
2021年末、世界のサーフィンイベントを主催するワールド・サーフ・リーグ(WSL)の中で最高峰のツアーに位置付けられるチャンピオンシップツアー(CT)に、史上最年少でクオリファイされたのは、わずか16歳のハワイアン、ベティルー・サクラ・ジョンソンだった。さらに日本時間の2022年8月8日、数々の伝説を生んできた歴史ある大会「US OPEN」で優勝を果たすという快挙も成し遂げた。その名前から容易に想像できるように、ベティルーは日本にルーツを持つ女の子。日本人にとっては“サクラちゃん”と呼ぶ方がしっくりくるかもしれない。そんな女の子の出現によって、日本とハワイのサーフシーンが再び勢いを増すはずだ。
※このインタビューは2022年2月に行われたものです。
-今年はサクラちゃんやノースショア出身の友人ルアナ・シルバ、カウアイのガブリエラ・ブライアンなど、ルーキーも含めてハワイローカルがたくさんCT入りしています。ハワイの女性サーファーがまた盛り上がってきた印象があるんですが、どう感じていますか?
ハワイから私たち3人がCT入りしているのは素晴らしいこと。サーフィンが生まれた場所であるハワイの代表として出場できるということを名誉に思うわ。
-3人とはどんな仲ですか?
ルアナは小さいときから同じ学校に通っていたり、サーフィンしたりしていた親友のひとり。ガブリエラはカウアイ島出身で育った島が違うということもあって、まだたくさんの時間を一緒に過ごせてないけど、大会で会う時はお互い良い雰囲気。みんな良い友達で、一緒にサーフィンができる環境は最高だと思ってる。
-世界のトップ選手と一緒に戦う中で感じたことを教えてください。
私がCTに入れたことはそれなりの理由があると思う。選手はみんなヒートを勝ち進みたいと思ってて、私もそれは同じだし、できると信じてる。女性のトップサーファーと一緒にコンテストで戦えるのはとても名誉なこと。一緒に海でサーフィンして、彼女たちからたくさん学ぶことができるのも最高よ。サーフィンからは常に学ぶことがたくさんある。CTにはトップサーファーが揃っているから、良い波に乗れた選手が勝てるんじゃないかなと思う。
-これまでヒーローだったカリッサ・ムーアや他のハワイの選手とも、これからは対戦相手として向き合うことに。どんな心境ですか?
ハワイアンガールとして、もちろん自分も良い成績を残したいし勝ちたいけど、同じハワイ出身のサーファーを応援したいって気持ちもあるの。カリッサやマリア・マニュエルと同じヒートで戦って、同じ場所でサーフィンできるのは嬉しいけど、彼女たちは私より経験が長いから学ばせてもらうこともたくさんある。カリッサは世界一のサーファーだと思うし、マリアは素晴らしいスタイルを持つサーファーですごく優しい。心からリスペクトしていて、同じ時期に一緒にツアーを経験できていることはとてもラッキーだと思ってる。
-自分の強さの秘訣はなんだと思いますか?
成功したい、もっとヒートに出たい、ヒートでベストなサーフィンをしたい、そしてヒート中に何があってもそれに対応して勝ちたいという強い思いと、サーフィンに対してすべてを捧げられることが私の強さの源。コケたくないし、良い評価がほしいし、ベストなサーファーになりたい。自分は何を求めてるのかを明確にして、ここだ! っていうタイミングで自分が何をすべきか知るのが、そのゴールに近づく方法だと思う。
あと、コンテストで強くなるためにはヘルシーでいることが大切。健康的な食事を心がけて、マインドを整えて、心を穏やかに保つ。常にベストなサーフィンを見せられるようにね。
-CT最年少として戦うことで、プレッシャーに思ったり、逆にアドバンテージに感じることはありますか?
プレッシャーとアドバンテージは両方あるわ。でも自分自身にあんまりプレッシャーをかけすぎないようにしてるの。私はただサーフィンがしたいし、自由なマインドでいたい。最年少でルーキーというのが意味するのは、このヒートは絶対に勝たなきゃいけないとか、こうしなきゃいけないとかの縛りがないってこと。私が勝ちたいというだけ。でも時々プレッシャーは自分にとっていい方向に働くこともあるの。プレッシャーがあるからこそ生きている実感があるし、ヒートでは気持ちが燃えてくるきっかけにもなる。そういう意味ではプレッシャーをアドバンテージにしてるのかも。それにCT最年少サーファーでいるのは心地良いことでもあるわ。

-サーフィンを始めたきっかけを教えてください。また、どうしてプロアスリートになろうと思ったのでしょうか。
ハワイの海のそばで育ったことが大きいわね。両親は海が好きで、パパはサーファー、ママはボディボーダー。いつもみんなで海に行っていたし、両親は私にも同じように海を大好きになってほしかったの。プロアスリートになった理由は、もともとコンペティティブな人間だったから。小さい頃からコンテストで勝つのが好きで、負けることがとにかく嫌いだった。それで、毎日競い合ってサーフィンをしながら、世界を旅していろんな経験をできるプロサーファーになる道を選んだの。
-ハワイのサーフィン仲間と、どうやって切磋琢磨してきましたか?
ノースショアは男の子のサーファーの方が圧倒的に多い。私はいつも数少ない“ガールズサーファー”として存在していた。でも男の子は大きな波やクレイジーな波にチャージすることが多いし、こっちにもチャージするよう仕掛けてくるの。もしその波に行かなかったらからかわれたりするから、それが嫌で自分を奮い立たせるようになったの。その経験が良いサーファーになることができた大きな要素だと思う。友達グループの男の子たちは、唯一女の子の私をいつも見守ってくれてるのもありがたい。
-ハワイのサーフコミュニティの魅力を教えてください。上の世代から教わったことは何かありますか?
ハワイのサーフコミュニティからはたくさんのことを教わったわ。特にハワイにはリスペクトの精神がある。上の世代から「海の中でも常に周りの人に親切にして、リスペクトを忘れないように」と学んだの。時々私たちがいつも入ってるスポットに全くリスペクトなしでやって来るビジターがいるけど、人に嫌な思いを絶対させちゃいけないと思ってる。
-最後に、ハワイで今一番好きなサーフスポットを教えてください。
ハレイワの波が大好き。家から近いから、私の庭って感じなの。危険な波が立つ場所でもあるけど、好きだからそれすらも平気に感じられる。流れがとても強くて、すごく浅いトイレットボールっていうセクションもある。サイズが大きい時はライトの波で、小さめの時はライトとレフトの2つのピークがあるの。このポイントが好きな理由は、初めてサーフィンを学んだところだからっていうのと、幼い頃からたくさんの時間を過ごした楽しい思い出がある場所だから。ハレイワはプロも一般のサーファーもノースショアのキッズがサーフィンを始める場所なの。ハワイのプロサーファーもみんな、ここのインサイドのキッズゾーンでサーフィンを始めるのがほとんど。あともうひとつ好きなスポットは、マウイ島のホノルアベイね。コンディションがいい時はパーフェクトで、ハイパフォーマンス系の波だから。
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