注目のガールズサーファー|ワイキキの今を生きる16歳「ヘイリー・オット」(前編)

ティーンエイジャーとは思えないほど成熟したマインドとサーフィンスタイルを持ち、世界中から注目されはじめているヘイリー。ガールズサーファーの数がぐっと増えてカルチャーも育っている、ワイキキの今をお届け。


HALEY OTTO
ヘイリー・オット
シカゴ生まれ、ハワイ育ち。ビラボンがスポンサードするプロロングボーダー。14歳にしてアメリカ国内のU-18ロングボードの大会で優勝し一躍注目の的に。

Waikiki


ハワイ語でwaiは「水」、kikiは「湧く」。ワイキキはかつて新鮮な水が湧き出る場所だったことからこう呼ばれていた。同時に、kikiには血や精子という意味もあって生命、新しい命を思い起こさせる言葉でもある。


© Mike Ito


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静かなワイキキでひと際目立つ、新しい世代
人のいないワイキキ。澄みきった海水。コロナの影響でそれまでビーチにごった返していた観光客の姿が消えた。サーフィンの父と呼ばれ、ワイキキビーチにある銅像がランドマークともなっているデューク・カハナモクが1900年代初め頃に見ていた景色と同じか、それよりも閑散としていたかもしれない。生きているうちに見られることはもうないであろう、とても奇妙な光景だった。

観光客がいなくなったことでもちろん大打撃を受けたハワイだったが、よかったと思える事柄もいくつかある。ワイキキの水の透明度が高くなり、砂浜が美しくなったこと。サンゴの状態が良くなってビーチ付近にも魚が増えたこと。これまであり得なかった、ウミガメの産卵がオアフ島でも見られた。ローカルたちは「観光客のための場所だから」と普段遊びに行くことのないワイキキビーチにテントを張ってチルするように。サーファーにとっては、いつも観光客で激混みのサーフスポットを仲間だけで貸し切れたことが一番よかったかもしれない。
観光客がいなくなると、より鮮明にローカルサーファーの存在が際立って見えてくる。最近サーファーガールがぐんと増えているワイキキ周辺では、サーフィンが抜群に上手な子たちがいて、SNSでも盛り上がりを見せる。彼女たちを中心に新しいワイキキ・カルチャーが成長しているような印象なのだ。中でも気になるのが、16歳のロングボーダー、ヘイリー・オット。ニーパドルで沖まで向かい、波のピークから華麗にテイクオフしたと思ったら小刻みなステップであっという間にノーズまで到達。足を揃えてノーズに数秒とどまる立ち姿は、西洋絵画のような優美な趣さえある。美しさだけでなくその高い技術力も評価され、若干14歳でアメリカ国内のU-18ロングボードの大会で優勝を果たした。彼女がこうやって結果を出せているのは、同じ世代のワイキキサーファーたちと切磋琢磨しながら成長しているからだった。

「同世代のワイキキキッズは私にとって家族みたい。サーファーとして、人として向上できるように常にお互い刺激し合ってるの。仲間がいてこそ今の私がいるから、この環境に心から感謝してる。みんなとは大会のヒートでもよくあたるんだけど、競うことも楽しんでるんだ」
ヘイリーやその周りも然り、ハワイでは小学校からホームスクール(すべてオンライン授業で、学校に通う必要がない)を選択する子どもが多い。だから必然的にビーチでの人間関係が勉強以外の学びの場となってくる。つまりワイキキキッズにとって上の世代や同世代サーファーと、地域のコミュニティが特に重要な役割を果たす。良いところを吸収して、また下の世代にも同じように受け継いでいくのだ。

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ワイキキサーファーの友達はたくさんいるけれど、一番の仲良しはケリースとティキ、そして幼馴染で彼のカニエラ。いつもみんなでサーフィンするか、波が小さい日はカヌーまたはカニエラが働く船に乗って沖に出ている。アサイボールを食べに行くのもルーティンのひとつだ。ケリースはWSLで常に上位にランクインし、カニエラはRVCAにスポンサードされていたりと、それぞれものすごいサーフィンスキルで人々を魅了しているにも関わらず、遊び方は16歳そのもの。ほっこりしてしまう。

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