私たちの生き方にルールはない! 波の上が私のヘッドクオーター

Erika Togashi

デザイナーとして誰もが憧れるキャリアを歩んでいたエリカ。
ある日バリでサーフィンに恋をし、自分のようなサーファーに向けたスイムウエアを作るため、すべてを捨てることを決意した。

サーフィンをきっかけに人生が大きく変わった女性のストーリーを知る「私たちの生き方にルールはない!」。第一回はサステイナブル・サーフスイムウエア「セプテンバー」オーナー兼デザイナーの、エリカ・トガシさんのワークスタイルに注目。

写真家としてニューヨークに渡った日本人の父と生粋のニューヨーカーの母の元に生まれた。クリエイティブな環境で育った彼女は必然とも言えるようにデザイナーとしてキャリアを積んでいった。カリフォルニアでパタゴニアやノースフェイスといった世界的なアウトドアブランドで働いていた頃、会社の方針でサーフィンをすることはあったが当時は同僚に連れられて……といった程度だった。アパレルを基盤から学びキャリアも充実してきた頃、当時付き合っていたボーイフレンドが務めていたサーフブランドのデザイン部へ転職する。職場はアメリカではなく、インドネシア・バリ島。サーフトリップのデスティネーションとしてあまりにも有名なバリでの生活は、エリカを自然に海へと誘った。パートナーや職場の友人はもちろん、周りもみんながサーファーだったし、海に行けば知っている顔ぶれが揃う。サーフィンに関する情報が溢れかえっていたその世界で、エリカはすぐにサーフィンにのめり込んでいった。サーフィンをすればするほどに楽しさが増していき、気づけば生活のすべてがサーフィンになっていた。

「サーフィンを本格的に始めたのは30 歳になってからだったから、他の人からすれば遅い方だけど、そんなことは気にならないくらい楽しかったの」

すべてが順風満帆だったが、なぜキャリアを捨ててまで自分のブランドを立ち上げようと思ったのか? 彼女はそれに対してこう答えた。「海で過ごす時間が長くなるにつれて、自分が着ているスイムウエアに疑問を感じるようになったの。どんなにサーフィン用と謳っていても本当にサーフィンに集中できるスイムウエアに出会えることがほとんどなくて……。自分ならサーファーとして、そしてデザイナーとして本当に快適に感じられるウエアを作れるんじゃないかって。そう思い始めたら止まらなくなってた。働いていたブランドはメンズだったから、スイムウエアを作りたいなら自分でやるしかなかったの」。

芯が強く、自分のやることに責任を持ち真っ直ぐに向き合うエリカ。好きなことともなれば時間も忘れてとりかかるクリエイティブな性格。そんな彼女だからこそ、大きな決断ができたのかもしれない。トップブランドのデザイナーとして歩んできたキャリアへの自信と大好きなサーフィンへの想いが、一気に転身を決意させた。それからの彼女は、サーフィンしたいと思う場所へ旅し、自分でデザインをしたスイムウエアを着てサーフィンするという、誰もが夢見るライフスタイルへと変わっていく。「現在の私のHQ(ヘッドクオーター)は、波の上! 自分でデザインしたスイムウエアを持って、色んなところに旅をして、色んな波に乗って、その旅先が私のデザインオフィスよ」

現在はニューヨーク、コスタリカ、バリを拠点に、ローンチしたばかりの『セプテンバー』を、ほぼ一人で切り盛りしている。ブランドを始めてからデザイン以外のことも多く学んだ。マーケティングやアカウンティング(経理)、苦手なことにも向き合わなければならないけど、それも好きなことのためと思えば苦にはならない。付き合っているフレンチボーイフレンドのマーティンも、そんな一生懸命な彼女の良き理解者としてサポートしている。

会社勤めのときとは生活のリズムが変わり、寝る間も惜しんでデザインに没頭することがある反面、好きな時間にサーフィンに行けるようになり、良い波に出会える機会も増えた。バリでの生活はクリエイターやサーファーの友人との交流も多く、インスピレーションやアイデアもとめどなく溢れてくる。ここ数年はローラ・ミニョンやカシア・ミドーといったアイコニックなサーファーやアーティストとコラボするなど、女性をサポートする活動も率先して行っている。またノーストレスでサーフィン出来るスイムウエアを提供できるよう、日頃から友人たちとサーフィンに行きテストを繰り返している。サーフィンに出会い、1 人の女性サーファーとして自立したエリカ。自分のようにサーフィンの虜になった女性たちに向けて、これからもスイムウエアを作り続けていく。

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