地球とわたしに「もっといいこと」/大気と水と、私たちの未来について Vol.1

46 億年前、まだ生命のいない生まれたての地球は、水蒸気と二酸化炭素に包まれていたのだそう。
それから何億年かの月日が流れ、やがて水蒸気が地表に降り注がれて「海」ができ、
その海で最初の原始生命が誕生すると、光合成をする生き物たちが地球に酸素を作り始めた。
太陽は太古の昔から地球の水を動かして、熱を受け止めた海や大地から水が蒸発して雲ができ、
雨となって降り注いでは大地や川、地下を流れてふたたび海へ、空へ、大地へと巡りゆく。
こうして延々と続く水の旅では、そのときどきで水蒸気や雲、雨や雪、氷と姿かたちを変え、
暖流や寒流とともに大海原を行き交い、気候や天気、気温や水温もバランスが保たれながら、
自然環境とそこに生きる多様な生命たちを潤沢に育みつづけてくれた。
地球がこれほど生命あふれる星になったのは、大気と水の麗しき循環があったから、
そして愛すべき海が地球にあったからこそ、私たちはこうして、今ここに生きていられる。
そんな地球の偉大なシステムを支えつづける気候と水もまた、大きな危機を迎えてしまった。
地球の平均気温が上がり、水蒸気が増えたことで記録的な豪雨や洪水、台風の爪痕も大きくなり、
熱波や干ばつ、森林火災、消えゆくサンゴ礁や生き物たち、海面上昇、と異常はあちこちに広がり、
ビーチもどんどんと削られて、打ち寄せる波が変わってきたと感じる人も多いかもしれない。
2020年は日本も「気候非常事態宣言」を、そして「2050年に脱炭素社会」を掲げたけれど、
そうして今や世界中が、平均気温上昇を産業革命前より+1.5℃未満に抑えようとして、
もう「低炭素」では足りない、いち早くCO2 の排出を実質ゼロにする「脱炭素」へと動き始めた。
なぜなら、すでに加速するグリーンランドの氷床融解やアマゾン熱帯雨林の枯死などには、
ある温度を超えると変化が止まらなくなる臨界点、「ティッピングポイント」があるとされ、
このまま平均気温が上がっていくほど臨界点に近づき、いったんそれを超えてしまうと、
もう私たちがどんなに頑張ったとしても、温暖化の暴走は誰にも止められなくなるとされるから。
いま私たちは、世界平均で地球1.7個分、日本はおよそ地球3個分もの暮らしを送り、
気候や環境、生態系のバランスを壊し続け、水についても深刻な危機が叫ばれるようになった。
ここは水の惑星、ならば水は無限にあるようにも感じるけれど、その97.5%は海水で、
2.5%ほどしかない淡水は、大半が極地の氷や氷河として、または地中深くを流れていて、
私たち人類が使える水は、地球全体の水のうち、ほんの0.01%にすぎない。
その限りある水も、先進国や産業によって多くを奪い合い、汚染によって使える水も減り続け、
安全で清潔な水をいつでも手にできない人たちは、世界中に20億人以上もいる。
気候危機によってもさらに干ばつや砂漠化が進み、水と食料の枯渇に苦しむ人たちが増え、
生き物たちなんて、この50年間に淡水の生物多様性だけで8割以上も喪失したという報告まで……。
「もっと新しいものを、もっとたくさん」が豊かさの象徴だった時代が招いた、いくつもの危機。
これからは、ほんとうの幸せを「地球のみんな」と分かち合っていくときなのかもしれない。

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