「海辺にいても、都会の真ん中にいても」|地球の今、海の今を知るVol.01


私はいま、愛すべき海を思いながら、大都会の真ん中でこの原稿を書いています。海辺や緑あふれる傍らで自然に溶け込める日常を夢見つつ、東京の街なかに暮らしているとときどき、「大自然と大都会は別物」と両者を分離させてしまうことがあります。それは、思い立ったらすぐ海に入れるわけじゃない物理的な距離はもちろんだけれど、溢れかえる人工物や情報、飛び交う騒音や電磁波、おいしいとは言えない水や空気、そんな「不自然」なものに多く囲まれているからなのか、たとえ自然の息吹を感じる庭や公園で息抜きをしても、海に入るときのあのトキメキ、裸足で砂浜を感じながら思いっきり伸びをしたくなる感覚とはちょっと違う。けれど、同じ地球の上だと考えたときには、やっぱり大都会だって地球の一部……どんな場所にいて、何をしていても、私たちは地球の上で生きていて、みんなもれなく地球に生かされている存在なんだ、と思い直します。

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それは環境問題を考えるときにも、同じ視点を感じます。本誌でもお伝えしているように、いま地球はかつてない速さで破壊や汚染が進み続け、動物も植物も私たち人間も、暮らしだけでなく生存まで脅かされる危機にあります。そうは聞いても問題のスケールが大きすぎて、あまり身近に感じられなくて、「自分には何もできない」と尻込みしてしまう人も、きっと少なくはないはずです。でも、この地球に起こっていること、気候危機も環境破壊も、もっというなら遠い国での貧困も紛争問題も、さかのぼってみるとじつは私たち一人一人の毎日の選択や行動が関わっていて、これまで積み重ねてきたその結果が、さまざまな悲しい今を作り出しています。

最近はとくに世界のあちこちで止まらない森林火災にも心が痛みますが、海のなかでも森の消滅が深刻に進んでいます。海は、熱帯雨林よりもはるかに多い、地球の3分の2もの酸素を作り出している場所。その海で、CO2を吸収して酸素を作ってくれる海藻の森やサンゴ礁も、温暖化によってみるみる減り続けていて、かつての豊かさは見る影もなく砂漠化、穏やかに暮らしていた生き物たちもどんどんと姿を消しています。そうして海が受けているたくさんのダメージ、地球の裏側で起こる森林火災、絶滅していく生き物たち、人々の貧困や食糧難、紛争だって、私たちが手にする食料品や、安くて便利なアイテムを大量に作るために起こっている場合が多くあります。でもその背景に触れる機会はあまりなく、私たちは目の前にある品物だけを見てそれらを選び取り、今こうして何不自由なく、物質的に裕福な暮らしを送れています。それを作るためにどこかで誰かを傷つけて、自然を壊していたとしても、何も知らずに浪費して……。経済先進国であり環境破壊大国とも呼ばれる日本、とくに東京でそんな「不自然さ」を見つめていると、やっぱり都会と自然も確かにつながっていて、都会に限らずどこにいても、誰もが知らないうちに加害者の一端になってしまう社会なんだなと。

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それなら、まずは今どんな問題があって、どこで誰が苦しんでいて、自分がどう関わっているのかを知ることからはじめていけたら。そして、自分のペースでいいから、目の前の選択や行動を変えていけたなら。はじめは小さくても、そんな一滴のしずくから広がる美しい波紋がいつしか世の中を、地球をもっと素敵な場所にしていけるんだと思います。

本誌とあわせて、新しくはじまったこのWeb連載でも、清らかなひとしずくを作る何かのきっかけを見つけてもらえますように。海辺にいても都会にいても、わたしの毎日をいつもそっと支えてくれる海と地球のこと、「海の、地球の今」についてを、ここから書き綴っていこうと思います。目に留めてくださる皆さんへ、そして唯一無二の地球がたたえるかけがえのない海へ、最上級の愛を込めて――。

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