非日常的なサーフ・エクスペリエンスを求めて | SEARCHING for SURF in the SEYCHELLES 後半

インド洋の宝石と呼ばれる島へのサーフトリップ

オーストラリアの2人のサーファー、ローレン・ヒルとフェリシティー・パルマティアがインド洋に浮かぶセーシェル島へ旅に出た。サーフィン文化がない第三国のため、ライダブルな波があるかどうか分からないままスタートした旅を紹介する後半。今回は、セーシェルでのサーフセッションの様子をお届け。


セーシェルにサーファーの姿はなく、サーフィン黎明期にタイムスリップしたようだった。スウェルチャートやポイントマップ、波高を調べるブイもない。私たちは三輪車にサーフボードを括りつけひたすら波を探した。どれくらい走っただろうか? 緑が生い茂る大自然の原風景の先に、ついに波を発見した。誰もいない海でターコイズブルーの波が規則正しくブレイクしている。サイズは頭くらい。2人同時に歓喜の雄叫びを上げる。

インド洋のオアシスでサーフセッションがスタート。この波はすでに誰かが乗ったことがあるかもしれないし、そうでないかもしれない。フェリシティが花崗岩が広がる岬の真後ろでテイクオフした。シャローなセクションを高速で駆け抜け、3つターンを決めてプルアウト。浅瀬のリーフは危険な場合もあるが、ここは大丈夫そうだ。足元に広がるサンゴは、この20年〜30年エルニーニョの影響を受けている。水温が上昇し過ぎて、’90年代後半には全体の80%が死滅。環境保護団体の活動により一部回復するも、すべてが元通りになるのはまだまだ時間がかかりそうだ。あっという間に数時間が経過した。潮は引ききり、波は浅瀬で小さくブレイクするだけとなった。

まだ見ぬサーフトリップが新たな物語を紡ぎ出す

沖からの柔らかな風で椰子の木が揺れている。足の指先を砂に埋めながら、女性だけのサーフトリップが少ないのはなぜだろう? と考える。私たちは色んな体験をしたかったのかも知れない。だからこうして未知なる場所を旅しているのだ。セーシェルはアフリカ東部から1300キロ離れ、115の島々からなる熱帯の島嶼国。首都ヴィクトリアのあるマヘ島、世界遺産「ヴァレ・ド・メ自然保護区」を有するプララン島、鬱蒼と生い茂る森が特徴のラ・ディーグ島が、観光客の人気スポット。サーフトリップのデスティネーションとしてのポテンシャルも大いにあるが、観光客の中心は裕福層とハネムーン。私たちのように波を求めて旅するサーファーを見かけることはなかった。

夕暮れ近くになったので宿に向けて出発した。町に入った途端祭りの喧騒が聞こえてきた。ネオンライトもすでに明かりを灯している。屋台から漂うスパイシーな香りが鼻腔をくすぐる。ターメリックがたっぷり入ったシーフードカレーが、今夜のディナーとなった。

この先のまだ見ぬサーフトリップが、ワイルドかつ多様な可能性を秘めていると信じている。そしてそれが自分にどんな影響を与え、何を意味するのかも。女性だけの旅は危険を孕むこともあるがそれを克服し、やり遂げることも必要だ。新たな物語を紡ぎ出し、そしてそれに耳を傾ける。非日常的なサーフ・エクスペリエンスを求めて、私はこれからも旅を続ける。

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