
インドネシア、スマトラ島の西沖に浮かぶ無数の島々からなるメンタワイ諸島。そこには世界中のサーファーたちが一度は行ってみたいと夢見る、サーフィデスティネーションがある。ハードなイメージが定着しているメンタワイだが、数え切れないほどのファンウェーブが、ひっそりとブレイクしている。
東南アジアを中心に近年LCCのフライトが増え、今までなかなか行くことができなかった場所へも手軽に旅ができるようになった。それに伴い、5年ほど前に観光客の増加への期待と地元民の交通手段として、西スマトラの小さな町パダンとメンタワイを繋ぐ高速フェリーも開通され、メンタワイのサーフリゾートやサーフキャンプへのアクセスが以前よりかなり改善された。週に3回と未だ限定はされているものの、以前は週に1回の夜行のフェリーか個人のスピードボートをチャーターするという手段しかなかったことを思うと、この高速フェリーはメンタワイを訪れるサーファーにとって、非常に便利なオプションとなった。
地球上で最も素晴らしいサーフデスティネーションと称されるメンタワイ。その魅力はポイント数の多さと、年間を通してコンシスタントに波があること。これは世界中のどのサーフロケーションを見ても、メンタワイが群を抜いている。
島に道はない。あるのは海とサンディビーチ、無数のココナッツツリーだけ。シンプルに美しい熱帯の島々
海の真ん中に干潮時だけ現れるサンドバー。その光景はまるで神秘
コーラルと貝殻でできた島ではシェルハンティングが楽しめる
サーフィンへ向かうボートの上。最高の波を求めて胸が高鳴る
夕日が作り出す圧倒的なパームツリーの影絵
–{メンタワイの北に位置するプレイグラウンド}–
メンタワイの北に位置するニャンニャン島カランバジェット島エリア、通称プレイグラウンド。名前から察する通り、このエリアはメンタワイで最もポイント数が多く、波の種類も豊富。入り組んだ形の小さな無人島がインド洋にランダムに浮かび、その島々のあらゆるところでうねりを受け止め、バラエティに富んだ波がブレイクしている。例えば、サーフフィルムに出てくるようなフィートオーバーのチューブな日に、胸〜頭のメローな波がひっそり割れていて、ミッドレングスやロングボードを楽しむことができる。風は島の南側がオンショアであれば北側はオフショア。一つ一つの島は小さいため、ぐるっと回れば風だけ避け、スウェルはしっかりキャッチできる。まさに夢のようなセットアップがあちらこちらに点在している。メンタワイのシーズンは大きく2つに分けることができる。オンシーズンと呼ばれるメインは、南の大海原からグランドスウェルが届く4月から9月下旬まで。6月、7月のピークともなるとパーフェクトな波を求めて、世界中からサーファーたちが集まってくる。トッププロもこの時期を狙って訪れるので、どこかでファンウェーブを楽しんだ後、ライディング見学に行ってみるのもいいかもしれない。フランス領レユニオン島出身のプロサーファー、ヴィクトリア・ヴェルガラやフリーサーファーとして活動するカリフォルニアのアナ・アーゴットが訪れるのもこの時期。スウェルが入り出す時期に訪れては、ファンウェーブをスコアしている。
オフシーズンとしてカウントされる1月〜3月と10月〜12月。日本でいう秋の終わりから冬の終わりまでの時期。実はこの時期が穴場のシーズンで、グランドスウェルの数が減るため、多くのキャンプやチャーターボートがクローズする。そのため海の中は静かになり、メローな波を求めて来るサーファーたちのピースフルなムードが広がる。グランドスウェルが入らないからといって波がないわけではなく、胸から頭オーバーのパーフェクトな波を存分に味わうことができる。リーフで割れる波は、まさにマシーンブレイク。オイルグラスの波に乗ってはチャンネルからゆっくりピークに戻るという繰り返し。波がパーフェクトなため、今まで抵抗があったサイズにもトライすることができる。パームツリーとキラキラと光る海面で夢の様なセッションが続く。
ファンウェーブとパームツリーのバックグラウンド。まさにドリームセットアップ!
仲間のアクションを眺めながらゆっくりとパドルアウト。ポイントブレイクならではの風景
トロピカルな空気に任せて、いつもより少しハードな波にもチャレンジ
–{メンタワイの醍醐味はサーフィンだけではない}–
メンタワイの醍醐味はサーフィンだけではない。絵葉書で見るような透き通った海と真っ白な砂浜はスノーケリングやSUPも楽しめ、さらに無人島に上陸して探検なども。聞こえて来るのは、パームツリーの囁きと波の音だけ。フットマークのないビーチを歩き、水平線に落ちるサンセットを眺める。そんな秘境ならではの雰囲気を味わえるのもメンタワイのランドステイならでは。フォトジェニックな世界が360度広がる、まさにユートピアである。
因みにサーフエリアがある島々には集落がない。島全体がココナッツと香辛料などに使われるクローブの農地となって?
?り、収穫期のとき以外、人は住んでいない。海沿いにリゾートやサーフキャンプはいくつかあるが、お店やレストランもなければ道さえない。ここでの移動はすべてボート。リゾートに宿泊すれば3食付きはもちろん、エアコンやWifi、ボート付きになっている。大自然の南の島にいながら、ストレスフリーに過ごすことができるのだ。
未だにメンタワイへはワンフライトで行けないが、だからこそ守られている自然や文化がある。不便だからこそ得られるとっておきの贅沢。まるで地球と一体化したようなフィーリング! 現代社会が失った感覚が、ここにはそのままの形で残っている。
コットンキャンディーカラーの光に包まれたようなサンセットサーフィンタイム
海に飛び込めば、そこには永遠と続くブルーグラデーションの世界が広がる
時間を忘れ、気の知れた仲間とのサーフィンセッションは一生の思い出
Salty hair don’t care.アライアビーチのパームツリースイングにて
最後の光が終わるその瞬間までサーフィンしていたい! そう思わせるメンタワイの波
水平線の向こうにストームの雲、すべての天候がただただ美しいと感じさせる
風が止まり1日の終わりを告げる夕暮れ。暖かい空気が肌にしっとりと溶け込んでくる
子供の頃に戻ったようにシンプルに遊ぶ、それがメンタワイで楽しむ秘訣