
あまり情報は出回っていないが、訪れた人は口をそろえて「すごく良かった」と言うスペイン・アンダルシア地方。ロングボーダーのクロヴィス・ドニゼッティも「あそこの波が人生で一番だ」と絶賛している。その言葉を聞いてから2年ほど経過した今、やっと行ける機会に恵まれた。果たしてアンダルシアのサーフィンはどんなものなのか? どんな楽しみがあるのだろうか? 2回に分けてお届けするスペイン・アンダルシアへのサーフトリップ。その前編をお届けします。
スペイン・アンダルシア地方、カディス(Cadiz)からタリファ(Tarifa)までのサーフマップ。出典元『I LOVE THE SEASIDE』
アンダルシアの海岸線は長いが、サーフィンが出来るのは大西洋側。イベリア半島を地図で見ると、ポルトガルのサン・ヴィセンテ岬(サグレス)の内側にあるのがわかるだろう。この岬がスウェルをブロックするため夏は波がなく、パワフルなうねりが大西洋全体に届き始める晩秋から初春までがシーズンと言われている。しかし晩秋に行って「波が全くなかった」というサーファーもいるため、油断は禁物だ。出発したのはフランス・バスク地方から。片道1000km以上の距離をスペインの北から南へと縦断。今回はクルマだけの移動を選び、移動に丸1日かかった。
途中のオリーブ畑。南へ近づくにつれ緑は減っていく。空を遮る高い山、建物はなく、ただただ広い
ラッキーなことにアンダルシアに到着したのはポルトガルのナザレがビッグウェーブを記録した週。目指したのはエル・パルマル(El Palmar)という小さなビーチタウン。このビーチは8kmにも及び、最も頻繁に波が立つ。サーフショップも何軒か集合しているため、予め目星をつけていた。そして実際のところ、波があった。
到着した日の翌朝、胸~肩くらいの波がキレイにブレイクしていた
あたった! 滞在した1週間は毎日波に恵まれた。アンダルシアはウィンドサーフィンも有名なので風を心配したが、初日を除きそこまで影響を受けなかった。360日晴天といわれるように、天気にも恵まれた。ただしお昼過ぎに25℃近くまで気温は上がるも、朝晩は15℃以下まで冷え込むので注意が必要だ。海水はバスクより温かいが風の有無、強弱によって体感温度はかなり変わってくる。「2/3ミリのウェットスーツで年間事足りる」と専門誌に書かれていたが、朝は冬用のウェットスーツ、さらにブーツもあった方がベターで、想像していたよりサーファーも多かった。スクール生を除いて多いときでワンピークに10名前後、朝の早い時間帯は2~3名とほぼ貸切状態。スクールがなければ人は少ないが、訪れた平日は毎日開催されていた。特に女性だけのスクールが印象に残った。ブロンドヘアを束ねた女性たちはショートボードかそれより少し長めの板でチャージしていく。形よく崩れる波に臆することなく全力でパドル。入って分かったが、エル・パルマルの波は見た目のわりに優しい。ワイプアウトしてもそこまで悲惨なことにはならない。女性たちは入ってくる波を次々とゲットし、サーフィンを心から楽しんでいた。
ポルトガルに大波が到来していたとき、エル・パルマルも‘THE DAY’になった
ショートボーダーとボディボーダーが一緒にチューブイン。知らない人同士でも「Go Go‼︎」と声をかけう
波がいいせいか、水中フォトグラファーも登場
さらに撮影用のジェットスキーも。ビーチはお祭りのような雰囲気で夕暮れまで盛り上がっていた
建物は全て低く、海沿いから一歩裏に入れば空き地も目立つ。主要道路以外の道は舗装されておらず最初は戸惑った
–{さらに一歩踏み込んだ情報を求め、ローカルを尋ねることに}–
強風の日に一度だけ、地図で地形を確かめながら移動したところ、波とサーファーに遭遇することができた。現地に来てみるとアンダルシアの海岸線は複雑な形をしており、蛇行しながら続いているのが分かる。つまり色々な地形が存在する。ここはそのときの条件で自分なりのポイントを発掘する楽しみがあるだろう。しかし幸か不幸か今回は波があったので、同じポイントで入り続けた。しかしエル・パルマル含め、広いアンダルシアのサーフ事情をもっと知りたい。そこでローカルの人たちに尋ねてみることにした。答えてくれたのは「Aframe surf」のアレックス。女性のサーフィンスクールを開催するショップスタッフだ。
「Aframe」はショップの隣に系列のカフェがあり、ここだけが唯一朝からオープンしている。クロワッサンが美味しかった!
午後のあるとき海に入っていたら波待ちの間に髪が乾いた。強い日差しと湿りを帯びないカラッとした風
周辺の観光情報と、今回一番驚いた「水がない」というインフラ事情について、次回の後編でお伝えします。