
私たちが知らないところで、どんどんと姿を消している生きものたちのこと。それは陸上生物だけじゃなく、海の生きものたちもこの50年間で、すでに半分以下にまで急減してしまい、このままではあと30年もしないうちに、海から魚たちが消えてしまうかもしれないなんて……。よく、海洋プラスチック汚染の深刻さが伝えられるとき、「2050年までに、地球の海は魚たちよりも、プラスチックごみのほうが多くなる」と言われたりもしますが、今の調子で魚たちが減り続け、海洋プラスチックがどんどん増えていけば、そんな未来が来るのは当たり前……思わずそう突っ込みたくなったりもして、同時にこんな未来予測が飛び交うことに、ただただ悲しくてたまらないきもちです。
HONEY vol.31の連載特集「NO Earth, NO Us」では、そんな海の生きものたちの今をお伝えしました。そこでは、「WWFジャパン」海洋水産グループの滝本麻耶さんが、生きものたちが減っている背景と私たちとのつながりについて、大切なメッセージとともに分かりやすく教えてくれました。
『火サス』キャンペーンがスタート
「乱獲、気候変動、海洋汚染、原因は他にもさまざまありますが、世界の漁業資源はいま、全体の3割強が『獲りすぎ』状態にあり、まだ十分に資源量があるのはたった6%しかないくらい、危機的な状況です。その背景には、過去50年間で世界全体の水産物消費量が5倍に跳ね上がり、そのニーズに応えようと、大きな網で効率よく漁を行う漁法が進化してきましたが、漁法によっては『乱獲』につながってしまい、狙った以外の魚やイルカ、ウミガメなども網にかかってしまう『混獲』も大きな問題となっています。混獲で網にかかった、狙っていない魚や小さいサイズの魚は、『価値がない』として捨てられることがありますが、その場合の価値は、市場において価値がないだけで、彼らも海洋生態系を構成する大切な一員です。そうした漁業の背景、消費量と漁獲量が増えたことが危機の要因ということを、まずは知っていただき、日々の消費を考え直してもらえたら。やはり自然界はまだまだ人智では分かり得ないことも多く、予期せぬことが起こる可能性もあるからこそ、一人ひとりが現状を知り、正しい危機感を持ちながら、予防原則に従って日常や消費を見直すことが大切な気がします。海の環境や生きものを守るためには、MSC、ASCといった認証を取得したサステナブル・シーフードを選んだり、WWFが発行している『おさかなハンドブック』の赤信号寄りの水産物は消費を控えたりすることが、大きな貢献になります。WWFでは私たちがいつまでも、海の恵みである魚や貝を食べ続けられるようにという想いを込めて、まずは週に1回、火曜日だけでもサステナブル・シーフードを選ぼうと呼びかける、略して『火サス』キャンペーンもスタートしました! 皆さんもぜひ、日常から海の生きものたちを守る選択について考えてみてください」(滝本さん)
乱獲だけでなく、開拓に埋め立て、有害物質やプラスチックの被害もどんどんと広がり、さらには洋上風力発電所といった海上建設物の建設、海上輸送なども増えている昨今は、海中騒音が海の生き物たちを苦しめてしまう時代にもなりました。人工的な超音波や騒音などは海洋生物の聴覚感度や方向感覚を悪化させて、場合によっては音の衝撃波だけで内臓が破裂してしまう生物までいるなんて、人間社会のために、生き物たちはどれほど苦しみを背負い続けるのだろうと……。海の恵みを守ること、プラスチックを減らすこと、消費を考え直すこと、環境破壊を悲しむこと、気候変動を止めること……私たちができることは身近にたくさん溢れていて、自然環境や動植物を守ることは、そのまま未来の自分、愛するみんなを守ること。どうか一人でも多くの人が、その本質に気づいていってくれますように。
