
春の訪れや四季の移り変わりの時期になると揺らぎがちな身体。なんとかしなければ!と思いつつも、できる限り自分の免疫でナチュラルに対処していきたいもの。そんな方法を現役薬剤師としても活躍し、漢方先端臨床医学の研究にも携わっている中尾文香さんにインタビュー。そもそも漢方が持っている考え方や、気・血・水のバランス、日常生活からできるセルフメディテーション、参考にしたい漢方薬名などを聞いてみた。
Question「西洋医学と漢方医学の違いとは?」
西洋医学は病気にフォーカスして治癒へ導くもので、漢方医学は病気に悩む患者さんの身体全体にフォーカスして治癒を導くものになります。なので同じ不調の症状でも、身体が華奢でパワーが少ない方と、身体がしっかりとしていてエネルギッシュな方とでは、処方される漢方薬に違いがある時もあるのが特徴です。その症状だけではなく、なぜそういう症状が引き起こされているのかまで突き詰め、自分が持っているエネルギーを高めようと考えるのは漢方のよさともいえますね。
Question「よく耳にする3要素“気・血・水”について改めて教えてください」
季節が変わり気候が変わると、体調も体質も揺らぎがちですよね。漢方では人の身体は“気・血・水”によって成り立っていると考えられています。これらのバランスを保つことが自己免疫力を高めて、不調を感じない身体を作るための必要なポイントになってくるので、日常のふとしたときに意識してみてください。“気”というのは目に見えないですが元気や気力のエネルギーが循環しているもの。“血”というのは、血液というだけではなく、身体全体に栄養を運んでくれているもの。“水”というのは、身体の中を流れている水を指していて、経口保水だけではなくリンパ液なども含んだ意味合いになっています。もしテンションが上がらないなぁと感じるようであれば“気”が滞っているかもしれないので、太陽を浴びたり深呼吸をしたり自然のエネルギーを感じてみてください。そして“血”の巡りがスムーズでないと、活力がみなぎってこないものです。理由はさまざまですが添加物が多いコンビニ食であったり、栄養バランスが偏っている食事、小麦粉ばかりに頼っていないかを見直してみてください。そこを改善するだけでも栄養の巡りがよくなりますし、プラスアルファでサプリメントやプロテインなどを取り入れるのもおすすめですよ。また、日常で最も身近に感じられる“水”は摂ることも大切ですが、浮腫んでいないかにも目を向けてみてください。身体が冷えて汗をかけなかったり、お手洗いが遠くなってしまうと古いお水を抱えた状態になってしまいます。軽い運動やヨガ、ゆっくりと湯船につかることで抱えた水分を手放していこうと身体が動くので試してみてください。忙しく時間が取れないときは、シャワーを浴びる際に足湯をしながらだけでも効果的ですよ。

Question「PMSに効果のある漢方って?」
女性にはつきもののお悩みですよね。季節の変わり目にPMSの症状をいつもより感じやすいという方もいらっしゃいます。今でこそPMSという外国由来の名前がついていますが、日本では昔から明確な原因がないのに身体の不調を表す“不定愁訴”という言葉で着目されてきました。これからご紹介するのはあくまで一例の漢方薬名になりますが、これをきっかけに生理の1〜2週間前ほどに薬局や漢方処方のお店に足を運んで薬剤師さんに相談してみてください。たとえば、イライラしたり涙が止まらなくなったりした“気”に対しては「加味逍遙散(カミショウヨウサン)」。お腹の圧迫感や胸のハリを感じる、手足が冷えるのに頭がのぼせる、赤ら顔になってしまうなど“血”が滞っている症状に対しては「桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)」。生理前になると身体が浮腫む、胃がちゃぽちゃぽする、さらに吐き気や目まいも余分な水分が溜まっていることが原因の一つかもしれない、そんな“水”に対し、また顔が青白い、冷え症といった貧血症状の“血”に対しては「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」が主に使われます。もちろん、個人の体調に合わせてミックスしたり、違うものをおすすめしたりと幅広い処方をできるのが漢方の魅力なので、これを参考にしつつ薬剤師さんへ相談してもらえると嬉しいです。
Question「なんで心の浮き沈みにも漢方が効果的なんでしょうか」
心の浮き沈みは“気”の巡りに関係しています。心が塞いでしまっているとき、身体の中心部分であるみぞおちや横隔膜などが塞いでしまっていたり、滞ってしまっている状態です。なので“気”に対する漢方薬は圧がかかってしまっているものを晴らしてくれる生薬が含まれているので、改善へと促してくれますね。
Question「花粉症に効果のある漢方って?」
目の痒みや鼻水などの症状を抑えてくれる西洋医学のお薬だと眠くなってしまうのが心配な方などは、ぜひ漢方を選択肢に入れてみてください。花粉症でも症状によってさまざまなアプローチ方法があるのですが、さらさらとした鼻水が垂れてきてしまう場合は「小青竜湯(ショウセイリュウトウ)」を、鼻詰まりが強い場合には「葛根湯加川芎辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)」を主におすすめする場合があります。でも、もしまだ花粉症の症状が出ていない段階であれば解毒作用がありデトックスしてくれるような「黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)」などを試してみるのもいいかもしれません。ぜひ、花粉症やアレルギー症状の場合も漢方を視野に薬剤師さんと相談してみてください。

Special guest
中尾文香 Ayaka Nakao
“漢方おねえさん”としても活躍中。臨床と基礎研究の間で奮闘する現役薬剤師として、世の中への情報提供、教育に着目し活動を広げている。大学卒業後、順天堂大学医学部附属順天堂医院薬剤部入職。かかりつけオンライン薬局のYOJO薬局でも薬剤師として活動中。順天堂大学医学部博士課程にも在籍し、漢方先端臨床医学の研究にも携わる。
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