
HONEY Vol.33「世界のビーチシーンの今」のバイロンベイ特集でピックアップしたイラストレーター兼ファッションデザイナーのClare Duffy。サーフィンやスケートをしたり、ビーチでマルガリータを嗜む犬たちの日常をパステルカラーで描く。オリジナリティたっぷりの作品は彼女のWebサイトでチェックして。ここでは本誌で掲載しきれなかったアートの話や、クリエイティブな人々が集まるバイロンベイのアフターコロナの生活など、Clareへのインタビューを全公開!
―自己紹介をお願いします。
バイロンベイを拠点に活動するイラストレーター兼ファッションデザイナー。バイロンベイには、アーティストやミュージシャン、デザイナー、写真家など、クリエイティブな人々が集まっていて、興味深い人たちがたくさんいるの。バイロンベイに引っ越してきた当初は、Tallowというレディスサーフブランドでデザインアシスタントとして働きながら、サーファーたちと交流していたわ。私はもともと犬が好きで、サーフィンをする小さな犬のイラストを描き始めたの。その後もストリート/サーフブランドのAfendsのレディスデザインの責任者をしたり、ファッション業界で働きながら、常にアートを描き続けていたわ。1年間スペインに滞在し、ヨーロッパを旅行している間に思い切ってイラストに専念することに決めて、フルタイムの仕事を辞めたの。


―サーフアートは色々あるけど、クレアの作品は他にない世界観でおもしろい。自身のアートについて教えてくれる?
自分のイラストのブランドを「ハウンドタウン」と名付けているの(“ハウンド”はハウンドドッグから来ているのは絵を見れば明らか!)。これは、’70年代に誕生し、’90年代に再び登場したスケートチーム「ドッグタウン」が由来。常にヴィンテージを参考にしながらライフスタイルをとらえ、その雰囲気を伝えるようにしているの。バイロンベイのサーフシーンや旅先の夜のバーのシーンなど、リアルな場所が「ハウンドタウン」のモチーフ。ペットの肖像画もたくさん描いていて、デジタルイラストと水彩画の両方を提供しているの。時々、人間の犬バージョンも描く。その人の性格や外見と、どんな犬になるかをマッチングさせるのはとても楽しいの。
―犬とサーフィンをテーマにした理由は?
サーフィン犬のアイデアが浮かんだのは、いつなのか特定できないくらい。私は大の動物好きで、小さい頃からいつも犬のスケッチをしていたから。昔、ヌーサでSUPと2匹の犬を連れて波打ち際まで歩いていく男性を見たことをはっきりと覚えている。その犬が2匹とも、彼がSUPを水につける前から飛び乗り、海に出ることにとても興奮していたの。犬も私たちみたいに波の上ではしゃぐことのが好きなのね。
バイロンベイがクリエイティビティとサーフィンの雰囲気が混ざり合った場所だったというのもベースにあったと思う。ハウスメイトを笑わせるために、波乗りする小さな犬のスケッチをしていたこともきっかけのひとつ。スペインに住んでいた頃、自分が没頭できるイラストレーションスタイルを確立しようとしていたの。パステルカラーのピンク、イエロー、ブルーを基調に、少しずつキャラクターやシーンを追加していって、今の「ハウンドタウン」を築き上げたのよ。
―イラストから感じてほしいことはある?
私のイラストから幸福感やポジティブな雰囲気を感じてもらいたい。私のイラストが笑顔や笑いをもたらし、家庭を暖かい雰囲気で満たすことができれば成功ね。それと、困っている犬や動物を支援する仕事もしたいと思っているの。動物たちのために、動物愛護の意識を広め、私のできる範囲で役割を果たそうと考えているわ。

―クレアの動物愛がすごく伝わってくる。バイロンベイは、動物や自然がより身近に感じられる場所だったりする?
ひとつストーリーがあるわ。バイロンベイの人気のサーフブレイク、ザ・パスに数人で集まって、木に登っているコアラの赤ちゃんを観察していた時のこと。なんとなく不安定に見えたから、私は隣の男性に言ったの。「もし赤ちゃんコアラが落ちたら、キャッチしましょうね!」って。そしたら1分後に、5メートルもの高さから本当に落ちてきたの! その男性が落ちてきた赤ちゃんコアラを受け止めてくれたんだけど、怪我をしているかどうか分からなかったから、コアラの扱い方を知っている近くで開催されていたアボリジナル・ツアーのスタッフに一時保護してもらったの。それから私たちはコアラの野生動物保護団体「フレンズ・オブ・ザ・コアラ」に電話して助けを求めたわ。コアラを診察してもらって、孤児であることを確認した後、リハビリプログラムに参加させ、大きくなったら野生に戻すことにしたの。
このアボリジナル・ツアーはおすすめよ。アボリジニの地元の人が案内してくれて、この地域のアボリジニの歴史や物語を学んだり、ブッシュタッカー(アボリジニに伝統的に利用されてきたオーストラリア原産の動植物)を試食したり、世界で最も古い文化の一つであるアボリジニの文化について理解を深めることができるの。ツアーについては、Webサイトとインスタグラム で調べることができるし、本当におすすめ!

―バイロンベイが好きな理由は?
たくさんあるけど、一年中穏やかな気候、安定した波、自然、犬にとって恵まれた環境、そして本当に良い人たちがいるっていうことかな。クリエイティブなエネルギーが溢れていて、単なる消費主義ではない体験やブランドを作り出している人たちがいる。茶道やダンスパーティーから、クールなバンドのイベント、地元のサーフショップでのサーフフィルム上映までね。


―コロナ以降、バイロンベイの雰囲気や状況はどのように変わった?
コロナが始まってから、バイロンベイの雰囲気はちょっとしたジェットコースターみたいだった。ほとんどの場所が影響を受け、ロックダウンや政策、メディアに対応することを強いられたから。でも、バイロンはコロナから隠れるのではなく、バランスをとってコロナと共存することに成功したと思う。
バイロンでは創造的で楽観的な精神が保たれてる。多くの人が自然に戻り、外に出て運動する時間を増やしたし、何かを作って、より自由に仕事をする機会にした人もいる。都会の人がリモートワークを始めて、閉鎖的な都会から海辺に移住するなど、地域全体が大きく変化していると思う。人口構成もずっと豊かになって、以前はバックパッカーや観光客で溢れていたこの町が、今では高級車でいっぱいになっている。寂しい部分もあるけど、コミュニティの精神は変わっていない。この町には強いコミュニティがあるの。
―バイロンベイのアーティストコミュニティでは、コロナの後に何か動きはある?
バイロンベイに住む多くの人にとって、コロナは外に出て何かを始めるためのきっかけになったんじゃないかな。アーティスト、デザイナー、ミュージシャン、そしてサーファーたちの間で、ちょっとしたクリエイティブなムーブメントが起こっていると言えるかもしれない。この間にビジネスを始めて成功した友人もいるし、クリエイターたちも、今もコロナが世の中の大半を占めているように見えるにもかかわらず、自分の野心のままに前進し続けているわ。
―今後やりたいことは?
「ハウンドタウン」でやりたいことはたくさんあるんだけど、核となるのはイラストレーションとアートワーク。最近、ボンダイで壁画という大規模なアートワークを手がけたんだけど、もっと壁画の仕事をしたいと思っているの。今年は展覧会を計画してるし、他にもコラボレーションやハウンドタウン初の絵本など、さまざまなアイデアを練っているわ。

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