【連載】地球の今、海の今を知る|Vol.53 地球に生きる同じ仲間としてできること

もう毎年恒例かのように、今年も大気中のCO2濃度が過去最高を更新したと、NOAA(アメリカ海洋大気庁)が発表した2022年5月。2020年に410ppmを超えたあとも加速度的な上昇は緩まるようすなく、今年は観測史上最高の421ppmに。このまま臨界点を超えれば後戻りはできず、未来は「灼熱の地球」になると叫ばれ続けるなかでも、現状は+1.5℃未満に抑えられない確率が高まってしまった世界……。

地球規模にまで思いが及ばなくても身の回りで、たとえば衣服の廃棄量だけを見ても、日本で年間約40億着、世界で何百億着もが毎年捨てられ続けている今の時代。それを作り運ぶためには膨大量の資源搾取×温室効果ガス×環境汚染×etc……、廃棄するにもさらなる温室効果ガスに環境汚染、それでも処理しきれず地球のあちこちに山積み放置された「衣服の墓場」がさらなる環境汚染、半分以上を占める合成繊維はマイクロプラスチックとなって地球の海や大気を汚し続け、と悪影響は計り知れず。そんななかフランスでは2022年1月から、世界初の「衣類廃棄禁止令」も施行されたけれど、日本はどうだろう? 世界のプラスチック生産量も伸び続けること今や4億トン近く、2040年までには生産量が2倍になるなんて予測まで。そうでなくともコロナ禍以降はテイクアウトやデリバリー、使い捨てマスクや手袋、消毒液などの増加でプラスチックごみが急増し、2020年は15億枚以上ものマスクが海に流れ出たとか。うっかり落とした1枚の不織布マスクが海に流れ着いても、完全に自然分解されるのは500年近くも先の未来。海外では使い捨てプラスチックの使用禁止も続々と進むけれど、一人当たりの容器包装プラスチック廃棄量が世界第2位の日本はどうだろう? フードロスにしても、世界で毎年生産される食料の約1/3もが捨てられ、ここでも生産や廃棄処分で大量の温室効果ガスや環境汚染を広げながら、一方で栄養不足に苦しむ飢餓人口は増えているという矛盾。おまけにさまざまな産業で人権問題も闇深く、児童・強制労働で作られたとされる多くは金やコットン、衣服、砂糖、コーヒーなど、さらに奴隷労働品の消費も日本は世界第2位とされ、とくに多いのは電子機器や衣服、魚、カカオ、木材などどれもごくごく身近で手にするものばかり。

まだまだ挙げればキリがないけれど、地球がこれほどの痛手を負って、ダメージやSOSを顕著にして私たちに訴えていること……その声に向き合うことは、地球に寄り添い守るためのチャンス。問題をそう捉えて自分にできること、どんな世界に暮らしたいかを考える、そんなヒントが詰まった日本初の『エシカル白書2022-2023』が、今年5月に発売されました。刊行したのはエシカル=人や動物も含むすべての生き物、地球環境や社会に思いやりのある考え方や行動を普及する、一般社団法人エシカル協会。代表理事の末吉里花さんは、HONEY Vol.30でも大切なメッセージを届けてくださいましたが、白書はいま向き合うべき課題と未来について、末吉さんをはじめさまざまな分野の専門家たちが分析やデータとともに紐解き、エシカル消費についての認識調査、国内外のエシカル先進事例なども詰め込んだ一冊に。なかには中学生の羽生田凛央さんから見た「無関心な大人」へのシンプルで力強いメッセージ、巻末を締めくくる写真家・半田也寸志さんが捉えた気候変動の惨状、「私たちに傍観している時間は残されていない」と添えられた一文も、とても印象的です。6月上旬に開催された出版記念イベントでは、2018年からMSC(海洋管理協議会)「海のエコラベル」アンバサダーも務めるタレントのココリコ田中直樹さんを迎え、末吉さんとのスペシャル対談も行われました。

一般社団法人エシカル協会代表理事 末吉里花さん
「2015年に協会を立ち上げた頃から考えると、エシカルの認知度が上がったと感じる反面、社会に必要な本質的な変化が生まれているとは言い難い、まだまだ全然足りないなと、ある種の危機感も感じています。白書を作るにあたって行った認識調査では、『どれがエシカルな商品か分からない』『本当にエシカルなのか分からない』といった声が数多く上がっていました。そこで私たちも一度立ち止まって現状を把握し、エシカルなアクションとは何か、なぜ必要なのかを専門家の皆さまとともに幅広く伝えられたらと思い、白書を刊行しました。

私たちは『消費や行動がどんな影響に繋がるか』『エシカル=いきょうをっかりとんがえ』というメッセージを広めてきましたが、考える前に『知らないから関心が持てない、行動できない』という側面も非常に大きいと感じています。そもそも私たち人間はあまりにも傲慢に、『もっともっと……』と求め続けて、『自分たちが一番』と自然から奪い過ぎたと思います。まずはそのことに思いを巡らせて、人として分相応に生きる、そして同じ地球に暮らす他の生き物たちと共に、というより同じ目線で、もっと心を開いて考えられたらいいですよね。そうした気づきや現状を知れば、きっと行動にも繋がっていくと思います。エシカルは難しいことではなく、素晴らしい未来を作っていくための楽しいアクションだよ、といった空気感も広まっていくといいなと思っています」

ココリコ田中直樹さん
「白書で綴られる地球の現状はとてもショッキングでもありますが、知らないと何も感じられない、知らないまま終わってしまうので、まずは知ることが大事だなと、改めて気づかされました。

僕は海の生き物が大好きで、よく子供さんたちに向けた生き物のイベントをさせていただくんですが、子供さんたちの地球環境に対する意識がどんどん高まっていることを強く実感するんです。たとえば小学生から『いま生き物たちが地球でこんな苦しい状況に置かれているよ』とか『温暖化の影響で農作物にこんな影響があるよ』といったことを教えてもらったり、『好きな生き物が居なくなるのが嫌だ』『おじいちゃん、おばあちゃんが熱中症になった』『猛暑が続くのは嫌だ』といった意見を聞くことも非常に増えました。

僕自身はよく『生き物目線から見た地球』といったお話をするんですが、たとえば地球温暖化の影響で氷が減って、今はホッキョクグマの数も減っているけど、逆に南極ではペンギンの主食になるオキアミが増えているんですね。温暖化によって植物性のプランクトンが増えることで、オキアミのような動物性プランクトンが増え、じゃあペンギンたちは大喜びでウハウハかといったら決してそうとは言い切れない。ペンギンにとってはプラスかもしれないけど、『地球全体のバランスで考えたら、プランクトンが増え過ぎるってどうなのかなぁ?』とか『海全体が苦しくなると、最終的には僕たち人間にもペンギンたちにも影響が出てくるよね』とか、『もう海にサバしか居なくなったら、みんなどうする?』といったことも話すんですが、これも極端な話のようで現状は大袈裟な話でもなんでもなくて。ときには身近な例えに置き換えて『もう街には歯医者しかなくなって、骨折しても行く病院は歯医者しかない……そうなったら困るよね?』とか(笑)。子供さんたちだけでなく、大人たちも、地球環境のことを考えようと思う入り口はそれぞれだと思うんですが、僕はメディアに出させていただく立場として、生き物を通して地球を知ってもらいながら、誰かの何かにひっかかるようなボールをたくさん投げかけられたら、そして自分事として何ができるかを感じてもらえたらいいな、といつも思っています」

そう語る田中さん自身が地球環境の課題に興味を持つようになったのは、若手時代のこんな経験からという背景も、琴線に触れるお話でした。

「僕はこれまで、生き物たちに救われたことがたくさんあるんです。それこそ若手の頃、なかなか思い通りにいかず将来のことも不安いっぱいで、頭がこんがらがっていたときにふと、生き物たちって『食べて・寝て・求愛する』っていう究極にシンプルな生き方をしているなって思ったんですね。『人間と、その他の生き物』みたいに分けるんじゃなく、自分も生物学的な『ヒト』として考えたとき、他の生き物と同じように『食べて寝る、それができているだけでまずはオッケーじゃないか』って思えたら、絡まりがほどけていくように、すごく気持ちがラクになれたんです。そんな経験から、人間と他の生き物との線引きを外して、『生物学的なヒトとして考えたら、他の生き物たちと同じ、みんな一緒ですよ~!』とか、『同じ仲間がいま、生死を分けるような暮らしぶりに苦しんでいるって考えたら、どう思う?』といった話もするんです。今後は話して知ってもらうだけでなく何か一緒にアクションを起こして、自分たちの行動がどんな良い結果を生んだのか、その答えまで感じられると楽しいですよね。たとえば僕らが地球と生き物たちを守るアクションを起こして、それに対してホッキョクグマから手紙が来たら嬉しくないですか? なんなら僕が気持ちを代弁して書きたいくらい、たぶんそんなに想いはズレないような気がします(笑)。そんな風に行動と答えがセットで、結果も目に見える形になっていったら嬉しいですね」(田中さん)

以前、私は田中さんと海ロケにご一緒したことがあり、そのときにも無類のサメ好き・生き物好きとしての造詣の深さにとても感動したのですが、今回も純粋な生き物愛と、彼らに対するフェアネスな姿勢に改めて胸を打たれた時間でした。イベント後半には、気候科学者の江守正多さん、アニマルライツセンターの岡田千尋さん、『人新世の「資本論」』著者であり経済・社会思想家の斎藤幸平さんによるパネルディスカッションも行われ、次回は御三方のメッセージをご紹介したいと思います。

『エシカル白書2022-2023』
著者:一般社団法人エシカル協会(編集)
出版社:山川出版社
発売日:2022年5月17日

【地球の今、海の今を知る】すべての記事一覧はこちら

SHARE