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コロナによって変化した神々の住む島、バリ島の今

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ビーチを歩けば楽しそうにサーフィンに誘ってくるサーフインストラクター、週末は多くの人で賑わう海沿いのレストランやクラブ。一度訪れたことがある人なら簡単に想像がつくバリの日常。気軽に旅が出来ないコロナ禍のバリの状況を、現地ライターから届けてもらった。


2021年4月下旬、空港から一歩外に出るとじめっとした空気と照りつける太陽、どこからか漂ってくるお香の香りがバリに到着したことを五感を通して知らせてくれた。いつもは日に焼けた若いカップルが名残り惜しそうに空港へ入っていく姿や、バケーションを楽しんだ家族がお土産を抱えて手荷物検査をする姿、サーフボードを引きずりながら入国ゲートを出てくるサーファーで大忙しの空港も、この時期はマスクをした乗客数人がちらほらと到着するだけで、いつもとは違うバリを一瞬で感じた。今回のバリ訪問はいつものような観光目的ではなく、ビジネスビザで一時的に移住するためのものだった。
予想していた通り、この旅は典型的なものとはかけ離れていて、私の荷物には日焼け止めやワックスだけではなく、アルコール除菌剤やマスクがスペースを取っていた。2019年の外国人観光客の入国者数が1611万人で、最も人気のある島のデスティネーションとして世界で脚光を浴びていたバリは、今や外国人の数は1万人程度。そして、タイミングよく入国できた私もその一人だった。

オーバーツーリズム(Over Tourism)からノーツーリズム(No Tourism)へ

コロナの影響で最も打撃を受けたのが観光業。バリは観光によって経済が回っていると言っても過言ではないほど観光客は重要な資源なのだ。以前は観光客で大賑わいし常に交通渋滞が起こっていたクタ、スミニャックエリアは今ではシャッター街となり、多くの人が経済的打撃を受け職を失い故郷へ帰って行った。コロナ禍でも開いているショップは少しでも売り上げを伸ばすために30%〜50%オフのセールを行っている。人気エリア、チャングーのBillabongでさえも50%オフのセールを無期限で開催しており、打撃の大きさが伺える。

観光客がいなくなった今でもお店をオープンし続ける店舗ではセールの文字が目立っている

観光客のいないバリ島。コロナ以前には想像もできなかったことだが、ホスピタリティに根ざしたこの島では、今や厳しい現実となっている。ただし、デジタル・ノマドの中心地であるチャングーだけは、依然と変わらない活気にあふれていた。外国人が多く移住するこのエリアは唯一コロナの影響を受けてない場所にも見えた。

ビーチ閉鎖が解除され、以前のようにサンセットタイムをビーチで過ごす人が増えてきた

それでも、チャングーで一番人気のレストラン・クラブの“Old Mans”は現在も無期限の閉店中。サーフィン後のチルスポット、週末のパーティ会場として人気を博していたこの場所が閉まっているのを見ると、観光客の減少がもたらす経済の深刻さを想像させる。

金曜日の夕方、静まり返るチャングーの人気スポットOld Mans。一時期営業を再開したものの度重なる活動制限により2月から現在まで一時閉店している

笑顔が戻ったバリのサーフシーン

緊急活動制限の時期は主要ビーチは閉鎖され、立ち入り禁止のロープでビーチに入ることを許されなくなった。バリでよく見られるサーフスクールやレンタルボードショップも仕事がなくなり、閉鎖せざるを得なくなった状況になった。しかしコロナがもたらした影響は、全てが悪いものではなかった。多くの人にとって家族と過ごす時間、自分と向き合う時間が増えたように、バリの海にも良い変化が起こっていた。
入国制限によりサーファーの数は半分以上減ったように見え、サーファー同士の事故や波の奪い合いが起こらなくなった。ローカルと外国人サーファーがリスペクトし合いながら、友好的な雰囲気でサーフィンを楽しむことができている。そしてもう一つ、嬉しい変化が起こっていた。人が少なくなった今、海がより綺麗になっていた。サーフィン中にウミガメに遭遇することも珍しくない。自然が私たちを癒してくれること、自然の中で過ごす時間の大切さに人々が気付き始めている。

世界が変わっても変わらないスピリット

一時感染状況も落ち着き、観光客受け入れが期待される最中、2021年7月、バリはこれまでにないほど厳格な緊急活動制限に入った。バイク運転中にマスクをしていない外国人はその場で国外退去措置を取られたり、警察によるビーチの見回りや検問が多くのスポットで行われ、緊張感のある日々を過ごしていた。それでもバリに居続けたくなる理由はとてもシンプル。最高の波はもちろんのこと、物事を悲観的にとらえず、「どうにかなるよ!」という彼らのスピリットとあたたかい笑顔。このパンデミックは多くの人で賑わっていた神々が住む島に、ほんの一瞬、息つく暇を与えてくれているのかもしれない。

text & photography:Miki