
わたしたちはみんな、いつもどこかでつながっている。たしかにつながり支え合って、今を生きている。
地球上に存在するすべての生命が、力強くしなやかな「生命の環」のなかにあって、
それぞれの個性と役目を生まれ持ちながら、お互いに関わり合って、いのちの連環を巡る。
豊穣なる海も、山の森が豊かであってこそ育まれ、目には見えない微生物から大きな動物まで、
食べたり食べられたりする食物連鎖を繰り返すなかで、種類も個体数も均衡が保たれ、
多種多様な生き物たちの絶妙な相互関係があってこそ、自然界はバランスよく健全に営まれる。
地球が誇れるこのパーフェクトな自然の摂理は「Biodiversity(生物多様性)」と呼ばれ、
もちろん、生物学上で「ヒト」科に属する私たち人間も、立派な生物多様性の一員。
けれども、地球上の何千万種ともいわれる全生物の、たった一種でしかない「ヒト」は、
この星に生命が生まれて40億年以上もかけて育まれてきた豊かな環境と生物の多様性を、
このたった50年近くであっという間に、瀕死なまでに崩壊させてしまった。
WWFが発表した「Living Planet Report:生きている地球レポート2020」によると、
1970年からの約50年間で、すでに地球上から2/3もの脊椎動物が姿を消してしまい、
地球危機のトップマターに挙がるほど、残り1/3の減少・絶滅スピードもその加速が止まらない。
原因はすべて、人間の経済活動によるもので、開拓や埋め立て、環境破壊に環境汚染、
CO2過多による地球温暖化や海洋酸性化などによって、生き物たちはみるみる棲む場所を失い、
過剰な消費や貿易のニーズを支えるための乱獲や密漁、有害化学物質やプラスチックによる被害、
外来種侵入などの悪影響を受けて、地球上から「毎日50~100種ずつ」もの生き物たちが消えつつある。
つい100年前には年間1種が滅びる程度、それが今では毎年何千~何万種もが絶滅しているデータもあり、
地球にはかつて5回の大量絶滅時代があったとされるけれど、このペースで種が途絶えていけば、
近い将来に「第6の大量絶滅時代」を迎えてしまうという未来予測まで聞こえてくるほど。
海の生態系を見ても、1970年代からの50年間で、海洋生物はすでに半分にまで激減し、
世界の海ではサメやマグロ、カジキといった大型の魚たちがすでに90%も減少してしまった。
日本の漁獲量もこの30年間で1/3にまで激減、国内の水産資源は8割近くが絶滅に近く、
いま当たり前に見かける魚介類や海藻が、20年後、30年後にはもう見られなくなるかもしれない。
海の恵みに限らず、地上の動植物も、それを育む大地も、食も服も薬も紙も木材も、大気も水も……。
毎日の衣食住を多彩な生命に支えられ、私たちはその支えなしには少しも生きられない。
すでに絶滅してしまった生き物たち、そしてここまで崩れてしまった生物多様性のバランスも、
完全に元通りの姿に戻すことは、もう二度と叶えることはできないけれど、
私たちは日常のどこでどんな風にして、生き物たちを絶滅に追いやってきたのだろう?
そしてどれほど生命あふれる星に生きているのか、今その奇跡をもう一度、胸に刻み直したい。