レイをつむぎ、伝統をつなぐ | Local Creators #02

MELEANA ESTES × HAWAIIAN LEI
美をクリエイトする女性たち

歓迎、感謝、愛情、お別れ。草花をつむぎ作られる「レイ」はハワイの人々のアロハスピリッツを表現するツールのひとつ。レイメーカー、メレアナ・エステスは伝統の中に自分のセンスを融合する。


祖母が残してくれた、お庭とレイ作りのスキル

初めてハワイの空港に降り立ったとき、お迎えのローカルから首にかけられた――― 多くの人は「レイ」にそんな思い出があるのではないだろうか。この場合のレイはもちろん「歓迎」を表すためのもの。私たちに一番馴染みがある、スタンダードな使われ方だ。ハワイではバースデーや卒業式、結婚式など「お祝い」のためや、お葬式で「感謝」または「尊敬」を伝えるためなど、気持ちの表現方法として太古から使われてきた、人生の節目に欠かせないもの。

そんなレイの伝統を守りながら現代にフィットするようアレンジをするのが、レイメイカーのメレアナ・エステス。ファッションスタイリストやデザイナーとしてのキャリアも持ち、ファッション撮影の際に使うレイやハクレイ(頭に飾るレイのこと)、イベントのフラワーアレンジメントなどを手がけている。活動の幅の広い彼女だが、今はレイメーカーとしてレイの作り方を教えることに力を注いでいる。

彼女がこの道で生きていくことを選んだのは、有名なレイメーカーだった祖母の影響だという。「小さい頃からレイを作るのが生活の一部だったわ。姉妹やいとこと一緒におばあちゃんの手伝いをして育ったの。スポーツの大会に出場するときなんかは、おばあちゃんが必ずチーム全員にハクレイを作ってくれたし、常に美しいレイに囲まれていた思い出がたくさん。だからなんとなく自然な流れで私のキャリアも始まった」。彼女の家のガーデンは、生前祖母が植えてくれた美しい花や植物で溢れとっても華やか。今は家族みんなでそのガーデンを大切に守っている。特に大きなプアケニケニの木は家族にとってシンボルのような存在で、この花でレイをつくるときはスペシャルなときだけ。ひとつのレイに、そんな想いやメッセージを込められるのもこの文化の奥深さだ。


レイづくりはアート。いつもクリエイティブに

メレアナが作るレイは、トラディショナルなものに比べるとやや現代的かつ冒険的。ファッション業界で働いていたバックグラウンドがあるため、様々なマテリアルを使って工夫をしたり、明るく華やかな色づかいに仕上げるのが得意だそう。「伝統的なレイメイキングは使う花や植物、作り方とか決まりごとが結構あるんだけど、私はカラーリングを重視しながらデザインを考えるのが自分のスタイルだと思ってる。伝統の花だけじゃなく、色とか形のキレイな花や植物であればなんでも取り入れるようにしているの。特に伝統的なレイメイキングでよく使われる『オヒア』という花は今、全滅の危機に瀕しているから、なるべく使わないようにしてるわ」

型にはまらずクリエイティブにレイを作る楽しさを教え、カルチャーをシェアすることをとても大切に思っているメレアナ。そのセンスの源が知りたくて、どんなことからインスピレーションを得るのかたずねてみた。「行く場所、出会う人、たまたま見かけたお花がインスパイアソース。例えばこの間ニューヨークに行った時、ファーマーズマーケットで、今までに見たことのないくらい大きな紫のカーネーションを見つけたの。『このお花でレイを作りたい!』って思ったらイメージがどんどん湧いてきた。最終的に、この紫のお花に出会わなかったら決して思いつかないような新しいデザインのレイを作ることができたのよ」

彼女にはファンが多くいるし、本人もレイメイキングを教えることが大好き。プライベートレッスンから、ときには100〜200人の大きなクラスを持つこともある。「レイメイキングを通してみんなが世界を違う目で見るきっかけを作れたら嬉しい。普段気にかけることのなかった、道端に咲いているお花の色や、スーパーで売っている植物に気を留めたり。自分の周りを見渡すようになったら、世界が変わっていくと思うの」

最後に、メレアナの考える”美しさ”について語ってくれた。「自分らしくいることに幸せを感じ、自信を持てている人。ハワイの女性はみんな自信に満ち溢れていてハッピーな人が多いと思う。レイメーカーとして言えば、レイは特別で美しい気持ちをもたらしてくれるもの。レイをつけた途端に顔つきが明るくなったり輝きを増す瞬間があるのは、自然の美しさを纏うことで、自分の美しさに自信を持たせる力があるからだと思う。レイには本当にスペシャルなパワーがあるのよ」

SHARE