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徳島から世界へ! 天然染色「藍」が地球を救う

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最近、ファッションが与える環境負荷について考える人が増えてきた。この問題のひとつとして挙げられるのが、化学物質での染色による土壌や河川の汚染。実際に工業用水汚染の約20%がアパレルなどの繊維産業の染色によるものと言われている(世界銀行の推定)。そこで、自然の素材を使った天然染色が再注目されはじめた。特に日本を代表する染色「藍染」は世界に誇れるサステイナブルな伝統工芸として、私たちももっと深く知っておいていいのでは。そんな藍染の世界へリードしてくれるのはHONEY Vol.30の特集「ARTS & CRAFTS JAPAN」で紹介した、徳島から藍染を発信するサーファー、永原レキさん。職人として活動するだけにとどまらず、藍染スタジオ&カフェをプロデュースし、藍染やサーフィンを通じて自然の大切さを伝えたり、地域の幸せや伝統の暮らしを守るために日々奔走している。ここでは本誌で紹介しきれなかったインタビュー内容をお届け。永原さんが愛してやまないジャパン・ブルーの世界を覗いてみよう。

–{藍染にも「発酵」が関係している!?}–
「藍染は日本だけじゃなく、世界中で人の暮らしに寄り添ってきた染色方法です。数ある草木染めの中でも、藍染はもっとも技法が難しいもののうちのひとつで、時間もかかります。春に種をまき、夏から秋にかけて葉を収穫して天日乾燥、その後冬場に約4ヶ月かけて定期的に水をかけ攪拌(かくはん・かき混ぜること)させ葉の発酵を促します。こうすることで葉っぱ自体についている菌が葉を分解していきます。微生物が働いてくれるんですね。できあがった「すくも」に灰汁(木灰と水を混ぜたアルカリ性の水溶液)を入れて、さらに液中の微生物の餌となる日本酒や麩(麦の糠)を加えて発酵を促すと、葉に含まれている青色の色素『インディゴ』が染色可能な状態となり、布や糸が青く染まります。染める素材も綿や麻など天然素材のほうが、より染まりの相性がいいんですね。天然由来の原料だけで生み出す染料なので、染液が寿命を終えて最後廃棄する時も合成染料に比べると水や土に還りやすく、自然環境や生態系に優しいんです。綺麗な川や海を守るために、僕は天然染色を推進しています」

※古来、原料は藍という植物の葉が主だった。しかし産業革命以降、合成染料インディゴピュアが西欧より世界中に広まったことで、植物由来の伝統藍染文化は世界的に見ても衰退の一途を辿っている。そんな中、日本では江戸時代以降「藍」の産地として栄えた徳島県の吉野川流域を中心に、全国各地で今なおその文化が継承されている。

–{日本のかっこよさに気付いた、藍染との出会い}–
「11年くらい前、フローサーファーと名乗って国内外を旅していました。長く滞在していたオーストラリアやニュージーランドでは食べるものや着るものをきちんと考えて、オーガニックライフや環境活動を実践しているサーファーが多い印象でした。サーファーとして海を守っていく、という責任感もひとり一人が持っていた。そういう人たちとの出会いもあり、帰国してから日本のオーガニック事情が知りたくてビッグサイトで行われていた『オーガニックプロダクツ展』に足を運んでみました。そこで僕の故郷、徳島で藍染を扱う衣料メーカー、株式会社トータスに出会ったんです。藍の生産量は徳島が日本一なので小さい頃から触れ合う機会はありながらも、実際には抗菌・防臭・消臭効果があることくらいしか知りませんでした。話を聞いてみると、持続可能で、自然にも優しい“最強のオーガニックコンテンツ”だということがわかって、しかもそれが自分のふるさとでできるなんて最高だと思ったんです。その会社のブースには当時70代のおばあちゃまが立っていて、白髪に、足の先まで全身藍色の服を着ていました。それがものすごくかっこよくて。当時僕はかぶれていて『日本なんか』って思ってたから、改めて気づかされました。日本のかっこよさに!」

–{海も、空も、藍もブルー}–
「藍染のブルーにも特別なものを感じたんです。僕らは海を眺めながら育って、サーフィンもしてきた。濃淡のある海のブルー、水も空気もブルー。藍がまさに同じブルーだった。しかも名前が“あい(=LOVE)”。これしかない、と思って藍の道に入ることを決意しました。旅していたときにはお金もない、住む家もない、なんてことも多くて、ホームシックにもよくなっていた。でも、水平線を見ていると地元がイメージできて励みになったことを覚えています。海と空って全部つながっているんだなって。世界と自分のふるさとをつなぐ水平線。2016年に独立して立ち上げたプロジェクト『in Between Blues』の名前はそんなところからきてるんです」

–{「衣食同源」。着ることの大切さを伝える}–
「着るも食べるも、もともとは植物がベースなんですよね。オーガニックコットン、シルク、麻なんかの生地や糸は農業で生み出されてきた。藍で染色することで生地が丈夫になって、抗菌・消臭・防虫効果でより機能的になる。昔の人にとって衣類はファッションだけでなく、長く使えることが重要だったんです。着るものは今以上にとても大事なものとされていました。最近は『食を考える』ことはスタンダードになってきて、マクロビやヴィーガンのカフェが流行っているけど、『着るを考える』意識が薄れている。昔から『医食同源』、つまり食べることが健康につながるという風に言われてきたけど、僕は『衣食同源』でもあると思っています。僕にとっては食べることと着ること、さらに住むことまでもがイコールで、同じプロセス。食べものだけじゃなく、身を包むもの、暮らす場所や環境というような自分たちを取り巻く物事に関して、より良いプロセスで生み出されたものをチョイスして取り入れてほしいと思います」

–{サーフィンと藍は自然とコネクトするツール}–
「サーフィンはとても神聖なもの。波に乗って楽しむだけに見えるけど、人と自然がつながるための大切な儀式だと思っています。人にいろんな“氣づき”も与えてくれる。それは藍染も同じ。僕はサーファーのコネクションが地球を良くすることができると信じているんです。海外ではサーフィンのネットワークが素晴らしく、サーファーが環境活動や社会活動にしっかり貢献している。それって日本でもできるはず。サステイナブルな伝統文化もサーフィンから伝わったら説得力があるんじゃないかと思っています。その昔、阿波の藍商人が廻船問屋や船乗り、船大工、林業家と業種や地域を超えたつながりを大切にして藍を日本全国に広めたように、徳島から世界に環境と伝統を発信したいと思っています」


藍は食べることもできる。栄養価が高く、抗酸化や抗菌作用があることから薬草としても親しまれてきた。永原さんがプロデュースする、徳島県海陽町の「in Between Blues」ではオーガニック藍を使った“ブルー”な食事も楽しめる。最近では、藍の抽出物にはコロナ不活化効果があるとの発表も出た。いま注目すべき原料であることに間違いない


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