Girl’s Surfboard Talk -Noserider-|ノーズを目指すなら、どんなボードがベスト? 

ボードを乗り比べて、その乗り味の違いや印象をトークするGirl’s Surfboard Talk。第2回目はロングボーダーなら誰もが憧れるノーズライドについて。すべてのロングボードがノーズライドに適しているかと言えばそうではなく、ノーズに行くには「ノーズライダー」をはじめとする、それに特化したボードが必要になる。ノーズライダーの中でも様々なボードがあるから、自分のレベルや目指すスタイルに合ったものをチョイスしたい。今回は4本のボードを乗り比べて、その特徴や乗り味を検証。さらにノーズライドのコツまでレクチャーします!


ノーズライドって何?

ボードの上をウォーキングして、先端に到達するのが ノーズライド。まるで海の上に浮かんでいるかのように見え、その時得られる浮遊感はやみつきに。どこか神聖なムードさえ感じる。

乗り比べた4本のボードを紹介

今回登場するはボードはハワイの老舗ブランド、ドナルド・タカヤマ。日本の女性ロングボードシーンを牽引し続けるプロサーファー、島尻祐子さんに乗り比べてもらった。

左から_Yuko Model、 Classic Noserider、Model-T 、Pig

Yuko Model>

動かしやすく、大きめの波に適したややパフォーマンス系
・コンペティション用に改良されたパフォーマンスよりのボード
・クイックにボードが動くピンテール
・ロッカー(反り)があり、大きな波や張った波に合う
・ノーズとテールの形状が同じ“ダブルエンダー”に近い

<Classic Noserider>

クラシックな乗り味が楽しめるオールラウンドボード
・よりクラシックな印象
・ややテールが絞れている=クイックに動かしやすい
・分厚いレールが波を弾くため、波のフラットな部分でも歩き出しやすい
・レールが徐々に入っていく感覚を楽しめる

<Model-T>

一番ノーズに行きやすい“ザ・ノーズライダー”
・テールもノーズも広く、安定感がある
・テールは四角く、ノーズは丸みを帯びている
・ノーズの裏に深いコンケーブが入っている。水を溜めライディングを安定させる
・薄めのレールで、自分でセットしてレールを入れやすい

<Pig>

最近人気のオールドスクール。滑走感が楽しめる
・オールドスクールなクラシックボード
・コンケーブがないためテイクオフが早く、スピード感を感じられる
・ノーズは細めでコントロール性が高い
・波の張った場所でノーズに行かなければならず、やや上級者向け


乗り終えたあとのQ&A

Q:ボードによってウォーキング時の感覚の違いはありましたか?
島尻:幅が広いほうが安定感があるから歩きやすいです。Model-TClassic Noseriderが特に歩きやすかったですね。一番ウォーキングに適しているのはModel-Tかな。

Q:今日のような、たるめの波にも合っていましたか?
島尻:今日の波にも同じくModel-TClassic Noseriderの2本が乗りやすいボードだと思いました。たるい波だとレールがしっかり入らないんです。それでもModel-Tはノーズライダーなのでレールを自分で入れやすい形状になっています。Classic Noseriderはノーズライダーだけど少しレールが分厚くて波を弾いてくれるので、フラットな波の場所でも歩き出しやすい。ハイライン(高い位置)に自分でセットしなくても自然とセットされていきます。

Model-T
Classic Noserider

Q:歩きたい人におすすめのボードはこの4本の中でどれですか?
島尻:「ノースライディングしたい」と「ウォーキングしたい」はちょっとニュアンスが違ってきます。ウォーキングはスピードを出すためにすることがあります。ロングボードって長いので、ずっとテール(後ろの方)に乗っていたらスピードが出ないんです。そのボードの上を歩いて、ボードの先端に行かなくても重心を変えてあげることでスピードアップにつながる。途中までウォーキングする場合には、先がとんがってるほうが楽にと感じると思います。でもノーズに行きたい場合は、丸いノーズのほうがおすすめ。この中で言うとModel-Tですね。視覚的にも、足を入れるスペース的にも、ノーズのリフト感にしてもノーズライディングしやすいです。

Q:視覚的に安心できる、というのは?
島尻:細いところに向かって歩くよりも、丸くて大きな場所に歩いていくほうが歩きやすく感じますよね。踏み外すこともなくなるし。

Model-T

Q:では、ノーズライドを目指す人におすすめは広めで先が丸いボードですか?
島尻:そうですね。でもとんがってるボードのほうが可愛らしく見えたりしますよね(笑)。一時期ピグが流行ったみたいにちょっとシュッとしたボードのほうが見た目的に可愛かったり。でも丸いボードのほうが正解かな。

Q:ノーズに長く留まりやすいボードはありますか?
島尻:コンケーブが深いボード。コンケーブっていうのは、ボードの裏のへこみのこと。そこに水を溜めて後ろに流すことで浮かびやすくなって、つまりノーズが沈みづらくなるんです。でもやっぱりスピードに乗っていないと沈んでしまうので、いかにスピードをキープできるかということも大事なんですけどね。

Model-T

Q:ノーズコンケーブにデメリットはありますか?
島尻:あまりコンケーブが深すぎるとテイクオフが遅くなるというデメリットもあります。水との設置面が少なくなるので、コンケーブがある板はパドルを止めるとボードも止まるイメージ。だからコンケーブのありなしで走り出しのスピードは全然違いますね。Pigはコンケーブが入ってないから、テイクオフの時から水の流れがいいので走り出しが早いんです。テイクオフを重視して、一歩二歩のウォーキングだったらピグはありですね。スピードが出るからその後の安定感はないけど、滑走感は楽しめます。

Pig

Q:テールの形状でも乗り味は変わってきますか?
島尻:Model-Tのように四角いテールが波をキャッチしやすいです。テイクオフの時に押されるので。Yuko Modelのようなピンテールは波を逃すけど、その代わりターンがしやすくなります。ターンのしやすさは丸いテールも一緒ですね。基本的に広いテールのほうがよく波をキャッチしてくれます。しかもターンした時にテールが波にひっかかってくれて、ウォーキングしやすい高い位置をキープすることが可能になるんです。ボトムに滑り降りてしまったらウォーキングしたりノーズに行くタイミングを失ってしまうので。でもピンテールの場合は滑り降りた後クイックにターンできるため、自分でいい位置をキープできます。ウォーキングのポジションを自分で作れるんですね。ちなみに四角いテールは、ちゃんと踏み込んであげればきちんとセットされます。水を溜めやすく、引っかかりやすくて、取り回しも楽なのがメリットです。

Q:テールが広いほうがすべてにおいて良さそうな感じがしますが……?
島尻:広いテールにもデメリットはあります。海の面が良くない時、テイクオフしようとすると面のガタつきを拾ってバタバタしちゃったりするんです。

Q:その点、Yuko Modelはトータルバランスが重視されているんですか?
島尻:Yuko Modelはピンテールでノーズライダーなので、どんな波にも対応しやすいです。波が予想しづらいトリップにも最適。大きい波でも対応できます。

Yuko Model

Q:一歩踏み出すには?
島尻:やっぱり安定感のあるボードが一歩踏み出しやすいですね。入る場所によっても変わりますけど、たるい波のポイントだと大きくてボリュームのあるボードがいいです。あと、踏み出せない人はボードに対して足が平行になってしまっている場合があります。ボードに対してまっすぐ歩いてしまうと軸がぶれてバランスが取れないので、横を向いてストリンガーの上を歩く。両足はボードに対して垂直な状態をキープしてあげてください。足を踏み越えるのが難しいんですよね。でも綱渡りと一緒なので、陸でも練習できますよ。下を見ないで、まっすぐ前を見て歩く練習をしてみてください。

Classic Noserider

Q:ウォーキングの練習はスープでもいいんですか?
島尻:スープだと安定感が逆にないんです。ここがウォーキングのポジションだなと思う手前で踏み出してください。乗り遅れそう、止まりそうだからウォーキングじゃなくて、その手前で歩かないといけない。止まりそうになってから歩くと安定感がないんで、余計歩けなくなっちゃいます。ターンしてまたポケットに戻ってから歩き出してください。ノーズまでいけなかったらずっとそれでも良いんです。ステップバックして歩いて、波を乗り継いでいくことが大切です。

Q:ノーズライドのコツは?
島尻:まずはボードの一番走るポジション(トリムポジション)まで歩いてあげること。この波ならこの辺まで行こう、と何度も何度も繰り替えし行ってみる。そうすると、ここがノーズライディングのポイントじゃないかなっていうのが見えてくるんです。トライ&エラーでがんばってみてください。

Yuko Model

Q:ノーズライドするためにもターンを練習するべきですか?
島尻:ターンができると、ノーズライドも簡単にできるようにはなりますね。ノーズライドをするポジションを作ってあげることが大切です。ターンがちゃんとできればそのポジションに自分で行けるので。ターンは重要です。

Pig

Q:今日乗ったボードの中でお気に入りはどれですか?
島尻:どれも良いんです(笑)。そのときどき、波の状況を見て変えたいですね。スピード感を重視するならPig、自分でコントロールしてる感じが楽しめるのはYuko Model、ボードのリフト感が味わえるのはModel-TClassic Noserider。自分でノーズに行くという感覚と、ノーズに行くのをボードが合わせてくれるという違いもありますね。それぞれ楽しいボードです。自分のしたいウォーキングやノーズライドのイメージで変わってきます。

Q:色々うかがっても、結局ビビッとくるボードがほしくなっちゃったりしますよね(笑)
島尻:そうですよね(笑)。好きなボードを選ぶのもいいんだけど、サイズ感だけはしっかり選んだほうがいいです。だんだん乗れるようになるとは思うけど、まずは一番合うものから。いくらファース・トインプレッションが良くても手に負えないボードだと上達の妨げになることがあります。いつか乗りたいボードとして心に留めておくのがいいんじゃないでしょうか。ボードによって上達のスピードも変わってくるから、意外とボード選びは大切です。最終的に全部できるようになるのが理想なので。


ノーズライダー選びのまとめ

すべては自分がどんな乗り方をしたいか、何をしたいかで決まる。ノーズを目指したければ幅が広くノーズも丸いModel-Tのようなボードが良く、もうちょっとクラシックな乗り味を楽しみたければClassic Noserider。大きな波も好きで、トリップも良く行く。1本でいろんな波に対応するボードが欲しければYuko Modelをチョイスグライド感を楽しみたかったらクラシックで人気のPigにチャレンジしてみては。
すでに何本か持っていれば、新しいのを買う前に自分のボードを乗り比べてみて、次はどういうのがいいのかじっくり考えてみよう。友達や家族のボードで乗り比べるのもOK。「人に伝わらなくても、自分で違いを感じることが大切」と島尻さんは言う。たくさんのボードと波に乗り、トライ&エラーを繰り返し、いつかは夢見るボードの先端へ。

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