HONEY

2020.11.03

SUSTAINABLE

NO EARTH, NO US 地球とわたしに「もっといいこと」Vol.2

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連載企画「No Earth, No Us」は、海洋プラスチック問題について取り上げています。「今この瞬間も毎分トラック1台分、 約15トンものプラスチックが海に流れ出していて、今日もどこかで愛しい海の仲間たちが犠牲になり、私たちも知らずに 摂取し続けている」。衝撃的な内容も多いが現実から目を逸らさず、出来ることから行動に移したい。第2回目は、環境活動家であり、日本初のプラスチックフリー専門店「エコストア パパラギ」を主宰する武本匡弘さんのインタビューをお届けします。



地球もわたしも苦しめるプラスチックは、もういらない!
何もしないでいるには遅すぎる……そう感じてやまないプラスチック汚染。変化が著しいこの数十年、「海から見る地球」と向き合ってきたストーリーとともに紐解いてみたい。


ビーチは紫外線や波などで、特にプラスチックが劣化しやすい場所。2020年は、使い捨てマスクや手袋といった「コロナごみ」も増え、海中ではクラゲのようにマスクが浮遊する風景も見られる


「当たり前の便利さ」を疑うことから始めよう
今年の初めにイギリスのとある学校で、大量のプラスチックごみを浮かべたプールで水泳の授業が行われる光景を見かけた。目的は、プラスチックだらけの海に暮らす魚たちの気持ちを、そして自分が今日出すごみと海が繋がっていることを、子供たちに理解してもらうためだそう。「こんなの嫌だ、今すぐ海に行って掃除がしたい」と口々に話す子供たち。意義深い取り組みではあるけれど、楽しいはずのプールで、子供たちにこんな授業を受けさせてしまう大人たちの責任といったら……。

酸性雨に怯えるだけでなく、今では「プラスチックの雨」が降るほど地球に蔓延したプラスチックが、人々の暮らしに浸透し始めたのはたかだか70年近く前。気づけば「使い捨て依存症」の現代ニーズを満たすために、世界のプラスチック生産量は年間4億トンを超えた。産業用プラスチックはさておき、日常はペットボトルや食品パッケージ、PCやスマホ、生活用品、家電や壁など、何から何までプラスチック。ペンや消しゴム、チューインガム、タイヤや靴底の削りカス、使い捨ての不織布マスクや生理用ナプキンだって立派なプラスチックごみ。ポリエステルやナイロンといった合成繊維の衣服やストッキング、タオルなどもファイバー状のプラスチックで、洗濯するたびに排水から海へ、最新の研究結果では合成繊維の衣服を着ているだけでも、洗濯するより多くのプラスチックを空中に放出するのだとか。他にも、水に流せるウェットティッシュ、掃除や食器洗い用のスポンジもほとんどがプラスチック製で、繊維カスが排水に。洗剤や化粧品は容器だけでなく、中身のマイクロビーズ、香料入りのマイクロカプセル、合成ポリマーといったプラスチック粒子も下水処理をすり抜けて海へ。紙コップや牛乳パック、アルミ缶なら安心かと思いきや、その内側にも多くは有害なプラスチックコーティングが施されている。

パッケージに関しては、日本は海外から「異常」と指摘されるほどの個別&過剰包装が一般的。商品を買うと何重ものプラスチックに包まれ、お弁当を開ければ容器だけでなく葉っぱ型の飾り付けまでプラスチック。お菓子袋やペットボトルは開けるだけでマイクロプラスチックが放出されるなんて、これまでどれほど巻き散らしてきたことだろう……。挙げれば切りがないほど過剰に、盲目に便利さに甘え、大きなプラスチックはもちろん、5ミリ以下の「マイクロプラスチック」、もっと極小の「ナノプラスチック」だって、毎日ゾッとするほど排出している私たち。

プラスチックとひと言に言っても、ポリ塩化ビニルやポリエチレンなど、素材自体の種類や成分は多数ある。そのうえ製品生産には可塑剤や難燃剤、着色剤など、発がん性や内分泌撹乱作用などが疑われる添加剤が多く加えられ、プラスチックの有害性はこうした危険な添加剤によるもの。それもプラスチック本体とは化学結合していないので、使うたび、熱や酸、油に晒されるたび、容器の添加剤は中身の飲食物に浸み出し、洗剤や化粧品を通して皮膚からも吸収し、すでに有害な添加剤が人体から検出されている。製品を選ぶとき、中身の成分表示はあっても、容器の成分までは素人にはまるでわからない。そんなプラスチックを安易に使い続ける私たちって、「果たして暮らしが豊かになっているのかな?」と思ってしまう。

廃棄物としても、プラスチックが地球を苦しめる罪は大きすぎる。焼却すれば気候変動や大気汚染を加速させ、埋め立てても有害物質が環境中に染み出し、世界の海には毎年1000万トン前後のプラスチックが絶えず流出している。その8割は陸地から川へ海へと運ばれたもので、海流に乗って大海原を漂流し、大半は海底に沈みゆく。その過程で形が変わり、紫外線や熱、風や波などで砕かれ劣化したとしても自然界では分解されないまま溜まり続けるのみ。海洋生物はそれを餌と間違えて食べてしまい、栄養失調や餓死、生殖異常、絡まって負傷や窒息死など、報告されるだけでも700種近い海洋生物が被害を受け、クジラやイルカといった海洋哺乳類は半数以上、ウミガメはほぼ100%。といっても亡骸の多くは海底に沈むので、報告されるよりはるかに多くが声なきままに命を落としている。おまけにプラスチックが漂うなかでは海中の汚染物質もスポンジのように吸着し、もともとの添加剤を含めた「有害物質のカクテル」となって小魚から大型生物へ、捕食されるにつれて毒素を濃縮しながら生態系全体に広がり、私たちも食物網のトップとしてそれらを受け取っている。





目に見えるプラスチックごみは海洋生物が誤飲したり絡まったり、うっかり入ってしまったり。肉眼で見えなくても、海中にはマイクロプラスチックやナノプラスチックも無数に存在し、プランクトンからクジラまで、サンゴまでもが摂食。クジラやマンタなどは海水を丸呑みしてプランクトンを捕食するのと同時に、大量のマイクロプラスチックも一緒に飲み込んでしまう


砂浜に散らばるプラスチックごみは、産卵にやってくる母カメ、孵化して海に還る赤ちゃんカメの通り道すらも妨げる


photography:Sachi Murai support:ecostore papalagi, Greenpeace Japan composition:Ayako Minato

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