フォトグラファーNachosが綴る、メキシコ・プエルトエスコンディードの記憶_#01

HONEY Vol.34で18ページにわたって特集し、大きな反響を呼んだ「メキシコ・プエルトエスコンディード」。
訪れたのは水中フォトグラファーのNachos(ナチョス)。感動の出会いや様々なトラブルを乗り越え、カメラに記録していった旅の記憶。
ヴァンライフをしながら世界中を飛び回る彼女が語った「プエルトエスコンディードは、世界の楽園のひとつ」の真意とは?
誌面では伝えきれなかった現地の様子を、本人の言葉で3回にわたって紹介します。


La playa magical another story 

突如として国々が閉ざされたこの数年。少しずつ開いてきた世界の扉。でも、私はどうしても海外に行きたかった訳でもなく、焦りもなく、この機会に日本をもっと楽しもうと思っていた。

そんなある日、数年前に聞いたメキシコのとある美しいビーチタウンの話を思い出した。それからなんとなく色んなタイミングが重なり、1ヶ月後に私はまた外の世界に飛び出すことになっていた。

ホント人生何があるかわからないから面白い。

メキシコはアクセスやそこで過ごすハードルが高い場所もあるけれど、南の海岸線には無数のサーフスポットがある。今回の旅先は、世界でも有数なハードな波がブレイクするシカテラビーチのプエルトエスコンディード。そのポイントの横には、レベルを問わずサーフィンできるラ・プンタという小さなビーチタウンもある。

昔と今が入り混じったかのような未だに舗装されていない道と、裸足で歩くサーファーたちの姿、お洒落なカフェやレストランが立ち並ぶこじんまりとした町並み。

そこにいる人々が、“今の生活が幸せ”と同じことを口にしていたのが印象的だったこの場所での、もうひとつのストーリー。


Episode.1

メキシコシティから小さな飛行機に乗り換え、たどり着いた空港。ジリジリとアスファルトを照らす太陽の下、飛行機から降りて小さな建物まで歩く。これ空港?っていうくらい小さくて埃っぽいPEM空港。飛行機を降りてそのまま荷物を受け取る。少し歩けば空港の外に出てしまうくらいの広さだった。これこそ、ある意味ラゲッジスルーなのか笑。

まずは海沿いの町まで移動することに。
タクシーでもよかったけれど、お金もかかるし、どうせだったら街並みを見ながらゆっくり向かおうと、タクシーの4分の1くらいの料金の乗合バスに乗った。

実はここで最初のストーリーがあった。人と荷物を乗せられるだけ乗せる乗合バス。もう出発かな? と思った最後に小さな男の子2人とお母さんが乗ってきた。もう車内は人でいっぱい。

お母さんは運転手の横に立ち、子供たちは私が座っている席の後ろの荷物が置かれている狭い場所に押し込まれた。

窓の外は青空が広がり、メキシコシティとは違う緩やかな空気が流れている(写真が汚いのはバスの窓が汚れていから)。

すると、後ろに座っていた男の子が私にハローと声をかけてくれた。私もハローと返事を返す。荷物を前に移動する? とジェスチャーをしながら聞くと「大丈夫!」と笑顔で答えてくる。

その後は男の子と一緒に窓の外を眺める。スペイン語でいろいろ話しかけてくれるけれど、なかなか会話は進まず、でも時々建物の後ろに見える海に、2人で「お〜」と言い合ったりしていた。

乗客が一人ひとり降りてバスの中が空いてくると、離れて座っていた男の子たちのお母さんが「空いたから前の席においで」と手招きをした。弟はすぐ前の席に移動するもお兄ちゃんは、「私と一緒に後ろに座っていたい(多分)」と。言葉は通じなくてもこの数十分で心と心が通い合った私たちは、そのまま一緒に窓の外を眺めながらバスに揺られた。ちなみに弟は不思議そうな顔をして私を見ていた。

そしてとうとうお別れのとき。
2人がお母さんに連れられてバスから降りるとき、握手を求められた。またね。

なんだかすっごく嬉しかった。途中写真を撮りたいと思ったけれど、それよりも今を楽しもうと考えて写真を撮らなかった小さな友達。名前くらい聞いておけばよかったな。
目がキラキラ輝いた男の子だった。

最後の乗客になった私がたどり着いたのは、シカテラを過ぎたラ・プンタという小さなサーフタウン。

ピンクが目を引く建物が私の最初のステイ先。数日はラ・プンタに滞在し、その後にシカテラビーチのホテルに移動する予定。

チェックインを早々に済ませ、暑くて溶けてしまいそうな身体を冷やすためにプールに飛び込んだ。身体中がじんわりと冷やされるのがわかる。

私も子供の頃は何に対しても目をキラキラしてたよなーと、さっきの男の子のことを思い出した。

でも私はまだ忘れていない。自画自賛ではないけれど、今でも目の輝きは残ってるとわかる。だからここにいるんだと。

外からは陽気なラテンの音楽がどこからともなく聞こえてきて心地よい。そんな出来事からはじまった旅の始まり。

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魔法のサーフタウン、メキシコ・プエルトエスコンディードへ

世界でも有数のハードな波が立つ「シカテラビーチ」を有するメキシコのプエルトエスコンディード。世界を旅するフォトグラファーNachosさんが選んだ今回の旅先だ。意外にもアクセスはそれほど悪くなく、小さなPEM空港からクルマで20分ほど。クリアな海に陽気な人々、灼熱の太陽と目に飛び込んでくるカラフルな世界。

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