見て、コメントしてくれるの。『今の波は最高だったよ』とか、『近くにいたサーファーの男の子 は、お前の邪魔をしてなかったか?』とか(笑)」

エミリーがハワイに戻ってサーフィンを始めたことが、家族の絆をまた繋げるきっかけになったのだと いう。「私はいろんな場所に住んだし、いろんなところがホームになったけど、ハワイももちろんその ひとつ。自分、そして家族の過去と対峙して、あるがままを受け入れることを学んだ場所なの。お父さ んは10年間私たちの人生から消えていたけれど、ハワイに戻ってサーフィンをしたことが彼の人生にま た家族という存在を持ち込めるきっかけになった。私たちだけじゃなく、お父さんの人生もポジティブ に変わったと思う」 

もちろん彼女は父から学んだこともたくさんあった。「お父さんのタフな性格を尊敬している。たくさ ん辛い経験をしながらも人生をナビゲートして生きる強い姿からいろいろ学んだわ。あと、人を外見で 判断しないこと。周りにはわからないような苦労や辛い思いをしてきたかもしれないから。私と彼の似 ているところは、どちらも身体を動かすことが好きで、いつもヘルシーに保つようにしていることかな。 71歳だけどすごく健康的で、いまだにスケートパークに行ってスケートしてるの。どこに行くのもクル マじゃなくバイクに乗ったりね。シンプルライフを大切にしていて、一度決意した目標を貫くところも 似ているわ」。それとあとひとつね、と彼女は続ける。「お父さんと私の好きなサーフスポットが同じ なの。‟波が大きい日のサンセットとワイメア・ベイ”。偶然なんだけど、おもしろいでしょう?」。そ う嬉しそうに教えてくれた。



掲載:HONEY(ハニー)Vol.21

photography & composition : Ke’alohi text : Alice Kazama 

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