
Maria Petersson from SWEDEN
涙が出るほどの寒さと、映画のワンシーンのような景色
スウェーデンのトッププロでありフリーサーファーのマリア・ピーターソン。現在はイギリス南西部のコーンウォールにあるセント・アイヴスと、ノルウェーのロフォーテン諸島の2ヶ所をホームと呼んでいる。コーンウォールには大きなサーフコミュニティがあり、透明度の高いビーチに美しい自然、さらにイングランドらしい可愛い建物が建ち並び、のどかな田舎の風景も楽しめる。もちろん冬になると気温も水温も10℃を下回るが耐えられる温度で、心地良いサーフスポットだ。一方セカンドホームのロフォーテン諸島は寒さの厳しい場所で、サーファーも数えられるほどしかおらず、天気も年間を通してあまり良くない。それでもマリアはロフォーテン諸島の北極海でのサーフィンのほうが好きだと言う。
「ロフォーテンでサーフィンするには確かに勇気が必要。海上がりの着替えが最も辛い時間。ウェットスーツを脱ぐ時に何度も泣いたことがある(笑)。氷のように冷たい風と雪が容赦なく吹きつけ、海で冷えきった身体にさらに追い打ちをかけるの。グローブを外してウェットを脱いでいる間に手は凍っていき、身動きがとれなくなっていく。ああ、こうやって話しているだけでも涙が出てきそう(笑)。でもそれに耐えるだけの価値があるのよ」
ここでのサーフィンは命がけで、信頼できるギアと心の準備が必要になる。分厚い6㎜のウェットスーツに、さらに分厚い7㎜のブーツ&グローブ、もちろんヘッドキャップも。そんな厳しい環境の中でも、一度味わったらやみつきになるような極上波と壮大な景色が広がっている。島全体には30人程度しかサーファーがいないが、サーフィンを授業として選べる学校もあるし、クールな女性サーファーも多いそう。海の中ではいつも女性の数が男性を上回っているというから驚きだ。
マリアはここで何度も映画のワンシーンのような、感動的な景色に出会っている。「シークレットスポットで仲のいい友達とサーフィンしていた時のことなんだけど。鏡みたいにつるっとした海面に、周りを取り囲んだ雪山の景色と光が映り、完璧な波が絶え間なく届いていた。ラインナップで波待ちしている私たちの頭上を大きな鷲が飛んでいき、アザラシが周りで遊んでいたの。そこに今までに見たことのない綺麗なサンセットが広がり、笑顔がこぼれて止まらなかった。暗くなるまでたくさん波に乗って海から上がると、空の半分はまだオレンジ色の光が残っていて、雪の降る反対側にはオーロラが浮かんでいたの。いま思い出しただけでも鳥肌が立ってくる。それくらいマジカルな経験だった。みんなが思うほどコールドウォーターでのサーフィンは悪くないのよ」とマリアは嬉しそうに語った。
–{マリアへのQ&A}–
北極海でのサーフィンにはどんな準備が必要?
7㎜のグローブ&ブーツに、私の場合は6.5.4㎜のウェットスーツ、ヘッドキャップがあれば大丈夫。ギアがしっかりしていれば寒くない。サーフィンが好きだったら、それだけで十分よ。
寒い海でのモチベーションは?
目の前で割れるものすごくいい波が、自然と私のモチベーションを上げてくれる。それに悪天候の時にボードに座っていると、なんだか夢の中にいるような、不思議な気分になれるの。
北極海のベストシーズンは?
春と秋がベストシーズン。3月には山が雪に覆われて旅行者はいないし、波も最高。秋には冬のスウェルが届き始めるから、また波が良くなる。毎日サーフィンできる時もあるくらい。
女性が身体を冷やしても健康上は大丈夫?
もちろん長く寒い海の中に入っていたら筋肉や関節にとっては良くないと思うけど、ウェットが良ければ平気なの。信じられないと思うけど、熱くなってジップを下げることすらあるのよ。
掲載:HONEY Vol.27
※内容は掲載当時のものです