
環境問題というと、プラスチックがどうとか、温室効果ガスがどうとか、物理的な背景にばかり目が行きがちですが、原因はそれぞれに違っていても、その発端を探るとどれも人々の内面に辿り着きます。地球をここまでの危機に追い詰めた原因は「強欲と無関心」、そして「足りない、足りない、もっともっと……」という意識にあることは、HONEY Vol.30「いつも心にエシカルマインドを」でも触れました。前ウルグアイ大統領のホセ・ムヒカ氏は、「貧乏な人とは少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のこと」という名スピーチを残していますが、モノが無限に増幅し続ける今の社会はまさに、不足感がどんどんとエスカレートした心の現れ。その代償として、地球環境や生態系をむやみに壊して大切な恵みを奪い、人間同士も争ったり奪ったりを繰り返して、現在に至ります。
私たちは本来、誰もが「あるがままでいい」はずなのに、たくさんの情報シャワーを浴びるなかでは気がつかないうちに不足感を煽られてしまったり、誰かや何かのほうが魅力的だと感じさせられて、「今の自分はダメ、このままじゃ足りない」を潜在意識に植え付けてしまう毎日。そんな自分へのダメ出しは「自分で自分を傷つける」ことにもなるのに、それを無意識に繰り返しているだけでも、心はたくさんの悲しみを溜め込んでいるはずです。「当たり前」のなかにいると「何が不自然か」には気づけないものですが、今に感謝ができないまま、不十分と感じてしまうほとんどは、エンドレスに流れ込んでくる他人軸の情報に翻弄されているから。そして本当は、「今の自分では足りない」なんて思い込みもただの幻想……そのことに気がついて、自分軸を取り戻して、いつでも自分に「You are enough(そのまんまで十分ステキ!)」を言ってあげられる人が増えていったら、自分にも他人にも地球にも優しくなれる人がどんどん増えて、たぶんこの世界のカオスはあっという間にリセットされて、ピースな地球になるんじゃないかなとも思ったりしています。
モノに惑わされない暮らし、真の豊かさとは何かを問いかける『ミニマリズム 本当に大切なもの』というドキュメンタリー映画に、こんな1シーンがありました。
「大気中の二酸化炭素は、350ppmが人間の許容濃度。それが現在400ppmに近づきつつあり、消費の経済促進のために、石油や石炭、天然ガスなどの燃料を燃やしているのが大きな原因です。これが現実で、私たちは本気でどうにかしないといけない。そのために私たちは多くを手放す必要がある、そして実際は多くのモノがなくても、私たちは平気なのです」

本作が公開された2016年当時は400ppm近かった大気中の二酸化炭素濃度も、すでに420ppmに近づく勢いで上昇を続けています。そんな今、私たちは物質的に「足るを知る」ことでモノを減らしていきながら、心の「足るを知る」にも意識を向けるときなのかもしれません。本当はどんな自分も「そのままでいい」、たとえネガティブと感じることがあっても、「そういう自分でもいいんだよ」と言ってあげればいい。他の誰かになる必要もないし、特別である必要もない、綺麗にカッコ良く見せるための自分でもなく、唯一無二の等身大な自分を何より大切に、ただ自分が一番ホッとする自分で在ればいい。あとは、毎日を支えてくれる生き物たちの尊さにも感謝して、自然の神々しさに感動して、大好きなビーチに行って好きなことを思いっきり楽しんで、たとえ行けないときでも、ただ海にいるだけで「なんにもいらない」と感じるあの至福を、心のどこかに感じられるだけでもほっこりできる。日常の中でも何かを競い合う空気感からは離れて、自分にも周りの人にも「今そのまんまで最高じゃん!」と言ってあげる……そんな心の潤いを大切に過ごすことが、自分のためにも地球のためにも、実は一番なのかもしれません。
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