「エコ不安症」とのつきあいかた|地球の今、海の今を知るVol.16


世界中の研究者や専門家、環境保護団体などが熱心に、60年近くものあいだ声を上げ続けてきた、環境問題。それは専門家だけではなく、たとえば私たちのように海とビーチを愛する人たちも、山や森、畑や大地と触れ合う人たちも、さまざまな破壊や汚染を目の当たりにして、気候や環境、生きものたちの変化に心を痛めたり。この時期ウィンタースポーツを楽しむ人たちも、冬の始まりが遅れ、雪の量が減り、普段は凍るはずの湖が凍らなかったり。そうして自然の悲鳴やSOSを繊細に感じ取って、まっさきに海を、環境を守ろうと動いてきたのは、いつの時代も地球を深く愛し敬う人たちも同じです。

ヨーロッパ、とくに北欧の人たちがとりわけ環境意識が高いのも、地理的に北極圏に近く、温暖化の影響で気候が明らかに違うことを何十年も前から感じ取っていたからだそうです。そうしてすでに1980年代から、政府も教育も「自然との調和」を大切にすることが常識に。たしかに、環境問題は「自分ごと」として捉えることが大切ですが、日本もこれから夏に熱波や40℃を超える日が当たり前になり、巨大な台風や豪雨、洪水などの災害、食糧難などに見舞われて、当事者意識が芽生えてからようやく重い腰を上げるのでは、きっと手遅れです。先日も世界の著名な研究者たち17名による国際研究グループが、「地球の未来は一般に認識されているよりずっと差し迫った危険な状態にある」と発表していましたが、近年はこうした警鐘が増えていて、いま各国政府が掲げている温室効果ガス削減目標をすべて達成しても、気温上昇を+1.5℃未満に抑えることができずに、「ホットハウスアース」へと向かうドミノ倒しが、すでに始まりつつあると伝える声も聞かれるようになりました。

増加する「Eco-anxiety」

こうした科学者たちの声は誇張でもなく、不安や恐怖を煽るものでもなく、地球の現状を伝えてくれる大切なファクトです。それらを否定して、真剣に受け止めないまま、先進国の経済成長と環境破壊はどんどん加速し続けて今に至ります。これは社会心理学でいう「正常性バイアス」といって、都合の悪い情報を無視したり過小評価したり、なかったことにする傾向も理由の一つだそう。反対に、近年は環境問題に関心を持つ人が増えてきたけれど、現実を知れば知るほど未来への不安や恐怖心が膨らむ……そんな「Eco-anxiety(エコ不安症、環境不安)」を感じる人たちも増えています。地球危機への不安や無力感、悲しみ、怒り、恐れ、絶望、喪失感、罪悪感などを感じて、気分の落ち込みや不眠などに悩んでしまったり。これは長く環境運動に関わってきた先輩たちも誰もが必ず経験してきた心境だそうで、信じたくないような危機を前に気分が落ち込むのは、むしろ人として正常で健康的な反応でもあります。危機感を持つことは大切ですが、環境問題を考えるなかで何かのストレスに悩んでいるなら、それは決して一人ではないこと、そして不安な未来より「なりたい未来」を思い描いて、前進する行動力に変えてもらえたら……HONEY Vol.30の「いつも心にエシカルマインドを」は、そんな思いも込めてお届けしました。

もちろん、科学的なファクトを知ることは正しい解決へのアクションを助けてくれます。ただ、情報をたくさん得ることよりも、自分がどう感じるかを大切に、苦しいときは情報のデトックスをして、いったん忘れてみてもいい。そしてまた心が前向きになれたら、未来よりもまずは「今ここ」を、周りや社会がどうあれ、まずは自分が心地よくできることを。「できない」罪悪感を数えるよりも、「今日はアレもコレもできた」と前進する愉しさを、一つひとつ……どんな小さなことでも、地球はあなたの思いやりを「ありがとう!」と何より喜んでいることを、いつも忘れないでいてくださいね。

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