HONEYが気になるあの人にQ&A_09/センシュアルなサーフコラージュ「Yoann Fournier」



35mmフィルムで撮影した写真や昔のサーフィンフォト、建築雑誌などを切り取り、自分の世界を再構築するコラージュアーティストのYoann Fournierさん。実際の写真だから、どこか現実味を残したユートピア感を味うことができる。ハンドカットによる有機的なラインも魅力。

-あなた自身について教えてください。
ビアリッツ出身の32歳。サーフィンやスケートボードの業界でフォトグラファー、クリエイティブディレクター、アーティストとして活動しています。若い頃からスケート、サーフィンだけでなくパンクやガラージュなどの音楽に没頭していたから、アーティスティックなところに向かっていったのは自然な流れでした。自分のビジュアル&グラフィックを追求したコラージュアートは「KILL YOUR IDOL」という名前の元で行っています。

-コラージュ作品について教えてください。
昔のサーフシーン、建築雑誌、自分で撮影した写真、センシュアルな女性のビジュアルなどをはさみや小さなナイフ、カッター、もしくは手を使って切り抜いて、10種類のノリを使い分けて貼り付けていきます。みんな素敵な写真集を僕にくれたりするんですけど、できれば切り取りたくないからその葛藤が辛いんです(笑)。

-お気に入りのシリーズはありますか?
MARCH LA.Bというビアリッツの時計ブランドのキャンペーンで作ったコラージュが気に入ってます(下)。僕のカリフォルニアトリップをテーマにしてるんです。ぜひチェックしてみてください。

あとは大好きなロングボーダーJJ Wesselsと写真家のNil Puissantとコラボした作品もお気に入りです(下)。

マスタングのキャンペーン用に制作した‘60年代のシリーズも(下)。激しくも落ち着いたテクニックの融合、そしてこのトリッピーでファンキーなムード。暖かい夏への喜びを感じさせてくれる色味です。

モデルのCarmella Roseとプールで撮影したシリーズも気に入ってます(下)。

-なぜコラージュアートを始めようと?
コラージュを始めたのは自然な流れでした。自分の原点に戻る、みたいな感じで。パソコンを使って作業することに疲れてきていたんですね。手作業でもっと荒っぽく、激しい方法でリメイクをやりたくなった。僕にとってコラージュっていうのは、写真のセレクトや色のハーモニー、雰囲気、消失点などによって完璧な表現ができるアートだと思っています。

-サーフィンがあなたの作品に与える影響とは?
サーフィンは生き方そのもので、もしサーフィンをしていなかったら自分自身を感じる機会がなかったんじゃないかなと。インスピレーションとかよりもっと、呼吸みたいなものなんです。特に’60年代、’70年代のサーフィンには情熱を傾けてきました。あのムード、サーフボード、シェイプ、ライディングスタイル、サーフィンの想像力、自由さ、音楽、車……当時のサーフィンにまつわるものすべてに。’60年代のサーフシーンを撮影していた著名なフォトグラファー、LeRoy Grannisは僕のコラージュの一番のインスピレーションですね。

-たしかに昔のサーフシーンなど、ヴィンテージっぽさが作品のひとつの特徴ですね。
僕はただその年代の大ファンなんです。今のサーフィンはやっぱり違う。パンク精神やオーセンティックなものが失われています。一部のサーファーや僕の友達はそのムードを踏襲していますけど、メインストリームのサーフィンは変わってしまったんです。今はスタイルやバイブスを追い求めるばかりでサーフィンがアクセサリーになってしまっているような。サーフスクールやビジネスに溢れている気がします。って、まあ仕方ないんだけど(笑)。僕らが生きている2022年という時代はおかしなことだらけ。本物とは何なのか。だからこそ自分のインスピレーションには昔のことを取り入れたいんです。わからないけど、写真のスタイルも昔のほうがよかったような感じがしてます。

-ハンドカットが、あなたのコラージュにスタイルを出していると思うんですが。
先程お伝えした通り、僕は原点に戻りたくて手を使うようになったんです。紙や糊の質感を感じるのが好きでね。手を使うと“破壊的なコラージュ”が生まれたり、逆にみんながフォトショップで加工しているのかと思うくらい(フォトショップは大嫌いだけど笑)精巧でクリーンなコラージュも作ることができます。

-すべてのコラージュにそれぞれのストーリーがあるんですか?
うーん……全部にストーリーがあるわけじゃないですね。どちらかと言うと僕の気分のほうが多いかな。でもそうですね、ストーリーか気分かのどちらかを頭に描きながら制作してます。最初に感じた雰囲気とインスピレーションを大事にしているから、クラシックでシンプルな作品が生まれるんです。でも旅をした後やそのときの感じ方で変わってきます。音楽とか映画とかにハマっているときはそういうのもアートに影響してきます。

-写真を見てからイメージが湧くのか、最初にイメージが来てそれに近いビジュアルを探すのか。どのようなプロセスで制作するのか知りたいです。
僕のモットーは“ノールール”。視点や配分、破れ具合、切り方、糊の付け方、絵の描き方などすべて制約なしで進めます。写真も意図せず探すようにしてます。実際の写真を見て他のストーリーを想像するのが好きなんです。それがコラージュアートの魔法みたいなところ。写真を元に自分の世界を広げられるから。つまりプロセスもそのときどきで変わります。海を眺めていると、この後ろに巨大な女性が横たわってたら面白いなって考えることがあったり。そんな感じです。ときどき風が吹いたようにアートの魔法が生まれることもあります。これといったルールはないんです。

-ルールはないけれど、一貫して守っていることはありますか?
そうですね、常に一定のものはあります。例えば、サイケデリックで現実離れした夢の世界に飛び込むための建築的な消失点を持つこと。そのとき僕が感じたセンシュアルでカラフルなイメージを表現することで、そこへの扉が開くようにしています。

-あなたのアートを日本から購入できる方法はありますか?
はい、オンラインストアから各国にシッピングしています。パリ、LA、ニューポートビーチに作品を扱ってくれているギャラリーがあって、もうすぐリスボンのギャラリーでも販売します。

-控えているコラボやエキシビジョンがあれば教えてください。 
2022年はいろんなコラボレーションが待っています。スケートボードブランドのMHotel SkateboardsやアパレルブランドのLouty、ビール会社のBud、ミュージシャンDope Lemonのカバーも現在進行中。時計ブランドのMARCH LA.Bや地元のスケートショップ(ローカルはサポートすべき!)とのコラボもあります。他にもまだ秘密にしなきゃいけないコラボが2022年の春に出るので、ぜひ楽しみにしていてください!

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