HONEY

2020.10.16

CULTURE

エコロジカルな気持ちをアートをとおして表現 | Female Artists #01 マリッサ・クイン

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サーフィンとアート。クリエイティブなものを海で重ねあわせる

地元に戻ってから、生まれ育った場所が自然豊かな特別なところだということに改めて気づく。サンディエゴでも有数のサーフタウンで育ったのに、意外にも彼女がサーフィンをはじめたのはここ3年くらいと最近のこと。ただそれ以来、彼女はつねに海のことを気にするようになり、環境に強く意識を向けるようになった。サーフィンは、海や自然と人のスピリットが繋がっていることを彼女に気づかせてくれた。それにより自分がアートで何をやりたいかがわかりはじめたという。

マリッサが描くのは美しい動植物の姿ばかりとは限らない。ちょっとグロテスクなモチーフや表現も彼女のアートの特徴だ。描くものはいつも頭にあるという。瞑想をして頭に浮かんだものをさっとスケッチし、そこから細かく描き起こしていくのが彼女のスタイル。



「自分の創造性に従ってはいるけど、古代神話が大好きなので、意識的に神話もモチーフにする。異文化から学ぶことも好きだし、女神や女性について学ぶのも大好き。アメリカは男性的な神や戦士や征服といったことにフォーカスしすぎる傾向にあるけど、そこに女性の存在を加えたい。そして平和を表現したい。サーフィンをはじめてから、私は波のなかに女神や女性らしさを感じるようになった。そこに自分のアートとサーフィンとのスピリチュアルな繋がりを感じているの。とにかくサーフィンからはたくさんのことを学んでいるわ」

マリッサの創作は紙の上だけにとどまらない。依頼を受けて、これまで国内外で数多くの壁画も描いている。カリフォルニアではメキシコとの国境近くのインペリアルビーチで、またインドネシアのバリ島でも彼女の持ち味は発揮された。バリ島ではシャーク・フィニング(生きた鮫からフカヒレの原料となるヒレだけを切りとり体は海に捨てる漁法)に反対する環境保護団体のプロジェクトに参加し、シャーク・フィニング反対のメッセージを壁画に込めた。教育のためのボランティアとして無償で描いたが、滞在中に温かな海でサーフィンができることがなによりのご褒美だった。



サーフィンがライフスタイルになったことで、彼女の周りにはたくさんのサーファーの友だちが増えた。あるとき、ローカル・シェイパーの友だちからボードにアートを描かないかと誘われる。フォームに絵を描くのにふさわしいマテリアルは何か、レジンと絵の具がどう作用するかを時間をかけて探り、もっとも最適な方法を見つけだす。「液体のアクリル絵具が一番適していたわ。最初のボードには大きなクジラの周りにゴミを描いて、環境保護を訴えたの。そのアートボードはデルマーで開かれたボードルームショーに飾られた。そこでジェリー・ロペスやサーフィン界のアイコンたちに会えてすごく楽しかった。そのあとも何本もボードに絵を描いている。NPOの資金集めのためのラッフルの賞品になるビングのボードにも描いたわ」



部屋のなかにあるパーソナル・ボードにも彼女らしいバイオロジカル・アートが温かみのあるカラーで描かれていた。お気に入りはビングのシングルフィン・ロングボード。「自分がアートを描いたボードでサーフィンするのって、すごく特別なこと。サーフィンはアートだと思っているから、私のアートを海に持ち込むことで、創造性をさらに重ねる感じがするの。サーフィンしたら、ワクワクしながらここに戻ってきてまた創作に没頭する。作品をとおして、みんなが創造的な生活を送るように促せたら嬉しいわ」

そういって愛おしそうにボードに描かれたアートを見つめる彼女は、幸せそうな笑みをたたえていた。



マリッサ・クイン
北サンディエゴのエンシニータス出身。ロサンゼルスのアートスクールで修士課程を修了し、フルタイムのアーティストとして、また教授としても忙しい。海の近くに暮らし、日々サーフィンとヨガと瞑想を楽しんでいる。アートをとおして環境保護の大切さを訴え続ける。



掲載:HONEY vol. 28

photography & text : Takashi Tomita

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