「気候変動の現在地」から分かること 【連載】地球の今、海の今を知る Vol.59

海は海として美しくそこに在りながら、その他の自然環境とも深く豊かにつながり合う、それは川や山々、今では極端に減ってしまった干潟……それらすべてが生き物たちの暮らしやすい場所だったからこそ、豊かな生態系が紡がれてきた地球。海を育む大地の奥深くにも無数の生命が息づき、土壌生物の菌糸や分泌物によって土はフカフカに、そのおかげで水と空気の通り道が網目のように張り巡らされる。天から降り注ぐ雨はその通り道を抜けて、奥深くの地下水脈へ、川や海へも流れ着いてさらなる生き物たちを育む。そんな自然の循環も、今は行き過ぎた開発や破壊によって断ち切られて、大地は劣化し、アスファルト一色に塗り固められた景色。いま豪雨や台風の被害が各地で大きくなっているのも、気候変動の影響はもちろんですが、大地が本来の水や空気の通り道を失ったことで、地中に水が染み込まなくなり、大雨が降るたびに大量の水が勢いよく地表を流れ、海には大量のゴミを運び、川は凶暴な濁流となって、ときに動植物や人々の穏やかな暮らしを押し流してしまう。本当は豊かさをもたらしてくれる恵みの雨、それがただ「破壊的な大雨」というイメージで受け取られることのほうが増えてきたように感じます。

気温や海水温の上昇は海から蒸発する水蒸気を増やし、その水蒸気がやがて豪雨やハリケーンとなり、その規模も年々大きくなっていますが、温暖化の加速ぶりは他にも地球のあちこちで見られます。たとえば、とくに温暖化の進みが早い北極圏、以前は他の地域よりも2倍の速さで進んでいると報告されていましたが、2022年8月に科学誌『Communications Earth & Environment』で発表された最新データでは、1979年以降、北極圏は他地域より4倍近くも温暖化が加速していることが分かったそう。今年3月には、北極圏で平均より+30℃以上、南極圏でも+40℃以上も高い気温が観測されていました。今夏には欧州をはじめ、世界各地で過去最悪の熱波や山火事の被害も広がったなか、2022年7月に出版された『Hothouse Earth:An Inhabitant’s Guide(温室になった地球:住民のためのガイド)』という著書で、気候学者のビル・マクガイアが警告したこんな言葉も注目を集めました。

「科学者たちの警鐘を何年も無視した結果、
壊滅的な気候変動を回避するには、もう遅すぎる。
我々は温暖化に適応する必要がある──」

気候学者 ビル・マクガイア

2022年8月には、気候危機を調査する非営利団体「ファースト・ストリート財団」のマシュー・イビーCEOもこんな風に語っていました。

「今年(2022年)は暑かったと思っているかもしれないけれど、
実際にはこの先の人生で、ましな部類の夏になるだろう──」

ファースト・ストリート財団CEO マシュー・イビー

下のグラフも参考までに、①は西暦1年からの過去2000年間でみる世界の平均気温の変化と今後の予測、②は産業革命前からのCO2排出量を示したものです。

①過去2000年間でみる世界の平均気温の変化と予測
今の気温上昇が過去2000年間に前例がないようすが見られ、今後の予測シナリオも5段階のうち少しでもダメージを低くしたいと願うばかり。(出典:IPCC第6次評価報告書)
②産業革命前の1750年以降のCO2排出量の変化
とくにここ30年間近のCO2排出量は、これまで人間活動によって排出されたすべてのCO2排出量の半分以上をも占めるそう。(出典:IPCC第5次評価報告書)

世界中で懸命に行われている科学的な研究や予測は、私たちに今の現在地を教えてくれるもの。もちろん、過去や今の事実を紐解くデータと違って、未来のことは予測されたシナリオ通りになるのかならないのか、地球がこれからどうなっていくのかは誰にも分かりません。自然は人間の思い通り、計算通りには回らないことも弁えておきながら、それでも少しでも、未来のダメージを減らそうとする努力は続けていきたい。結果はわからなくても、それでもいつか、温暖化が止まって逆転を始めたり、生物多様性が回復傾向に転じたり、地球が私たちの気持ちや行動にも応えてくれるときがきたらいいなと願いながら、できることを日々探究し続けているところです。

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