
この島の自然を守ろう
世界自然遺産に選ばれて、ますます注目を浴びている奄美大島。人と自然との共存。古くからの島文化があったからこそ、今ここに残る素晴らしい自然。その歴史も知った上でこの場所を訪れ、優しいギフトを繋いでいきたい。

2021年の7月、世界自然遺産に登録された奄美大島。日本では5つ目の登録となるこの場所は、次世代に受け継いでいくべき世界の宝だと認められた。世界遺産には、自然遺産と文化遺産、複合遺産と3つの項目があるが、奄美大島が認定されたのは自然遺産。この世界自然遺産として登録されるためには自然景観、地形・地質、生態系、生物多様性の4つの価値基準の1つ以上が合致しつつ、適切な保護管理体制がとられていることが必須となっている。奄美大島(徳之島、沖縄島北部及び西表島も含まれる)が選ばれたのは、有名なアマミノクロウサギやルリカケスなど、絶滅の恐れがある野生生物の生息地が存在する、その「生物多様性」が理由。
大陸や近隣諸島との分離や結合を繰り返して形成されたこの場所は、独特の地形で世界的にも貴重な固有種や絶滅の恐れがある動植物の生息地として知られる。なかでも、生物の多様性と固有種の多さは際立っていて、国土面積の0.2%にも満たない島ながら、国内全体の生物種の約13%が確認されているとのこと。
南から流れてくる黒潮と暖かい亜熱帯性高気圧の恩恵をおおいに受けているので、常緑広葉樹多雨林に覆われているのも特徴。奄美大島の山々の中でも、特に亜熱帯広葉樹が多数残っている金作原は、古代の姿のまま生き生きと植物が育っている。もちろん美しい珊瑚やマングローブも奄美大島の特徴のひとつに。そんな素晴らしい島にも現代にはいくつかの問題が。この島の豊かな自然環境と美しい水源などを守るために2017年より保護活動を続ける一般社団法人「奄美の森と川と海岸を守る会」のメンバーであり、エコツアーガイド&自然保護活動家の武久美さんに話を伺った。
「今注力しているのは嘉徳海岸について。巨額の護岸建設計画があるからです。無駄な公共事業や必要のない工事で日本に残された素晴らしい自然が壊れていくのを黙ってみていることができない。厳密に言うと島すべてが世界自然遺産に登録されている訳ではなく、区域を絞られています。けれど嘉徳一帯は世界自然遺産の緩衝地帯に含まれており、普遍的価値を有する人類共通のかけがえのない財産と認められています」

嘉徳は小さい集落ながら、その山に流れる渓流は2つの美しい川を形成していて、渓谷には原始的形態を残した絶滅危惧種のアマミノクロウサギ、日本一美しいカエルと称される絶滅危惧種のアマミイシカワガエルやリュウキュウアユなど、数多くの固有種が生息している。また深い山から生まれる新鮮な水、海へと繋がる川の流れなど、人工物がひとつもなく、自然の姿がそのまま残る海辺は、奄美でも最後の場所だそう。
「とてもユニークな場所であり、日本でももうわずかしか残っていない奇跡の浜です。日本で唯一、生きた化石と呼ばれるオサガメが観察された場所でもあります。嘉徳が奄美のジュラシックビーチと名付けられたのも不思議ではありません。#SAVE KATOKUをキーワードに持続可能な未来を考えながら、この美しい自然を残していきたい」
嘉徳海岸についての問題を知り、私たちにできることを改めて考えてみるのはもちろん、この島を守るためにも、訪れる際は希少な動物も多いので車のスピードを出しすぎないように。夜間の運転は特に注意しよう。そして日焼け止めや虫除けも自然成分のものを使えば地球に優しい! 森に入る時は、美しい植物を痛めないように配慮して散策をするなど、旅人として最低限の配慮をしながら、この島の魅力に触れていきたい。島ではエコツアーガイドを推奨しているので、彼らと一緒に自然と触れ合うのがベスト。この島の深い魅力を教えてもらえると同時に、地球や自然をもっと大切にしたいという気持ちがきっと強くなるはずだから。
――昔、奄美大島では豊かな自然環境と調和して人々が住み、独自の文化を発展させてきました。その文化は島唄を通して伝えられていましたが、現在この深い精神、伝統、習慣など、その大部分は消され、人々は豊かな自然界との強い繋がりを失いました――と、「奄美の森と川と海岸を守る会」のトップページには書かれている。このメッセージに私たちができることは何だろう?
(HONEY#33 より一部抜粋)

奄美の森と川と海岸を守る会
奄美の自立した持続可能な時代を迎えるために、絶滅に瀕している生態系の保護や価値ある景観の維持、文化の継承、エコツーリズムの促進。HP ではドネーションや署名なども受付中。
【奄美大島を旅する際に気をつけたいこと】
- 日焼け止めや虫除けはオーガニックなものを!
- 自然を傷つけないように配慮して行動を
- 希少な動物が多いので安全運転が第一
- 森を散策する時はエコツアーガイドを利用しよう
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