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【連載】地球の今、海の今を知る|Vol.23 「自然を最優先」がスタンダードならば

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日本の海人たちのあいだで、何十年も前から語り継がれているひとつの合言葉があります。「森は海の恋人」──。30年以上前、三陸・気仙沼の海が赤く濁り始めたことをきっかけに、地元の畠山重篤さんがその原因を探ったところ、海から遠く離れた山の荒廃に辿り着きました。森という環境は、枯れ木や落ち葉が菌類に分解されてできる腐葉土によって育まれますが、その養分は川や地下水を伝って海にも運ばれ、海洋生態系も育みます。それが、日本の森は半分近くも人工林に変えられたものの、林業の衰退とともに放置され、雨が降るとすぐに土砂が流れ出てしまう状態に。工場や家庭の排水も汚れたまま川に流され、田畑も農薬や除草剤を多用するほど生き物のいない不気味な静けさが広がるばかり。あちこちでそんな自然破壊を目にした畠山さんは、1989年から地元の上流に植樹を始め、排水を改善してもらおうと川のそばに暮らす人々に語りかけ、森と川を生き返らせ、そうして海の豊かさを蘇らせました。畠山さんのそんな姿勢から、漁師が植樹をし、海を豊かにする活動が広がっていったのです。

–{FSCジャパンが教えてくれたこと}–

HONEY Vol.31の連載特集「NO Earth, NO Us」でも、そんな海と森のつながりをお伝えしましたが、そこでは国際的な森林認証制度を運営する「FSCジャパン」の河野絵美佳さんが、森の今をさまざまな角度から教えてくれました。

「いま世界では、3.5秒ごとにサッカー場1面分の自然林が失われています。ただ、実は今よりも30年前のほうが減少スピードはもっと速かったんです。今はこれでも改善されたほうなんですが、それでも南米、アフリカ、東南アジアなどでとくに急速に森林が消滅しています。原因は畜産の牛、大豆、パーム油(植物油脂)、木材・紙製品の生産が4大要因に。FSC®認証はそうした背景はもちろん、森林の環境と生態系を守るために、持続可能な伐採・生産を厳しく評価しています。インドネシアで科学的にも調査したところ、FSC®認証を取得した森林では生態系の減少が見られず、CO2を吸収して炭素を固定する量も減少率が少ない、つまり温暖化対策にも貢献できるという結果が得られました。日本でも2年ほど前から認証を取得した素材や製品を求める声が増えてきて、林業者さんもFSC®認証を取得したことで優先的に選んでもらえたり、値段が高くてもその価値を理解してもらえたりと、嬉しい反響が増えているんです。ロンドン、リオに続き、東京オリンピック・パラリンピックでも『調達する木材や紙製品はFSC®認証のものを』というレガシーが掲げられ、日本でもさらに広く知ってもらえたら嬉しいですね」(河野さん)

–{元気な森が海を育む}–

元気な森が海を育む、その恩恵はもちろん一方通行ではなく、たとえば海で育った鮭が川を遡上し、その鮭を森のクマたちが食べると食べカスが森に残されます。するとそれを他の生き物たちが食べ、分解・排泄されて大地の養分になり、それがまた森や海を豊かにする……自然のつながりを知れば知るほど、その精妙さには驚き感動するばかりです。ちなみに、中南米コスタリカではみんながそうした生物多様性の繊細さを心得ていて、政府も国民も、人間のエゴやいっときの欲よりも、環境や生態系が一番大事。自宅の木を切るだけでも専門家の調査と許可証が必須で、「この木にはこんな鳥が飛来するから切っちゃダメ!」なんてことも日常茶飯事とか! 2008年、世界で初めて「自然の権利」を憲法で認めた南米エクアドルも、「自然環境の存在と、生命の循環を保全・再生する生態系は、完全に尊重される権利がある」と法律で定められ、2010年にはボリビアも「母なる大地の権利法」が制定されました。そんな素敵な常識が当たり前の国もあるんだから、日本も世界も「自然を最優先に思いやる」がスタンダードになったら最高なのに……そんな未来を妄想している日々です。