
サステイナビリティ・シンキングを3回に渡って特集。最終回の今回は、最近注目されている「インナーサステイナビリティ」について紹介します。
自分自身はサステイナブルであるか?
環境問題や社会問題は自分の外側で起こっていることだと思いがちだ。でも、本当にそうなのだろうか?社会は一人ひとりの人間で構成されている。つまり、サステイナブルな社会を考えていくと、自然と個人の意識が浮かび上がってくるのだ。近年、「Inner Sustainability(インナーサステイナビリティ)」という言葉が注目されている。サステイナビリティと個人の内面の関係性とは、何だろうか?
What? インナーサステイナビリティとは?
「インナーサステイナビリティ」とは、個人の心や身体に焦点を当てた、いわば自分の中のサステイナビリティ。SDGsをはじめ、自然や労働環境、アニマルライツなどに配慮したサステイナブルなライフスタイルが提唱される中、あらためて自分自身の内面と向き合う動きが国内外で出てきている。漠然としていてつかみどころがないように感じる言葉かもしれないが、その本質はいたってシンプル。自分が何にワクワクするか、何に心地良さを感じるかを自分に問うてみること。そして、自分にとっての心地良さとサステイナブルな選択がどのように繋がっているかを認識すること。社会全体でサステイナビリティが求められている今、あらためて自分の内面を振り返ってみよう。
Why? なぜインナーサステイナビリティが重要なのか?
様々な環境問題や社会問題がSNSやメディアを通じて発信されている今、その情報に圧倒されていないだろうか? 複雑で大きな問題に、無意識に疲れてしまっていないだろうか? そうしたストレスは、いつしか自分を消耗させてしまう。「社会問題」と聞くと、自分の外側の社会全体で起こっていることだと思いがちだ。自分とは関係ないと思う人もいるかもしれないし、逆に自分ごととして捉えることで辛い気持ちになる人もいるだろう。たしかに、大量生産をはじめとした社会のシステムによって、自然が破壊され、多くのものが大量に廃棄されている。では、どうしたらこのシステムを変えられるか? そう悩む人も少なくないはずだ。システムを変えることは、今すぐできることではない。長い時間やエネルギーを要する、長期的なものだ。だからこそ、自分ができる範囲で続けていけるアクションがとても大切なのだ。同時に、自分の意識を少しずつ変えていくことも重要になってくる。社会のシステムは「社会」によって自動的につくられたものではなく、一人ひとりの「個人」の意識が自ずと積み重なってできている。そう考えた時、社会の舵を切る主体は「自分」であることに気付くはずだ。だからこそ、サステイナブルな社会を目指すには、自分自身の内面に寄り添い、自分を基点としたアクションを起こしていくことが大切なのである。
How? どのようにインナーサステイナビリティを実践するか?
では、どのように自分の心と身体に向き合えば良いか? 自分らしいインナーサステイナビリティを見つけるには、自身の内面の機微を捉えることが大切だ。自分の興味や関心に敏感になり、やりたい! と思ったらすぐにやってみる。悲しいことがあったら、思い切り泣いてみる。一緒に過ごして楽しい人に出会ったら、また話す約束をしてみる。そういった日常の中で生じる自分の喜怒哀楽の波に気付くこと。その感情に正直になって、行動に移してみること。そうすると、徐々に自分の心の形が見えてくるはずだ。そうした心の波は、自然と身体にも現れてくる。ワクワクすると身体は高揚するし、落ち込むと疲労感を感じたりする。日常の中で、心と身体の繋がりを再認識すると、自分が心地良い状態をつくりやすくなるはずだ。そして、自分の心地良いリズムの延長でサステイナビリティを感じてみよう。オーガニックな食材を選択したり、環境や労働に配慮された衣服を身に纏ってみたり。どこで・誰が・どうやって作ったものなのかが分かると、自然と自分にとっての心地良さに繋がっていくはず。スピードの速い世の中で、一歩立ち止まって「自分」を基点に物事を考える機会はなかなかないかもしれない。その中でも、少し心が落ち着いたり、リラックスした時に、自分の心に耳を傾けてみよう。日常生活の慌ただしさに飲み込まれないために散歩したり、落ち着く香りを焚いてみたり。五感を働かせてみると、自分にとっての心地良さを再認識できるはず。自分の内面を見つめながら、できるところからサステイナブルな選択をしていく。そして、その選択が自分の心地良さにどう繋がっているかを振り返ってみる。この繰り返しによって、自分にとっての「インナーサステイナビリティ」が少しずつ見えてくるはずである。
WILL
自分の意志で選択する
自分の気持ちは、なかなか見えづらい。しかし日々の行動に対して、なぜ自分はこの選択をするのか、その理由を自分に問うてみると自ずと自分の意志が見えてくる。一つひとつの選択の積み重ねが、自分の意志を形作るはずだ。
SENSE
五感を研ぎ澄ます
頭で考えず、自分の五感を刺激する瞬間を大切に。自然に触れたり、好きな音楽やアートを堪能したり、日常生活の中で自分の五感を感じ取れる機会を作っていく。そうすると、自ずと自分の感性(センス)が見えてくるはずだ。
REFLECTION
自分の思考を磨く
「私らしさ」を探求して
いく。普段何気なくしている自分の行動を、意識して振り返ってみよう。そうすると、自分が何を大切にして生きているかがわかってくるはず。きっと、その指針が自分らしいライフスタイルの軸になる。
CONNECTION
繋がりを感じ取る
自然や社会との繋がりを感じること。普段の生活で触れるものと自分との接点を感じてみよう。どこで・誰が・どうやって作ったものなのか、その背景に思いを馳せることも、自然や社会との繋がりを感じ取るための一つの手段。