HONEY

2021.05.04

SUSTAINABLE

世界の海から、魚たちが消える日|私たちができることはあるか?

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NO EARTH, NO US


「原因は本当に幅広く、気候変動や海洋開発、近年では洋上風力発電所の建設による環境破壊や海中騒音、観光による環境や生態系への悪影響も大きいとみられています。漁業もなぜ乱獲をするようになったかといえば、今は世界で一人当たりの水産物消費量が2倍に増え、その上に人口増加もあって、世界全体の水産物消費量は過去50年間で5倍に跳ね上がりました。そうして天然の資源が激減していく中、需要に応えようと養殖業が盛んになり、今や養殖の生産量が半分以上になっています。ですが養殖場を作る際の環境破壊、化学薬品などによる海洋汚染、餌となる小魚も大量に乱獲されるなど、養殖にも問題がさまざま隠れているんです」(滝本さん)

水産庁のデータを見ても、日本の海産物は8割近くが枯渇または枯渇寸前の状態に。日本は四方を海に囲まれ、北は流氷の海から南は熱帯のサンゴ礁まで、おまけに暖流と寒流がぶつかる海域に集まる魚種も幅広く、環境も生物種も世界に誇れる多様性を擁した海。恵みも宝庫だった日本の海も乱獲や開発が進み、温暖化で南方の魚たちが北上し、和食に欠かせない天然の昆布や海藻の森も激減。漁業の衰退だけでなく、養殖や海外からの輸入も増えて、漁業者の数もここ20年間だけで半減した。

「WWFでは、日本人に身近な水産物の現状をまとめた『おさかなハンドブック』を作成したんですが、食卓にお馴染みの魚たちでも赤信号寄りのものが多いんです。マグロやウナギ、サケやエビ、イカやタコも赤信号で、多くを海外からの輸入に頼っています。ですが、魚をまったく食べない保全というのはないと思っていて、なぜなら私たち人間も食物連鎖の上位にいて、海の恵みをいただくこと自体が悪いわけではないからです。まずは漁業や私たちの消費がこうした問題に繋がる背景を知って、魚の再生サイクルを壊さない配慮を大切に、認証を取得した漁業や養殖による水産物を選んだり、赤信号の魚たちは回復するまで消費を減らし、旬の魚介を食べたり。日常でできるそうした意識改革が海を守ることになり、買い物の選択はどんな社会を作るかに影響する大きな力だと思います」(滝本さん)

最近はスーパーやレストランでも認証を取得した漁業や養殖業によるサステイナブル・シーフードを扱うお店が増え、「海のエコラベル」を推進する「MSCジャパン」プログラム・ディレクターの石井幸造さんはそのメリットをこう教えてくれた。

「MSC認証は過剰な漁獲を行わず、生態系や環境に配慮し、地域や国際的なルールに則すなど、厳格な条件を満たす漁業に与えられる認証です。とくに食物連鎖の土台を支える小型魚については漁業の審査をより厳しく行い、生態系を基盤から守ることにも配慮しています。世界で20年以上の歴史がありますが、MSC認証をとる漁業が増えたことで、実際に生態系や漁業資源の回復が見られるケースが増えているんです。多くの方にこうしたサステイナブルな魚介を選んでもらうほど、持続可能な漁業に取り組む漁業者が増え、海と人間の健全な共存が叶っていくことになるんです」

人間も動植物と同じように必要な分だけ、「いのちをありがたくいただく」という謙虚さと感謝を忘れないことが、地球に生かされている私たちの心意気なのだと改めて思う。


photography : Tamaki Ozaki illustration : Etsuko Taguchi composition : Ayako Minato

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