遊び心とアートが詰まった、ヴィンテージ感たっぷりの大人のビーチハウス

サーファーとアーティストで賑わうオーストラリア・バイロンベイの街を抜け、ヒンターランドへ走ること15 分。牛や馬がのどかに行き交う牧場を横目に、目印にするよう伝えられたヘアサロンの看板を探す。とそこに、アーティなビーチハウスを見つけた。


築100年の家をオリジナルの状態で残し、活用し、新しいクリエイティブ・ハブを形成している人がいる。モダンなデザインや便利さに心奪われず、ありのままを受け入れて受け継ぐ。新しく活気に満ち溢れたエネルギーを注ぎ込み、さらに愛のレーヤーを重ね続けている温かなこの建物は、1920年代に建てられた。元々学校の敷地内にあり、1903年から30年間、校長先生の住まいとして使用されていたという。

「この家を初めて見たとき、私は絶対ここに住みたいっ! て強く感じたわ」。昨日あった出来事のように、キラキラとした目眼差しで話すのは、オーナーでありここでヘアサロンを営むブリー。オークションに売り出されていて、多くの人が購入を希望したにもかかわらず、オーナーは“手放す心の準備ができていない”という理由で売却を中止。「私はどうしてもここに住みたいと泣いてお願いしたの」。

玄関先に置かれた籐のベンチ。家に入る前にまずここでゆっくり腰をかけたくなる
地元アーティスト、ポール・マクニールのペイントとアンティーク感たっぷりのソファ&クッション。グリーンの壁紙が絶妙

数週間後に心の整理がついたオーナーからブリーに連絡があり、「あなたならきっと、いつまでもこの家を大切にしてくれるはず」と引き渡しを承諾。これがストーリーの始まりだった。

14歳のときに中学を中退し、ヘアの職業訓練校へ通ったブリー。4年間のトレーニングと下積み時代を経て、18歳でヘアドレッサーとなった。ブルースフェスティバルというバイロンベイのミュージックフェスに数日だけ遊びに来たつもりが、そのまま居座ることに。10年間ホームサロンでビジネスを続け、その後シドニーのサーフショップ“Wild Things”の一画に小さなヘアサロンを構えた。今ではそのショップのオーナーであり、パートナーでもあるアンディと一緒に、シドニーとバイロンを行き来している。

「毎日海に入り、人と話しているうちに口コミでお客さんがついたの。女の子って海の中でもおしゃべりが好きだからね」。始めた当時は粗大ゴミやガレージセールからドレッシングテーブルを探し、それを改造してサロンに見立て、お客様の髪を切っていたという。インテリアは10年以上使い続けているアンティークの棚や、ハウスメイトがリメイクした年代物のラウンジで統一。化学物質の含有量が少なく、髪にも頭皮にも地球にも優しいヘアケア商品を使うことで、環境にも配慮している。

夕暮れになるとハウスメイトや友人が集うデッキ。ブリーの愛機9’4″のロングボードはパートナーがシェイプ!
ベッドルームからの眺め。朝日を拝み、夕日に感謝して終える1日。満月の日はベッドの上で月光浴が楽しめる

「ソーラーパワー、雨水、ケミカルフリーのシャンプーやカラー剤を使ったサロンを営むのが私のゴールなの。そうすればガーデンに排水を流せるし、地球への負担も軽減でき、継続可能なビジネスとして運営できるから」。スタイルだけではなく、地球環境とビジネスを同等の価値として捉えているのだ。

リビングには一般家庭ではお目に掛かれない特大サイズのアートが飾られ、レトロ、ミッドセンチュリーを意識したインテリアの数々は、バックストーリー豊かなユーズド品。カウチ、サーフボード、アート、植物のミスマッチ感が、’70年代ハワイのカントリーハウスを連想させる。自然素材が大好きなブリー。年代を感じさせるウッド基調の家具をセレクトすることで、デコレーションがどんなにファンキーになっても、結果的にはスッキリとまとまって見える。日当たり抜群なデッキには座り心地のよいベンチを置き、夕暮れ時にはパーフェクトなアングルで山の裏に沈んでいく夕日を眺める。そして、どこからともなく集まってくる友人たちと、ビール片手に過ごすのが日課だという。

「あんなに学校が嫌で、皆んなよりも一足早く社会に出たのに、今こうして“古い学校の敷地”に住み、気が知れた仲間と過ごしている。まるで学校に戻ってきたみたい」

目一杯遊び、楽しみ、地球に感謝し、人生をどれだけ価値あるものにしていけるか語り合い、刺激し合う。そう、これこそが大人の学校なのかもしれない。


※HONEY special edition「BEACH HOUSE 3」より抜粋

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