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【連載】地球の今、海の今を知る |Vol.15 「水温上昇と、サイズアップしていく波」

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シーズンや天候、風や潮汐のリズムにあわせて表情豊かに、海の水面をたゆたう、波。それは日によって時間によって、私たちを優しく、心躍らせながら海に誘い出してくれるときもあれば、近寄りがたいほどに凶暴なときもあって……そうしていろんな姿を見せてくれてこそ自然の摂理。けれど、気候変動の影響がどんどん科学的に明らかになる近ごろは、「この波も、昔に比べて変わってきているのかな?」なんて思うこともあるかもしれません。

1900年頃から増えはじめた温室効果ガスの排出量は、1950年代からいっきに右肩上がりに、どんどんと温暖化が進んでいる地球ですが、じつは人為的な原因で増えた熱の「90%以上」もを、海が吸収してくれていることがわかっています。それもここ数年は、温室効果ガスが生み出す熱量も、海が吸収している熱量も、それまで推計していた量では「過小評価しすぎていた」と警告する研究者たちも増えてきました。私は海に入るとき、毎回かならず水温などを計測できるコンピュータをつけて、水温データもログとして書き残しているのですが、同じ海域で、冬のこの時期だけを比べてみても、10年前より3度前後も水温が高く、生き物の様子も「これまでとは違う」ことが当たり前になっている。その上に科学者たちの声を聞いていると、私たちが思っている以上に、海がどれほど温暖化に敏感で、いち速く深いダメージを負っているかを強く感じます。
 
–{海面上昇の理由は大きく2つ}–
海に熱がたくさん蓄えられると海水の蒸発量が増えて、台風や豪雨の規模がどんどん巨大化していることは皆さんも感じているはずですが、海面上昇も年々スピードアップしています。海面上昇の理由は、①山岳氷河や南極大陸、グリーンランドなど、陸上の氷河や氷床が融解した水が海に流れ込んで海水の量が増える、②水温が高くなって海水の体積が膨張すること、の2つが影響し、今は氷の融解も水温上昇も加速中。「海に浮かぶ氷山は?」というと、グラスのお水に氷を入れたとき、氷が溶けても水の体積は変わらないように、北極や海に浮かぶ海氷が溶けても海面は変化しないので、海面上昇は①と②が主原因です。過去100年近い観測では、世界の平均海水面は約17cm上昇していますが、上昇率もだんだんと上がり、今のままでは2100年に世界の海面が最大82cm以上も上昇することに。そうなると沿岸の街では高潮や浸水の被害が避けられず、日本のビーチも8割以上が消えてしまうだなんて未来予想図まであります。


–{波の力にも影響を及ぼす地球温暖化}–
こうなると波についても変化がないわけもなく、波の高さ、強さともに、気候変動の影響を受けながら年々パワーアップしているそうです。お気に入りのビーチでも、すでに波打ち際が昔よりも陸地に迫っているところ、波のブレイクポイントが変わったことなどを感じているかもしれませんが、地球温暖化が「波の力」にも影響を及ぼしていると科学的に判明したのは、つい2019年のこと。学術誌『Nature Communications』の研究発表(「A recent increase in global wave power as a consequence of oceanic warming」)で初めて、波の持つエネルギーが地球規模でパワーアップしていることが明らかになりました。おもな原因は、海水温の上昇によって海面を通る風が強まっていること。研究結果では過去70年間で、波の力が世界的に毎年0.4%ずつ増えてきているそうです。

「波がサイズアップ」と聞くとこころなしか胸が弾んだりもするけれど、波がパワーアップしていくと砂浜の侵食も進んで、ビーチや海底の地形が変わればおのずと、波の良し悪しも、サーフポイントも、残念に変わっていってしまうかもしれません。そもそも、過剰な人間活動のせいで増えた熱を、90%以上も吸収してまで地球のバランスを保とうとする海、それでもどんどん悪化していく気候変動……それを思うと、私は海に入るたびに「ごめんね」と「ありがとう」の気持ちが、胸の奥のほうから湧き上がってきて、ますますじっと、海との対話に心を傾けてみたりしています。