【CANVAS ON THE WAVE】HONEYが気になるあの人にQ&A/パームツリーの光と影「Desmond Sweeney」

国内外の注目サーファーや新進気鋭のアーティストなど、HONEYが今気になる人たちに質問を投げかけるQ&Aの新連載。ここからお気に入りのサーファーを見つけるも良し、推しのアーティストを見つけるも良し。何かのインスピレーションに役立つはず。
7回目に紹介するのはオーストラリア出身のDesmond Sweeneyさん。パーフェクトな波の傍らにヤシの木が揺れるビーチを写実的に描くアーティスト。ユートピアのような美しい風景画でありながら、どこか寂しさやノスタルジックな感覚も呼び起こされるから不思議だ。アジアのエッセンスも要所に感じる、他にない作品を生み出す彼の頭の中を覗かせてもらった。


-あなた自身について教えてください。
両親が’60年代にスコットランドからオーストラリアに移り住み、僕は’70年代にシドニーのノーザンビーチズで生まれました。世界でも有数の美しいビーチの近くに住んでいたっていうのに、なぜか家族はそういう環境には興味がなくて、僕だけがいつもビーチに行っていました。サーフィンは高校入学と同時に始めたのでもう30年以上になります。アーティストとして仕事を始めてからは20年以上。奥さんのDeeは中国系オーストラリア人で、西オーストラリアで育ち今は家族みんなでフリーマントル(西オーストラリア)に住んでいます。子供はRafa Roseという5歳半の女の子と、2歳の男の子Beau Sunray、そしてもうひとり、虹の橋を渡って天使になったKawa Leafという女の子がいます。ラブラドール犬も飼っていて、名前はNamiです。KawaやNamiでわかるように、妻が20代の頃日本に住んでいたので日本の名前が好きなんです。

-普段の生活について教えてください。
いつも早起きで、5時には目を覚ましてNamiにご飯をあげます。Namiは6ヶ月の黒のラブラドールで、すごく元気。妻のDeeと順番にNamiをビーチに連れて行ったり、近くのスワン川まで歩いたり。子供たちが早く起きてきた日には車に乗り込んでビーチに行き、泳いだり歩いたり、コーヒーを楽しむのが日課。子供たちはこの夏ソフトボードでパドルしたり波に乗る動作を覚えたばかりなんです。
Rafaを学校に送った後は、2歳の息子の面倒を見ながら夫婦交代で仕事をします。Deeはクリエイティブディレクターでスタイリスト。初の写真集『Love is』を出版したばかりなんです。スタジオは自宅にもありますけど、週に2、3回はアートセンターに出向いて絵の描き方を教えたり、壁画を描くためにいろんな場所に行ったりしています。

-写真からも、自然と調和した環境に優しいライフスタイルが感じられます。
そうですね。数年前、家をリノベーションしたときに、ソーラーシステムを導入するという僕たちにとっては大きな決断をしました。西オーストラリアには太陽がいつも降り注いでいるので、追加でエネルギーを購入する必要がほとんどないんです。またガーデンには水がほとんどいらない在来の植物で溢れています。もう少ししたら、野菜畑のために再利用水と雨水タンクも取り入れる予定です。
2年前にヴァンを売って今は車1台で過ごしているんですけど、オーストラリアでは家族で車1台っていうのはものすごく珍しいことなんです(笑)。おかげで子供たちと一緒に歩いたり自転車に乗る機会が多くなって、地元で運転することが減りました。そういうところも環境に優しい生活と言えるかもしれません。

-ホームスポットはどんな場所ですか?
ローカルスポットのレイトンは波が小さくてビギナーや子供にぴったりな場所。なのでたまに北のトリッグビーチまで行きます。3時間南に走るとヤルズ(ヤリンガップ)やマーグス(マーガレットリバー)というサーフスポットがあって、波はいつでも最高! パワフルなリーフブレイクのいい波が割れるんです。サーフィンしたり友達に会いたくて、休日や週末にはなるべくそこに行くようにしています。

-どんなボードに乗っているんですか?
大きい波やバレルの波のときのお気に入りは、Keyoでカスタムした6’6”のシングルフィン。波がパーフェクトだったら絶対にこのボードをチョイスします。ホームでファンなサーフィンを楽しむならChristensonの5’10”ツインフィン。ボリュームがあってすごくルース。僕は身長が193cmあるからかなり小さいんですけどね。子供たちとのサーフィンの時には5’6”のスーパーワイドなソフトボードを持ち出します。

-サーフィンがあなたのアートに与える影響は?
サーフィンは僕にとってすべてで、人生に奥行きを出してくれていると思っています。’80年代後半からサーフィンを始め、当時の映像や写真、音楽、雑誌に魅せられました。僕が育ったノーザンビーチズは世界チャンピオンのサーファーや有名なシェイパー、優れたエアブラシアーティストが周りにいる環境。’90年代後半には僕もサーフボードへのエアブラシを始め、壁画を描き、バイクと洋服に没頭しました。当時と比べると今はカルチャーへの陶酔は減って、もっと海そのものとの触れ合いが多くなりましたね。サーフィンを通して自分自身を見つめたり、魂の体験を大事にしています。

-あなたのアートについて教えてください。
空想上の海の風景の中に、陰陽(イン・ヤン=森羅万象、ものごとはすべて陰と陽に分けられるという中国の思想)を意識した作品が多いです。光と影や、パームツリーに隠されたまやかしの悦びの裏にある静かな闇の真実を表現しています。

-竹の“すだれ”をキャンバスに、丸窓のように海の風景が描かれたシリーズがユニークですよね。すだれを使おうというアイデアはどのように生まれたのでしょうか?
以前5年間、シドニーのオペラハウスで使う舞台のセットやプロップス、背景などを描く仕事に就いていました。家具、スクリーン、年代物の工芸品などに絵を描いてたんです。その経験から、将来的に自分でもサーフカルチャーに重宝されるような作品を創りたいという思いが生まれました。竹のすだれを使ったのは、妻のDeeから撮影の背景として作ってほしいというリクエストがあったからなんです。

-アジアのカルチャーをうまく取り入れていることでオリジナリティが増しています。
僕にとってアジアンカルチャーとの最初の触れ合いは武道なんです。’80年代の半ば、10歳の頃から空手を、’90年代の初め頃にはカンフーを習ったことから始まっています。学校の授業で歌川広重と葛飾北斎や、日本の芸術から影響を受けたモネのようなアーティストとの出会いもありました。スタジオジブリの素晴らしい色彩も間違いなく私の色づかいや、色への執着に影響を与えています。
妻の家族は香港にルーツがあるので、子供たちは中国とスコットランドの血に、オーストラリアの海沿いのカルチャーが美しく混ざり合っているんです。今は妻のDeeの家族と近くに住んでいるので、アジアの文化や食べ物、行事などが日常に溢れるようにもなりました。

-あなたのアートは、アイランドバイブでありながら、静寂やどこか寂しさ、ノスタルジアのようなものも感じます。
寂しさやノスタルジアについて触れてもらえて嬉しいです。この陰陽のバランスを、風景を題材にした作品には必ず吹き込むようにしています。西海岸に引っ越したとき、もうすぐ4歳になる娘のKawa Leafを失ったばかりで、僕らは重い悲しみのどん底にいました。赤ちゃんの頃からよく僕のスタジオを覗いては、花や波をもっと絵に入れてほしいとお願いしてくる子で。彼女が亡くなった後、竹のすだれに絵を描くのが深い悲しみを癒す大切な時間となりました。1年以上かけてすだれのシリーズを12作品制作するというプロジェクトを自分に課し、そんな辛い時期を乗り越えたんです。このノスタルジアは彼女の記憶から来ています。僕が彼女を夢で見たり想うときは、まるで連続写真のようで、楽しかった思い出のフラッシュバックも決してカラフルではなく、どこか色褪せていてタイムレスで、同時にとても美しいんです。

-貴重なお話をありがとうございます。背景を知ると作品の見方も変わってきますし、より美しく感じるものです。そんなあなたのアートを日本から購入できる方法はありますか?
普段からWebサイトで海外へもシッピングをしています。ハワイやカリフォルニア、ニューヨーク、ニュージーランド、イギリスはよく発送しているし、ニューカレドニアにもコレクターがいますし、日本にも送ったことがありますよ。まあそうだろうなと予想はつきますけど、世界のコレクターのほとんどが海沿い在住みたいです。

-次の目標を教えてください。 
西オーストラリアで開かれる初めての大きなソロエキシビジョンに向けて、大小様々なキャンバスに描くコレクションの制作に取り掛かりたいと思っています。自分の作品の羽を今後さらに広げられることを楽しみにしています。

photography:Rachel Woods  text:Alice Kazama

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