
Nouvelle Vague by Brazilian & Sweden Girls
ブラジルとスウェーデン。キャラクターの異なる国で育った同じ年のサーフガールが惹かれたのは、同じ波と景色だった。フランス・ビアリッツとゲタリーにおけるクリエイティブ・アートシーンでは、今この若き移住者の活躍が目立っている。それは偶然なのか? 海のそばで暮らすことを決めた2人を紹介。

ゲタリーは小さな港町だが、そこはコンディションが合うと絵に描いたようなパーフェクトウェイブが出現する、サーファーにとって憧れのポイント。町の規模は小さいが、駅、カフェ、学校、ホテル、住宅、小さな商店があり、生活するには何ひとつ不自由はない。海だけでなく山と緑に囲まれたバランスのいい環境から、ゲタリーに住むことはある種ステイタスとなっている。住人は外国人の割合が高く、フランス人でも国外で仕事をしている人が多い。

クリエイティブ関係の職に携わる人も多いが、その中でも一際目立っているのが、ウィメンズブランド「キャプテン・クチュリエ」を立ち上げたサーフガール、カロリーナ・フランゾイ。そしてもう1人 、キャプテン・クチュリエのイメージカットを撮影しているスウェーデン人のフィリッパも、ブランドが知られていくにつれ、アートセンスの認知度を急激に高めている。
カロリーナとフィリッパはともに1991年生まれ。それぞれのクリエイションは唯一無二の個性を発揮し、それを巧みに表現しつつコラボレーションすることで刺激し合っている。2人に共通するのはサーファーであり、ここ数年以内にフランスへ移住してきたということ。 注目の2人のクリエイティブな作品と、それぞれのバックグラウンドを探ってみた。前半はカロリーナをクローズアップ。
〈Carolina Franzoi〉心と身体は繋がり、洋服は心の一部を表す

カロリーナ・フランゾイは2014年にゲタリーに移住し、生活を整えながら2016年にブランドの構想を始め、2018年に「キャプテン・クチュリエ」をローンチ。 そのバイタリティの源やクリエイションについて聞いた。
HONEY(以下 、H):ゲタリーに移住したきっかけは?
Carolina Franzoi(以下、C):「母国ブラジル・サンパウロでもともと自分のブランドを持っていたの。けれど3回目のコレクションを終えたとき、国を出るタイミングだと感じた。それが23歳のとき。祖父部のルーツがヨーロッパという縁もありフランス南西部を旅していたとき、ゲタリーの風景に一目惚れしたの。サンパウロの生活は都市生活そのものでストレスが多かった。そこで育ったことは本当に感謝しているけれど、ローカルフードを食し、量より質重視のシンプルな生活がしたかった。国は離れたけど、デザイナーという仕事は手放さないことはわかっていたわ。ゲタリーは海が近く、そこから服作りに重要なインスピレーションを得られている。ブラジルの極端な階級格差に比べるとフランスはまだまし。移住した当初はほんの少しのフランス語しか話せなかったけど、焦りやイライラはなかった。なぜならサンパウロの暮らしで相当の忍耐力を培ったから」

H:ジャケット はオーバーサイズ 、シャツのように素肌にそのまま羽織る。パンツはバックジップ 、細部に工夫ありと一着一着が個性的なデザインですが、実際着てみるとすんなり馴染むから不思議。ブランドには一貫したコンセプトがありますか?
C:「タイムレスでクラシック。すべての女性はユニークな存在で美しく、その美しさは内面から出てくるもの。服は私たちを語る一部。自分たちの美しい感情を服で表現し、また服は私たちの内面も守ってくれる。 だからピュアでクリーンな服を作っている。洋服はすべてハンドメイドで手縫い。生地はヨーロッパを中心に自分で買い付けているわ。例えばリネンなど丈夫で長持ち、且つ着心地のよいものを選んでいる。そういう素材には敬意が払われ、よいエネルギーが宿っているから。高品質な素材を使い続けることで未来の顧客や新しい世代に、自分が納得できる品を届けられると信じている」


H:ブランド名の「Captain Couturier」はどういう意味ですか?
C:「意味というよりCを使った名前にしたかった。そこで海を連想させる言葉Captainを見つけ、縫製屋を意味するCouturierを加えたの」
H:話は変わりますが、カロリーナからはいつもポジティブなパワーを感じます。落ち込んだときなどはどんな対処をしていますか?
C:「身体を動かすことが多い。特に水中はリラックスできるので、海に行って泳いだりサーフィンしている。 サンパウロに住んでいるときも時間があればプールに行ってひたすら泳いでいた。身体と心は繋がっているから、瞑想や読書をすることも好き。 違う世界に連れて行ってくれるしね」

H:サーフィンを始めたのはゲタリーに来てから?
C:「サンパウロでもやってたわ。そのときはショートボードだった。海まで2時間くらいかかったけどよく通っていたわ。こっちにきてからロングボードを始めたの」
H:ブランドの話に戻りますが、今後の展望を教えて。
C:「ブランドを始めたばかりだけど、続けていくことが大切だと思っている。幅広い展開や極端に売上を伸ばしたいとは思わない。品質を守ることが何より大切で、そのため
には、自分自身がよりよいマインドでいることが大切。そう思えるのは混沌ばかりだったサンパウロでの日々を経験したおかげ」