自然を愛する、あの人に聞く。心地よい暮らしを叶えるためのヒント | Vol.15 ハーブのある暮らし

慌ただしい日々を心地よいものにするためには、自分をリセットする時間も大切。平日忙しければ週末だけでも、たっぷりと自然のパワーを浴びる時間をつくってみよう。日頃から自然に寄り添った暮らしをしている人に、自分をリセットするためのアイデアを教えてもらう連載企画。心地よい暮らしを叶えるためのヒントにしてみて。15回目に取り上げるのは「ハーブのある暮らし」。北カリフォルニア・バークレーにて、ハーバリストとして活動する加藤万里さんが登場!


心身共に働きかけてくれるハーブ

「ハーバリスト」とは、ハーブ(香草、薬草)の持つ力を多方面から把握し、使いこなし、共存していく生き方を伝え、提案させて頂くお仕事です。何よりハーブに敬意を持ち、ハーブを愛することが、ハーバリストの基盤だと思っています。

私がハーブに興味を持ったのは、もう30年以上前。日本に西洋のハーブが紹介され始めた頃に、先達のハーブ研究家の諸先生方の書籍を拝見して、「これが私の好きな世界だ!」と直感したのがきっかけでした。

当時は東京のアパートに住んでいましたが、すぐに小さなベランダでまだ日本でも数少なかったハーブの苗を育て始め、その香りと効能、可能性に夢中になりました。香りもそうですが、心身に働きかけてくれる神秘的なハーブの魅力に引き込まれていって。自分の心の奥で、植物と共存していく生き方に、「これだ!」という心揺さぶられる思いがありました。アメリカに移住してからは庭でハーブを育て、料理やクラフト、ハーブティやハーブバスなど暮らしのなかでハーブ使いを楽しむように。子育てが落ち着いてきたのを機に、メディカル方面からのハーブの知識をじっくり勉強し始めて、ハーブの持つ力というものをさらに深く理解できるようになったと思っています。

とは言え、まだまだハーブのことを知り尽くすには時間が足りなく、好奇心は膨らむ一方。ハーブに関わって30年以上経つ今でも、日々歯痒い想いをしています。

生きとし生けるものへの愛情と敬意を

ハーブの力を感じれば感じるほど、この世界は何か目に見えないものに動かされているような気がしてきます。それは私を謙虚にさせますし、ハーブのみならず地球の生きとし生けるものに対する愛情と敬意にも繋がっています。ハーブは、まさに私の人生そのものなんだと思います。

そんな私にとって、「自分の心が喜ぶ暮らし、良心に沿った暮らし」が心地よい暮らしにもなっています。植物を含め、地球に住む生き物、そして地球自身、そのすべてがバランスを継続し続けていくことができる世界に加担できる暮らしは、自分の良心に沿っていますし、喜びにもなっているんです。

例えば、ゴミに埋もれていない自然、それによって弊害を受けていない動物、植物のことなどを常に想い描きながら、少しでもそこに近づき、自然環境を維持できる生活を意識して暮らしています。ただ、日常生活のなかでそのようなことを100% 行うのは難しいですよね。そこから派生する自他への怒りや不満などの感情もまた、地球にとっては喜ばしくない影響だと思っていますから、なるべく感謝や幸せという気持ちを自分自身が持って暮らしていけるよう意識しています。また美しく暮らすということも、自分にも他の人々にも心地よく、幸せにする生き方だと思っています。

サステイナブルを意識した暮らしを

私は普段の生活でも、もう25年ほどオーガニックフードを頂き、ナチュラルクリーニングやゼロ・ウエイストを意識した生活をしています。バークレーは、グローサリーストアやファーマーズマーケットもオーガニックな物が非常に多く、サステイナブルを意識した暮らしをしやすい街だと思っています。

ガーデニングに関しては、できる範囲で固定種、在来種の種(西欧ではHeirloom種の種)から植物を育て、農薬、化学肥料も使いません。肥料らしいものもほとんど与えませんが、自家製コンポストを作っているので、時々土壌改良として土に混ぜ込んでいます。私の住む地域は冷涼なのもあり、病虫害もほとんどありませんが、ちょっとした状態の悪化には日本から持ち帰った木酢液(炭を作る過程で得られるもの)を薄めてスプレーしたり、土に加えたりしています。

ハーブ、植物に向き合う時間を大切に

ハーブやガーデニングに興味を持っている方は、自分が心惹かれるハーブ(草姿でも香りでも、効能でも)、もしくはご自身の生活で使ってみたいと思うハーブを育ててみるところから始めてみてください。たとえハーブを枯らしてしまっても、うまく育てられなくても、「自分には不向き」と思わずに、淡々と情熱を繋いで続けてほしいと思っています。すべてはハーブをもっと知っていくための経験になりますから。

『星の王子様』の話の中に、“なつかせる=絆を結ぶ”という一節があります。登場人物のキツネの「秘密を教えるよ。物事は、心で見なくてはよく見えない。一番大切なことは、目に見えない。君のバラをかけがいのないものにしたのは、君が、バラのために費やした時間だったんだ。忘れちゃいけない。君は、“絆を結んだもの”には、永遠の責任を持つんだ」という言葉のように、ハーブ・ガーデニングもその過程と向き合った時間にこそ、大事なものが多大に潜んでいるということを常に感じています。ぜひ植物を通じて、自身が費やした時間を大切にしてみてください。

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