【上原かいコラム】#1_Happy New Year, Happy New Me

“ある事をきっかけに、気持ちをポジティブな良い方向に切り替える。 “ New year, New me〜心機一転。まさにそれを目指して、新年早々引っ越しをした。自らを奮い立たせて、新しい年に、新しい自分を生き始めるために。
大切な人を失ってから、前に進むことが出来なくなった。それまでずっと凄い勢いで進み続けてきたのに。スローダウンというより、機能停止状態。為す術もないまま、ただ悲嘆に暮れた。そんな自分に失望した。信頼するハワイのメンターは言った。“大切な人の死は、自分の死でもある”と。“愛を失い、自分を失い、希望を失い、それまでの人生をも失う。やがて死者は朽ちて、土に還る。その肥沃な土に、風に運ばれた小さな種が落ちる。時が来ると種は芽吹き、新たな生命が誕生する。そうして生まれ変わり、新しい人生を生きるのだ。“これを聞いたのは、暗闇に光が射すのを感じ始めた頃だった。土の中でバクテリアに分解されて、栄養分豊かなふかふかの土に生まれ変わる。その土から新しい芽がひょっこり頭を擡げる。想像するとワクワクした。生きる希望が蘇った。
やっと土から顔を出した新しい芽。自由に、何処ででも、のびのびと葉を広げられるように、居場所を変える決心をした。大切な思い出が詰まった慣れ親しんだ土地、安全地帯を離れることを選んだ。前に進むために。自分らしく生きられる場所へと。ゼロからの出発のように感じる時もある。不安もある。また希望もある。でも、一度死んだからと言って、ゼロになったわけではない。それまで生きてきた経験も、思い出も、授かった愛も、悲しみも喜びも、すべてが栄養となって自分の中にある。そこに本来の自分が芽を出して、大地に根を張り、空に葉を広げて、真っ直ぐ天に向かって伸びていく。そして青々と生い茂り、甘い実をつける大木になる。子供の頃、生まれ変わったら大きな木になりたいと真剣に思っていた。その願いを叶える時が来た。ハワイ島プナで、マンゴーの原生林を初めて見たときのワクワクを思い出す。20メートルもある大木に、たわわに実ったマンゴーが辺り一帯に甘い香りを放ち、熟した実が自然に落ちて、動物たちの恵みとなり、その実からは新しい芽が生えていた。マンゴーの森はそうして命を育んでいた。
手放した家の庭先にも、大きく成長したクワズイモがあった。生い茂る大きな葉っぱの生命力が好きで、都会に暮らしていた頃から、いつも部屋の中に置いていた。観葉植物として鉢植えされた姿とは違い、地面に植えると巨大化する。ハワイでは巨大なクワズイモがたくさん自生している。掘り起こして移植しようと思ったけれども、巨大すぎて無理だと言われた。そうなると、整地するために切り倒されてしまう。命が途絶えてしまうと思うと、とても辛く、申し訳なく思った。その生命力は、いつも私を支えてくれたから。迷った末に塩やお酒でお祓いをした後、自ら伐採した。地中の芋の切り株で、移植を試みることにしたのだ。新たな場所で、新しい土の中から芽を出して、また大きく育ってくれることを信じて。大きな葉と茎も大切に持ち帰った。太い茎の断面には染料をつけて、真っ新なフラの生成りのパウスカートにスタンプをした。植物のスタンプは、ラウカパラという伝統技法で、身を守ってくれるようにと願い、神聖なものに施される。命を支えてくれたクワズイモに感謝をして、その生命力を引き継ぎ、これからも守ってくれますようにと祈りながらスタンプをした。
愛着のあるものが執着となって、時に前に進めなくなる。それを手放すには大きな痛みが伴う。それでも新しく前に進むと決めた。真実の自分を生きるために。大切なものを引き継いで、心機一転、新しく生きる自分に、希望を持って。Happy New Me!


上原かい
ライフスタイル・ディレクター
ファッションスタイリストとして20年間、雑誌やモデル、女優のスタイリングを担当する。2009年大然の息つくハワイ島に移住。ハワイ大学コミュニテイカレッジでハワイの伝統文化を学ぶ他、自ら食物を育てながらハワイアンローフードを研究する。毎朝のサーフィンも欠かさないロングボーダー。ハワイアンベジタリアンカフェを主催する傍ら、ヨガやサーフィン、ヘルシーフードをテーマにしたハワイリトリートやワークショップを企画開催する。Facebook

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