HONEYがPESさんに初インタビュー!いまこそ必要な“受け流す”感覚をサーフィンから学ぶ

MC、アーティストとして活躍するPESさんが、実は生粋のサーファーだという事実を知っているだろうか。兄弟誌Blue.では連載ページを持っていたり表紙を飾ってくれたりするけれど、今回はHONEYのほうからまっさらな気持ちでお話しを聞きに行った。
イメージしていた通り、いやそれ以上にフレンドリーに話をしてくれたPESさん。特にサーフィンの話題となると顔が一気にほころび、そこにあるのは日本中を熱狂させる才能豊かなMCというよりも、純粋に波乗りが大好きなひとりのサーファーとしての姿だった。
サーフィンはPESさんの人生をたびたび救っているという。海とサーフィンのディープな魅力を、PESさんの心地良い言葉のチョイスと共にお届け。


―PESさんがサーフィンを始めたのはいつごろですか?

中学生のときですね。14歳。先輩に車ではじめて伊豆の多々戸浜に連れて行ってもらいました。始めたのは早かったんですけど当時は移動手段がなかったから行けて週1。中学生からしたら電車代も高かった。その頃音楽も同時にやっていたので、途中で行かなくなる時期もあったりして。行かなくなったら何年も行かなかったり、行ったら行き出したしたり。そういうのを繰り返していました。でも30代に入ってから、もったいないなと思い始めて、ちゃんと行くようになったんです。ノリでしかやってなかったものをもっと勉強して、向き合いたいなと。

―そこから再度サーフィンにハマったんですね?

はい。Blue.で連載『DO THE RIGHT THING』を始めたのが大きかったですね。20代くらいからお声がけいただいてたんですけど、当時は音楽ばっかりだったので話が進まなかったんです。30代になってサーフィンをもう1回ちゃんとやりだしたんですよ、という話になって、連載がスタートしました。サーフィンの業界の人との交流は初めてだったので、本物たちと出会うといっそう向上心が芽生えたんです。そこでもう一段階のめり込んだ感じですね。

―特に影響を受けたサーファーはいらっしゃるんですか?

ひとりにはしぼれないですね。コンペティター、フリーサーファー、ボードを削っているシェイパー、海で声かけてくれて仲良くなったプロサーファーの方々まで。上手くなりたいのはもちろんですけど、四国のレジェンドサーファーで303 SURFBOARDSのシェイパーの千葉公平さんとかを見ているとライフスタイルがかっこいいなって。ああいう感じでサーフィンと付き合う人生っていいだろうな、と思います。

―今は生活の中でサーフィンがどのくらいを占めていますか?

今はコロナもあるので1ヶ月に1、2回。前は週3、4回くらい海に行ってましたね。都会にいすぎてハートが疲れてきたので、そろそろ始動しようかなって思ってます。

―移住などは考えていないんですか?

どっぷりサーフィンみたいなかたちもいいなと思うことはあるんですけど、誰も体現してないスタイルでサーフィンに関わりたいなって思っていて、あまのじゃくな感じ(笑)。生活を捧げて海側に住むっていうのは理想ではあるけど、リアリティのあるサーファーの生活って仕事しながら週末サーフィンに行くのがほとんどだと思うんです。ミーティングだったり現場だったり、都会にいるほうが7、8割くらい仕事に時間を割けるので、バランスですよね。まだ40代なのでいいかなと思いますけど、いずれ海沿いには住んでみたいなと思っています。

僕の場合、曲やプロデュースをしているので、曲を聞いたり考えたりの時間が多くて。例えば都内から千葉だったら往復3、4時間の間に曲を流しながら向かうわけです。家の中だけだと煮詰まるけど、どんな波かな、とかいう期待感を持って“ながら”で作業するのも楽しいんです。

―サーフィン自体がクリエイティビティに繋がっている感覚もありますか?

直接繋がっているかどうかはわからないけど、間接的にはそうやって“ながら”で曲を流していると歌詞を覚えるのが早かったり、メロディが生まれやすいんですね。考えすぎないから、シンプルな歌詞や詩が浮かんでくる。サーフィンの時に波待ちしながら、頭の中でそのときやらなきゃいけない曲をリピートするんだけど、波が来ちゃうじゃないですか。で、波に乗ると忘れちゃったりする。でもシンプルでわかりやすいものだと覚えていたりして。曲、詩はわかりやすく、というのが信条なんです。ごちゃごちゃ家で考えると、次の日聞いたらなんだか複雑になっちゃてたりするので、それが海の中とか運転しながらだと程良く引き算ができていいなと。

―サーフィンしていて一番幸せ感じる瞬間は?

人がいないチューブのときとかですね。今まで1、2回ありました。ちょうどマジックアワーで。その日のその瞬間。日が落ちる1時間前。風が急にやんで、面ツルで、薄暗くてチューブ。紫なのか、桃色なのか、紺色なのかわからない色のときに面ツルだと、なんか極楽浄土みたいな感じで。あれ、俺死んじゃったのかな?みたいな(笑)。サーフィンというか自然の中に身を置くことですよね。海に入りながらカラーとか、景色とか、空を見上げたり鳥を見たりするが好きです。

―サーフィン仲間と、これまでの友人や仕事で関わってきた仲間との関係性の違いなどありますか?

例えばグループやってたり、都会のしがらみの中で仕事をすると、人にきつく当たったり当られたり、騙したり騙されたり、足引っ張ったり、みたいなネガティブなことってしょっちゅうあると思うんですけど、海に入っているときには一切ウソがない。それは音楽も一緒です。ライブで、音がバーンッて鳴って歌ってるときもウソがないんですよね。海そのもの、音楽そのものは僕を騙そうとはしないし、人を見た目とか能力で評価したり判断しようとはしない。

自然は平等に扱ってくれる。でも人って人を評価したり判断しちゃう。音楽もやっぱり人と人との繋がりがあってバンドになって音が出るわけで。昔からやってるバンドとか周りを見てると、グループの中での社会性が感じられることがあります。お互い気を使っていたり。そう、音楽は人間社会なところがあるんです。

サーフィンはある程度のヒエラルキーがあっても、海に入ってしまえば授かりもの。まだ全然乗れない人のところにいい波来たり(笑)。上手い下手関係なく、サーファー同士対等に接することができる。今日サーフィン始めたって人が、何十年もやってるレジェンドと同じ席で話せたりするんです。「今日立てたねー!」とか。音楽の業界にはそれがない。今日音楽を始めた人が、ピアノを前にして同じ気持ちではいられないわけです。だから音楽では、すごい人と話すとき心を作っている部分があるかもしれないですね。

―「サーフィンがなかったらダメになってたかもしれない」というPESさんの言葉を耳にしたことがあります。この真意は?

さっき言った騙し騙され、の中にいても、生きていく上では我慢しなきゃいけないこともあるし、どこかで受け入れなきゃいけないことってあると思うんです。でもかたや海は平等で僕を評価しないから、真実はそっちだと思っていて。来るものに合わせる。そこにいるだけ。それを結構若い頃から感じてたから、仕事をしてて辛いことがあっても、まあこれは人が考えた世界だからな、と割り切れるようになりました。見返してやろう、仕返ししてやるとかいうんじゃなく、悲しい思いやくやしい思いを受け流すっていう感覚ですね。本当はサーフィンで感じてる幸福度、豊かさのほうが生き物として正しいんじゃないかなって。生き物として真実に触れ合ってる。今だに海に助けられることがあります。なんでこんなことで悩んでんだろ、って。

―まだサーフィンをしていない人に向けて伝えたいことは?

サーフィンはしたほうがいいですよ、してないなら(笑)。海に囲まれた国って珍しいのに、もったいないぞ!って(笑)。なんであんなに楽しいのか、何が楽しいのか。探ると何か見つかるかもしれないです。

photography:Blue. Magazine text:Alice Kazama

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