自然を愛する、あの人に聞く。心地よい暮らしを叶えるためのヒント | Vol.12 草木染め


12回目に取り上げるのは「草木染め」。草木染め麻ころも作家として活動する佐光一恵さんを紹介します。

地球にやさしいモノづくりを

高校生の頃に漠然と「地球上360度見渡したうえで、誰にも負担にならないモノづくりがしたい」と考えていて。25歳で初めて草木染めに出会ったときに魂が震えたんです。それからかれこれ20年。マイペースにヘンプで草木染めの衣をつくるようになりました。染め材料は漢方でもあるので、身体が植物に包まれたかのような心地よさを感じることができるんです。

草木染めは化学染料とは違い、植物や果実など天然の染料を使って着色できるのが魅力。水や大地を汚す心配もありません。もちろん草木染め以外にも、地球にやさしい暮らしをするために、自分たちが排出したものはできるだけ負担なく大地に還元するように意識しています。例えば、生ゴミやトイレなどですね。調理で使ったお湯も、大地の微生物が死んでしまわないように、熱湯のままに大地に戻すようなことはしません。さらに庭の畑には、竹炭、卵の殻、海で拾ってきた貝殻を撒いてみたり。旅するコンポストを活用して生ゴミをそのまま土に還しているので、カボチャや大葉、エゴマ、ミニトマトなどが自然と生えてくるんです。毎年いろんな植物が生えてくるのも楽しみの一つになっています。最近では、 ソーラー発電でミシンを動かすということにもチャレンジしています。

自身も自然の循環の一部であることを体感

そんなふうに自然に寄り添いながら暮らすことが、私にとっての心地よい暮らしになっています。瞑想をしたり、採取した植物からモノづくりをしたり、自分の庭畑でできた野菜や果物をいただいたりしていると、地球と地球上に暮らす植物、動物、鉱物、微生物、粘菌などのすべてが人間とつながっていることを感じられて。自然を守らなきゃという使命感ではなく、自分が自然循環の一部となっていると体感できることが心地よさにつながっています。みんなで歌ったり、踊ったりしているときにも同じような心地よさが感じられて。私にとっての「心地よい暮らし」は、自分の直感を表現できることなんだと思います。

楽しみながら地球のためにできることを

地球にやさしい暮らしというと、なんだ難しく考えてしまいがちですが、楽しみながらすぐにできることってたくさんあると思うんです。例えば、洗剤やシャンプーなどを化学物質の入ってないナチュラルなものに替えてみたり、口にするものをできるだけシンプルな素材からできているものを選んでみたり。自分の足元の自然を観察する、種から植物を育ててみるといった小さなことでもいいと思うんです。そうした私たちの小さな一歩が、想像している以上に地球にとってインパクトのある行動になっているんじゃないかな、と。「もともと地上に道はない。歩く人が多くなればそれが道になるのだ」という魯迅の言葉にあるように、私たち一人ひとりが自分の身体のことを想うのと同じように地球を自分の身体の一部だと思って行動していけば、きっと地球は本来の美しさを取り戻せるんじゃないかと思うんです。

身近にあるもので草木染めを楽しんで

「草木染めを試してみたい!」という方は、まずは台所で捨てられるものから染めてみるのがおすすめです。玉ねぎの皮や、お茶葉、コーヒーかすなどを乾燥させて貯めておき、量(染めたいものと同量)がたまったら、大きめの鍋で煮出して染めてみてください。着古したTシャッなどを染めて生まれ変わらせるのも素敵ですよね。

お散歩に出たときに採取した植物から染めるのも楽しいと思います。春は蓬、夏は葛や枇杷の葉、秋にはセイタカアワダチソウなどなど、自分の感性でいろんな植物を使って実験してみてください。染めるときの媒染材には化学物質の助剤を使わずに、お酢やミョウバンなどを取り入れるのがおすすめ。染め上がりを見るのが楽しみになるはずです!

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